ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

朱野帰子「くらやみガールズトーク」/友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース」

こんばんは。桜ももう終わりですね。明日は天気が崩れて、季節外れの寒さに
なるそうで。もしかして雪かも、とまで言われているし。もう寒いのは終わりだと
ほっとしていたのに(涙)。外出する予定なので、ダウンで行くようかしらん。


今回も二冊です。


朱野帰子「くらやみガールズトーク」(角川書店
最近よく読むようになった朱野さんの新刊。今度、『わたし、定時で帰ります』
ドラマ化されますね。ドラマ化に合わせて2も出ましたし(予約がもう回って来たので
近々読む予定)。
こちらは、『わたし、定時~』とは全く違った作風で、ホラーよりの短編集。
タイトルや漫画チックな表紙から、もっと軽めの作品を予想していたのですが、思ったより
ずっとダークな作品集だったので、ちょっと驚きました。読みやすいという意味では
軽く読めるっていうのも間違いではないけれど(一作が短いし)。何気ない
日常に潜む悪意やぞくりとする恐怖を描いていて、どれもひんやりとした
読後感のものばかりでした。
では、各作品の感想を。

 

『鏡の男』
夢遊病という病気とはいえ、寝ている間にDV人格になる男なんて絶対
付き合いたくないです。主人公の両親にもムカついたし、ラストの不動産屋
の態度もありえないと思いました。しかし、こんな男と結婚してほんとに
この主人公、大丈夫なのかな・・・。

 

『花嫁衣装』
主人公の夫にも、夫の家族にも、本当に嫌悪感しか覚えなかったです。嫁を
一体何だと思っているのだろう。私がこの主人公の立場だったら、絶対
耐えられないです。自分たちの都合しか考えない彼らの言動がとにかく気持ち
悪くて仕方なかったです。ラストの同じ病室の老婆の姿は完全にホラー。でも、
なんだかちょっとスカッとしました。

 

『ガールズトーク
こけし怖っ。こけしのガールズトークっていうと、一見ほのぼのしてそうですけど、
中身は・・・ひぃぃ。

 

『藁人形』
これもぞーっとするお話。主人公が職場に出入りする顧客のイケメン男性に
弄ばれる辺りはよくあるパターンだけど、そこで逆上して相手を恨んで、
藁人形って発想に行き着くところが恐ろしい。恋愛至上主義で、仕事を
疎かにして、やるべき仕事を人に押し付けるヒロインには嫌悪しか覚えなかった。
それにしても、ラスト、主人公の藁人形を作った人物は誰だったんだろうか。
鶴橋さんか、坂口さんの二択だろうけど。

 

『獣の夜』
子供を育てるというのは、ここまで自分を殺さなきゃいけないものなのでしょうか。
幽霊の子供まで受け入れられるヒロインの母性に圧倒された気がします。

 

『子育て幽霊』
きちんとしていた主人公の母親の変わり果てた姿が痛々しかった。自分の母の
未来がこんな風になってしまったら・・・と思うと、いたたまれない気持ちに
なりました。自分のような年齢になると、こういうお話を読むのは辛いし苦しい。

 

『変わるために死にゆくあなたへ』
クラスのヒエラルキーの底辺にいる女子の物語。神から祝福された顔を持つ組と
そうでない組に分かれる、という区分けはよくわかる。地味な『そうでない組』
のヒロインの言動が痛々しかった。顔の美醜に関係なく、恋愛は自由じゃないか。
ラスト、堂々と好きな男の子に告白した主人公の勇気が美しいと思いました。

 

『帰り道』
小学三年生の女の子を夜の9時過ぎに一人でバスに乗せて帰す、この母親の
無責任さに腹が立って仕方がなかったです。何度も来たことがあるからといって、
何かあったらどうするんだ。
帰り道のバスがこんな死者が乗るバスだったらいやだなぁ^^;;




友井羊「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん まだ見ぬ場所のブイヤベース」(宝島社文庫
スープ屋しずくシリーズ第四弾。
今回もスープ屋しずくの朝野さんのスープはどれも美味しそうでした。ひとくちに
スープといっても、いろんなジャンルがあるんだなーと驚かされます。いろんな国の
スープが出て来るのも面白いですね。一話で出て来たパセリのスープは、ちょっとクセが
ありそうだなぁと思うけど。刻んで上に載せるのはよくありますけどねぇ。それメイン
ってのが。
二話の蓮根のポタージュスープも美味しそう。最近、蓮根使う機会が増えたから、
作ってみたいです。皮もそのまま使っていいんだなー。よく洗わないと泥臭く
なりそうだけど。
三話のイタリア風のかき玉汁ってのも初めて知りました。そういえば余談なんですが、
先日相方と蕎麦屋に行った際、相方がかき玉そばを頼んだのだけど、かき玉ってものを
よく知らなかったらしく、かき揚げと玉子が入ったそばだと思って頼んだらしい。
出て来た料理を見て、え、コレ・・・?みたいな反応だったのが面白かった。
ってか、かき玉風の中華スープとか何度も作って出したことあるのに、名前
知らなかったんかい(苦笑)。
このイタリア風のかき玉が出て来た三話に関しては、ちょっと腑に落ちないところも
ありました。露ちゃんの同級生の女の子が、調理実習で作った他の班のカレースープを
捨ててしまった話なんですが、その子が捨ててしまう前に、カレースープが真っ赤
だったら、作ってる子たちが先におかしいって気づくと思うんですよね。赤くなった
その時点で騒動になってそうに思うんですが。煮込んでいる途中で、誰も見てなかった
のかなぁ。まぁ、男子は騒いでいて見てなかったのはわかるんだけどね。
四話の宝探しの話は、ラストで朝野さんに一つあげてほしいなーと思っていたので、
その通りになって嬉しかった。だって一番の功労者ですもんね。朝野さんの嬉しそうな
様子が微笑ましかったです。
ラストは、理恵さんの進む道に関わるお話。理恵さんが勤めているフリーペーパー
『イルミナ』が他の会社に譲渡されることになってしまう。そのままイルミナと
一緒に他会社に移るか、広告部に異動するか、友人の勤める編集プロダクションに
転職するか。理恵さんがどの選択をするのか、最後までハラハラしました。
彼女の出した結論は、らしいな、と思えるものでした。きっと一番自分に合った
選択をしたんでしょうね。
朝野さんと包丁を買いに行くところは、今回も微笑ましかったです。包丁は、
確かにいいものを買うと全然違いますからね~。切れすぎると、ちょっと怖い
ですけど^^;
それにしても、ラストの朝野さんのあの反応は、反則でしょう!これは、
もしかして、と期待してしまって良いということ!?淡々としている朝野さんが
ああいう反応を返すとは。そのギャップに萌え・・・。次回作では、また二人の
距離が近づきそうですね。俄然次の展開が楽しみになってきました。
早く読みたいなー。