恩田さんの最新長編。650ページ超えの長編。映像化の企画が立ち上がる度に、
何らかの事故が起きて企画が頓挫してしまう為、呪われているのではないかと
噂されている小説『夜果つるところ』。その著者・飯合梓の謎を追う小説家の
蕗谷梢は、関係者が一同に会する豪華クルーズ船のツアーに夫と共に参加する
ことに。映画監督の角替、ゴージャスな漫画家ユニット・真鍋姉妹、強烈な個性
を持つ映画評論家の武井、文芸の世界では伝説的な編集者と言われ、生前の
飯合と唯一親交があったとされる島崎、プロデューサーの進藤、そして、亡くなった
『夜果つるところ』の脚本家・笹倉いずみの元夫であり、梢の現在の夫・雅春――。
二週間のクルーズ旅行で、梢がたどり着いたこの作品の真実とは――。
いやー、長かった。恩田さんの文章だから読みにくいとかは全然ないのだけど、
とにかく内容が単調なので、中だるみ感が半端なかった。前回読んだ『なんとか
しなくちゃ』は、同じように長編だったけど、読みどころが満載だったから全然
退屈しなかったのに。呪われた小説を巡る心理ミステリーみたいな設定は嫌いじゃ
ないけど、関係者みんな、それぞれに何か物が挟まったというか、腹に一物抱えてる
みたいな態度で曰くありげだし、ずっとモヤモヤしたまま読み進めていた感じ。
それが最後にすっきりするかと思いきや、呪われた小説の真実も、著者の真実も、
きれいに解決したかといえば、全くそうでもなかったし。ここまで長々と読んで
来たのに、あれ?って感じで終わってしまって、なんだか拍子抜け。一応、著者の
飯合梓の正体みたいなものは一応の真相みたいなものが推理されていたけど、それ
だって本当に真実かどうかもわからないままだし。この小説がなぜ映像化される
度に関係者が事故に遭ってしまうのか、についてもよくわからないまま。まぁ、
真実なんて得てしてそういうもの、と言われればそれまでだし、わからないまま
なのがリアルだと言えなくもないですけど・・・うーん。こういう結末なら、
こんなに長く引っ張る必要もなかった気がするんだけどなぁ。幻想小説的な要素が
強いのかな。こういう世界観が好きな人もいるでしょうけど。恩田さんらしいと
いえば、この上もなく恩田さんらしい作品とも云えるかも。インタビュー形式
の部分も多くて、ちょっと『Q&A』を思い出しました。インタビュー形式と
いっても、相手の受け答えの部分しか書かれていなかったりするのですが。
読んでいる時にちょうど、あの海に沈んだタイタニック号を観に行って消息を
絶ってしまったタイタン号のニュースをやっていて、なんだか複雑な気持ちに
なったりもしました。
豪華客船の船旅の様子が知れたのは興味深かったですけどね。でも、なんとなく、
こういう船旅って、やっぱりちょっと抵抗あって、行きたいとは思わないん
だよなー・・・。昔、離島に行くのに夜行船に乗って、ものすごい船酔いしたこと
あって、船自体があんまり得意じゃないってのもあるし。こういう豪華客船は
そんなに揺れたりしないんだろうけど・・・。
もやもやしたままのラストも含めて、いつもの恩田さんって感じの作品だったと
云えるかも(苦笑)。
作中作の『夜果つるところ』も単行本で発売されたらしいので、そちらも
併せて読んでみようと思います。