ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青崎有吾「ノッキンオン・ロックドドア」(徳間書店)

7月からドラマ化されるそうなので、人気が出る前に読んでみたいと思い、借りて

みました。確か、ブロ友のゆきあやさんもお薦めしていた覚えがありましたし(もし

違ってたらごめんなさい^^;)。

不可能(HOW)担当の御殿場倒理と、不可解(WHY)担当の片無氷雨、二人の探偵

が活躍する連作短編ミステリー。それぞれに得意分野が違う為、依頼人の依頼内容

を聞いてから、どちらが担当するか決めます。不可解かと思った事件が、調査を

進めると不可能犯罪だった(あるいはその逆もしかり)場合は、途中で担当が

変わることもあったりします。

なかなか面白い設定だなーと思いました。同じ探偵事務所の仲間であり、推理

のライバルでもある二人、それぞれのキャラが立っていて良かったと思います。

何より、ミステリとして面白かったですね。わかりやすいけど盲点をつかれた

トリックが多かったというか。ああ、そういうことか!とトリックを説明されて

すぐに腑に落ちるところが良かったな。最近は頭が固くなってしまって、細かく

説明されてもなかなか文章だけでは理解できないトリックも多いので(私の頭

の問題です)。若干強引に感じてツッコミたくなったお話もありましたけれども。

でも、一編も比較的短いし、文章も読みやすいのでさくさく読めたところも

良かったですね。確かに、これは連続ドラマ向きかもって思いましたね。二人の

イケメン俳優使えばビジュアル面でも映えるでしょうし。事務所のアルバイトの

高校生・薬子ちゃんも可愛らしいキャラクターで、花を添えてくれてますしね。

なぜ、こんな所でアルバイトしているのかは謎でしたが(今後彼女の物語も出て

来るのかな?)。

ドラマは観るかわからないけど(え?w)、すでに出版されている二作目は

絶対読みたいと思うくらいには気に入りましたね。早めに予約しようっと。

 

では、各作品の感想を。

ノッキングオン・ロックドドア』

霧蛾邸で家主の画家が密室状況のアトリエの中で殺された。アトリエに飾って

あった家主の絵が額縁から出されて床に散らばっており、しかもそのうちの一枚が

真っ赤に塗りつぶされていた――。

犯人が密室を作った方法と、赤く塗りつぶされた絵の理由を知って、なるほど、と

思いましたね。よく見ればそんなものに騙されないのでしょうが、ああいう切羽

詰まった状況なら確かに気づかないのかも(ほんとか?w)。

 

『髪の短くなった死体』

劇団『キクラゲ』のリーダーの女がマンションの一室で殺された。死体は真っ裸で、

長い髪がばっさり切り落とされていた――。

これは、最初の氷雨の推理にはちょっと無理があるような・・・と思っていたところ、

その推理があっさり否定されて、最終的には倒理の『不可能犯罪』側の事件に。

髪が切り落とされていた理由にも納得が行きました。

 

『ダイヤルWを廻せ!』

「亡くなった祖父の開かずの金庫を開けて欲しい」「路地で倒れて亡くなった父

の死に方がおかしい」、珍しく2つの事件が同時に舞い込んだ。氷雨と倒理は

二手に分かれて調査を担当することになったのだが――。

二つの事件が一つに重なるところはお見事。まぁ、多分そういうオチだろうな、

とは思ったのですが。祖父の残した解錠番号で鍵が開かなかった理由は盲点

でしたね。見れば分かるような気がしないでもないけど、誰ひとり変だと思わな

かったんだろうなぁ。

 

『チープ・トリック』

大規模の個人情報流出事件を起こして世間を騒がせた男が、自宅で射殺された。

何者かに殺されることを危惧して部屋の窓には近づかないようにしていた被害者が、

なぜ窓からの射撃で殺されたのか?

これは結構失敗リスクの高い犯行じゃないかと思いましたね。偶然も手助けして

成功しましたけども。

初登場の美影のキャラは謎が多くて、二人との確執も気になりました。なんか、

名探偵コナンとか金田一君のキャラみたい。

 

『いわゆる一つの雪密室』

工場と民家の間の空き地の真ん中で、胸に包丁が刺さった男の死体が発見された。

空き地には雪が降り積もっており、足跡は男が歩いたと見られるものしか残って

いなかった。これぞ不可能犯罪!と倒理は意気込んで調査にかかるのだが――。

今度は不可能犯罪の倒理から不可解犯罪の氷雨に反転・・・かと思いきや、最後は

倒理に軍配。二人いなければ解けなかった事件でしたね。

 

『十円玉が少なすぎる』

「十円玉が少なすぎる。あと五枚は必要だ」薬子ちゃんが学校へ行く途中で

聞いた会話の意味とは?

『九マイルは遠すぎる』のオマージュ作品でしょうか(なんとなくタイトルと

内容は知っているけど未読^^;)。個人的には東京創元社から出版された

競作集『五十円玉二十枚の謎』を思い出しましたけれど。

倒理と氷雨がこの言葉についていろいろと推理をめぐらして行くのですが、最後

意外な事件と繋がって驚愕。こういうちょっとした会話による推理合戦を読むのは

面白い。

 

『限りなく確実な毒殺』

衆議院議員の男が、衆人環視の中毒殺された。毒はどのようにして入れられたのか?

うーん、これはちょっとトリックが強引に感じたかなぁ。シャンパンから毒が検出

された理由には唖然。そんな上手くいくものかなぁ???

美影再登場。一体彼は何をやりたいのかよくわからない。無理にこのキャラを出す

必要性があんまり感じられないのだけど・・・倒理や氷雨や刑事の穿地との学生時代

のエピソードなんかも今後出て来るのでしょうか。とりあえず、早く二巻を読まな

くては。