ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

渡辺優「私雨邸の殺人に関する各人の視点」(双葉社)

渡辺さんの作品は以前一作だけ読んでいて、ミステリーじゃなかったと思うの

ですが、なかなか良かった覚えがあったので、ガチガチのミステリだとどんな

感じになるのか興味を惹かれて借りてみました。ただ、返却期限の関係でもう

手元に本がなくなってしまって^^;返してから少し時間が経ってしまったので、

うろ覚え状態で感想を書かねばならなくなってしまった・・・本当は手元に本が

ある時に記事を考えればよかったのですが、いろいろと忙しくって。予約本にも

追われているし(言い訳w)。

というわけで、うっすい感想になっちゃうと思うので先に謝っておきます。

すみません(何ソレ)。

 

嵐の山荘に偶然集まった11人。山荘の持ち主である雨目石昭吉氏が密室の中

殺された。犯人は一体誰なのか――という、至って古典的なクローズドサークル

ミステリ。集まった11人の中には、大学のミステリ研の先輩・後輩コンビ

なんかも入っていて、俄然私好みの本格ミステリ設定なのですが・・・いかんせん、

致命的なのが、誰ひとり探偵役がいないってところ。探偵役がいない=誰でも

探偵になり得るということでもあり、後半は推理を思いついた人間が代わる代わる

に探偵役をやり始める、という。なかなかに収拾つかない展開になっていく訳でして。

普通だったら、その大学のミステリ研の二人が探偵役を務めるところなのでしょうが、

この二人もそれほど探偵として機能しないんですね。特に、後輩の方の二ノ宮の

キャラがとにかく酷くて。ミステリおたくでやたらと前に出たがって、他人を

見下すし。死人が出ているにも関わらず、こういう状況で推理合戦ができること

自体に興奮して、終始浮かれている。亡くなった雨目石氏とは、前日に意気投合

したりしていた時間もあるのに、亡くなったことを悲しむ気持ちも全くなく、

ただ、犯人当てができると意気揚々としているし。こいつは完全にサイコパスだな、

と思いましたね・・・。まだ、彼の先輩の方がまともな感情を持ち合わせていた

と思います。ただ、その先輩もミステリ研の割には推理の面では役に立たないし。

登場人物が多いわりに、全員が全員どこかクセがあって、好感持てる人物が

いなかったなぁ。被害者の孫娘の美少女のキャラも、曰くありげだった割に、

たいして目立った活躍もしないで終わったしね。

最終的には、思わぬ伏兵が探偵役として活躍するんですが。その人物の正体には

驚かされましたね。こういう風に繋がっているのか、と思わされました。

ただ、真犯人の動機には、正直言って全然理解出来ませんでしたねぇ。完全に、

その人物の思い込みじゃないか。まぁ、エピローグ読む限り、完全に見当外れ

って訳でもないんでしょうけど。でも、余計なことをしたばかりに、自分に

かえってくる結果になりましたし。皮肉な結末でしたね。指紋のトリックの部分

は、なるほど、と思わされました。ちゃんと伏線ありましたね。

ミステリ的にはなかなか面白かったのだけれど、登場人物のキャラ造形がいまいち

なので、読んでいて嫌悪感ばかりを覚えてしまいました。特に二ノ宮ね。普通

だったら、主役級の一番好感持てるキャラを据えるところだと思うけど、ここまで

読者をドン引きさせるキャラにするってところは、ある意味斬新かもしれない。

読書メーターの感想読んでても、ほとんどが私と同じ感想を抱いたもよう。

という訳で、ちょっと私の好みからは外れたミステリだったと言わざるを得ない。

探偵役がいないと、こんな風にだらけたミステリになるのか、という部分では

発見があったかも(苦笑)。

タイトル通り、何人かの視点から語られるので、ちょっとまどろっこしいところは

あったかな。群像ミステリってこういうものだとは思うけど。ただ、だからこそ

騙された部分もありましたけどね。視点にならない人物はより怪しいと思ったり、

視点になっているからこそ、怪しかったり。いろいろと翻弄されました。