はい。という訳で後編です。もっと後編回って来るのに時間かかるかなと思って
たんですが(結構予約数多かったので)、冊数が多かったせいか、ほとんど間を
空けずに読めてよかったです。さすがにまだ前半の内容覚えてましたからね(一ヶ月
空くともうヤバい・・・恐ろしき私の記憶力のなさ^^;)。
ネタバレ気味感想となっております。未読の方はご注意を!
いやー・・・もう。最後の一章(世之介のあの奇禍の直前、八月の話)の辺りから、
読み進めるのが辛くて辛くて。まだまだ読み終わりたくない、最後まで読みたくない
って気持ちが強過ぎて。世之介がいちいちみんなに対して優しくていいヤツなんだ
もの。特に、後輩のエバくんの赤ちゃんの出産のシーン辺りなんかもう・・・。
エバくんのそばに、世之介がいてくれて、本当に良かったと思う。そして、世之介
に名付け親を託したことも。世之介ったら、なんでこんなに素敵な名前考えてんの!
普段は何も考えてなさそうで、のほほんと生きてそうな人間なのに、ここ一番って
時にその人が一番欲しくて力になれる言葉をくれる。世之介がその場にいるだけで、
どうしてこんなにも安心感があるんだろう。世之介がいれば、大丈夫って思えるから
不思議。エバくんも、そうだったと思う。不安で不安で押しつぶされそうになった
と思うし、生まれてからもずっとそうだったと思う。でも、世之介の『大丈夫』
があったから、乗り越えられたところも絶対あったと思う。世之介は人として、
一番大事なことがわかってる人だと思う。だから二千花も最期まで世之介といた
かったのだと思うし、あけみちゃんは一生敵わない二千花の存在があっても、
それでも世之介といたいと思えるのだと思う。あけみちゃんが、世之介を独り占め
することは出来ないと言っていたけど、すごくよくわかるなぁ。世之介のことを
必要な人がいっぱいいるんだもの。未来にもいっぱいいた筈なのになぁ・・・。
世之介と知り合う人はみんな、世之介ワールドに取り込まれちゃう。もっともっと、
世之介といろんな人とのエピソードが読みたかったな。今回も、何気ない世之介
やその周りの人々の日常を淡々と描いているだけなんだけど、心に残るシーンが
たくさんありました。ドーミー吉祥寺の南の住人たちとの温泉旅行のシーンも
良かったなぁ。みんなで鎌倉行く回も。世之介は誰と一緒にいても、どんな時でも
世之介のままだったな。何気ない日常のシーンが幸せそうであればあるほど、
その後のことを想像してしまって、胸が苦しくて仕方なかった。ちょいちょい、
生きることとは、みたいな死生観のことが出て来たりもしたし。ドーミーでの
日常とは別に、二千花とのエピソードも同時に語られます。それがまた、ぐっと
来るものばかりなんですよ・・・。特に、二人が最後にバイクに乗って出かける
シーン。こういう二人の夜を経験しちゃったら、そりゃ、あけみちゃんは二千花に
敵う訳ないよなー・・・って思ってしまった。あけみちゃんに対する世之介の
煮えきらない態度に物申したいと最初は思ったけど、二千花とのエピソードを
読めば読むほど、世之介の彼女への想いの強さが伺い知れて、納得出来るように
なってしまったというか。しかも、来世の約束もしちゃってる訳で。でも、
あけみちゃんはそれをわかった上で世之介と付き合っているんですもんね。独り占め
出来ないこともわかった上で。それでも一緒にいたいと思えるのが世之介って
存在なんだろうな。
十五年後の一歩の姿は、なんとなく想像出来ました。きっかけをつくったのは
やっぱり世之介で、南郷さんが世之介に言ったことをちゃんと守ってくれた
ところにぐっと来ました。世之介は忘れるだろうなって予想したけど(苦笑)
南郷さんも、世之介に救われた一人だろうからね。義理を果たしてくれたんだと思う。
残念なのは、エバくんの娘の成長を世之介が見られなかったこと。きっと、自分の
娘のように可愛がっただろうにね・・・。でも、一歩の物語の中で生き続けて
くれて良かった。一歩の絵本、読んでみたいなぁ。
印象的だったシーンをもうひとつ。
二千花にこの世で一番大切なことは何?と聞かれて、世之介が出した答えが、
『リラックス出来ていること』。面白い答えだなぁと思ったけれど、確かに
それって、とても大切だ。深い。世之介といればみんな、リラックス出来そうだ。
二千花もきっと、最後の最後まで、リラックス出来たんじゃないだろうか。
最後の最後、エバくんに宛てた世之介の手紙は反則だよ~・・・もう、もう、
胸がいっぱいで。世之介はどれだけの愛と勇気を与えたんだろう。世之介からこんな
手紙もらったら、もう大丈夫って思うしかないじゃないか。
きっとエバくんも妻の咲子ちゃんも、辛くなったらこの手紙を読み返したんだろう。
何度も、何度も。そうやって、世之介のいない十五年を過ごして来たのだろうし、
この先も過ごして行くんだろうなって思えて、泣けて来た。
読み終えて胸がいっぱいになりました。
世之介と出会えてよかったなぁ、と私も心から思いました。
吉田さんありがとう。