ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「しあわせなミステリー」/宝島社刊

イメージ 1

「しあわせなミステリー」。

伊坂幸太郎(第5回本屋大賞受賞/第21回山本周五郎賞受賞)、中山七里(第8回『このミステリー
がすごい!』大賞受賞)、柚月裕子(第7回『このミステリーがすごい!』大賞受賞)、吉川英梨
(第3回日本ラブストーリー大賞エンタテインメント特別賞受賞)ら大人気作家が、“人の死なない”
しあわせなミステリーをお届けします。殺し屋・兜が命がけで挑むのは……“蜂”?子供探偵・
原菜月(8歳)が大活躍!あの宮沢賢治小説から飛び出したニヒルなヒーロー、人気シリーズ
最新作・佐方検事も登場!(紹介文抜粋)


この間読んだアンソロジー『Happy Box』と似た体裁ですが、こちらの方がタイトル通りの
作品が集まっているかな、という感じ。宝島社といえばこのミステリーがすごい!大賞
って印象が強く、個人的にこのミス大賞系の作品とは相性が悪いことが多いのでどうかな~と
思ったんですが(伊坂さん以外って意味でね)、なかなかどうして、どの作品も水準以上には
楽しめて良かったです。伊坂さん以外は初めましての作家さんばかり。シリーズものが多い
みたいなんで、前の作品も読んでみたいなーと思えるものばかりでした。伊坂さんのは
やっぱり期待を裏切らない出来でしたね。『マリアビートル』と繋がっているので併せて
読むとより楽しめるかも^^


以下、各作品の感想。

伊坂幸太郎『BEE』
殺し屋の男がハチの退治にあたふたしてる姿が可笑しかったです(笑)。あと、やたらに奥さん
に頭が上がらないところも。伊坂さんの描く奥さんキャラって、みんないろんな意味で『強い』
人が多いですよね(笑)。兜が、宇宙服みたいな格好で真剣にハチの巣と向き合ってる姿を
想像するだけでニヤニヤしちゃいました(笑)。でも、素人が兜みたいな真似をするのは絶対
ダメですよね^^;

中山七里『二百十日の風』
鉱物マニアの高田先生のキャラが良かったですね。夏美といい雰囲気になるのかなーと思ったの
ですが、ああいうオチだとは^^;
実は夏美が子供の頃に助けた男の子が高田先生で・・・という展開を想像してたのですが。
その部分が何の伏線でもなかったのでちょっと拍子抜けしたところはあったかな。まぁ、その
通りだったらベタもいいとこ、でしたけども^^;この作品は珍しくノンシリーズですが、
普段は他作品とのリンクが多い作家さんなのだとか。『さよならドビュッシーは気になってた
作品なので、読んでみようかな。

柚月裕子『心を掬う』
作品としては悪くないんですけど、とにかく途中手紙をさらう描写がね~・・・想像すると
うげ~って感じで、読んでるの辛かったです^^;そこまでしなくても、何か他に方法は
ありそうな気もしたんですけどね。福村さんは何か裏がある人なのかも・・・とか穿った
読み方したりしてたんですけど、そのまんまの人格でした。犯人もそのまんまだったし。
もうちょっとミステリー的な驚きがあると良かったかな。でも、佐方検事のキャラクターは
気に入ったので、正規の作品も読んでみたいです。

吉川英梨『18番テーブルの幽霊』
これは文章があんまり好きなタイプではなかったかなぁ。ちょっと人物造形とか薄っぺらい
感じがするし、会話文が漫画とかアニメみたい。麻希のキャラクターが浮いてるというか。
18番テーブルの謎も、なんかねぇ。動機として納得出来ない訳じゃないんですけど、あまり
リアリティはないような。
でも、このキャラって映像化されたばかりなんですね。『アゲハ』って、確かに新聞のテレビ
欄で観て、私が読んだ小説の映像化なのかと思って注目したのでよく覚えてます。このシリーズ
だったのですねぇ。確かに、麻希のキャラは映像化向きって感じですけどね。



タイトル通り、読んだ後ちょっぴりほっこり出来るような作品が多かったです。やっぱり、
こういうタイトルなら、こういう作品が読みたいよね、って思っちゃいました(この間読んだ
『Happy Box』はそういう意味で結構期待を裏切られたアンソロジーだったんで^^;)。
とりあえず、中山さんと柚月さんの作品は今後チェックかな。