ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

久保りこ「爆弾犯と殺人犯の物語」(双葉社)

これも、王様のブランチで紹介されていた作品。あらすじ聞いて、面白そうだなぁ

と思ったので予約してありました。ブランチで紹介された後だったから、予約

結構多くて待たされたな。まぁ、かくいう私もそれに乗っかる一人なんだけどさ

(苦笑)。

いや、面白かった。表題作が一作目に入っているのだけど、この一作だけ読んだ

限りでは、サイコパス同士の恋愛、くらいにしか思えないんですよね。タイトル

通り、爆弾犯と殺人犯の話なんですけどね(これ一作読んだ限りでは、殺人犯

とは断定出来ないのだけれどね。タイトルでネタバレしてるとも言えるような)。

空也がある場所で拾ったスマホに電話をかけると、持ち主の小夜子が出た。

スマホを渡す為に小夜子に出会った瞬間、空也は彼女に一目惚れした。正確に

言えば、彼女の義眼の左目に。運命的な出会いの後、交際に発展し、二人は結婚

した。ある日空也は、小夜子の話から、彼女の左目が公園に仕掛けられた爆弾に

よって失われたことを知る。その爆弾は、空也が仕掛けたものだった。自分の

いたずらが原因で彼女の左目が失われたことを言い出せない空也だったが、小夜子

もまた、空也に言えない秘密を抱えていた――。

二人の前に、ひなという少女が現れたことから、少しづつ明らかになって行く

小夜子の犯罪。じわじわと明らかになっていくその過程の書き方が非常に上手いな、

と思いました。

一作目が終わった後、二作目は全く二人と関係ない人物が出て来たので、普通の

短編集なのかと思ったのですが、二作目の終盤、一作目との繋がりが明らかに。

その後の話も、一見繋がりがなさそうでも、最後まで読むとちゃんとすべてが

繋がっていて、とても良く出来ていると思いました。構成が上手い。途中に出て

来た何気ない伏線も、最後にちゃんと回収されてますし。あれってどうなったの

かな?と疑問を覚えた箇所がいくつもあったので。最後まで読んで、前に戻って

確認したりしちゃいました。

登場人物は、基本的に腹に一物ある人物ばかりなので、ほとんど好感持てるキャラ

がいなかったですね。空也は義眼が好きで爆弾魔というパワーワード満載で、

単なるヘンタイでサイコパスにしか思えないし、小夜子は腹に一物も二物も

抱えていて何考えてるかわからないし、ひなちゃんは自分勝手だし。ひなちゃんの

母親も性格キツいし。まぁ、ひなちゃんと母親に関しては、父親と夫が不倫して

失踪したっていう背景から来てるので仕方ない部分はありますけどね。あと、

その二人に関してはラスト一作で見方が変わったところもあります。特にひな

ちゃんに関しては、もう少し幸せな結末を用意してあげてほしかったなぁ。

なんか、彼女だけが一番不幸の割を食ってる気がして、気の毒になりました。

漢字好きの小学生、光のキャラが一番好きだったかも。知らない女性について

行ってしまう素直すぎるところは、ちょっとイラッとさせられましたけども。

でも、結果としてそれがお手柄に繋がった訳ですからね。結果オーライでほっと

しましたけどね。あの二人から、よくこんな良い子が生まれたよなーとちょっと

びっくり。いつか、大人になって二人どっちか(あるいは両方)の秘密を知る日

が来るんだろうか。そんな日が来ることなく、このまま素直に育って欲しい、

と願うばかりです。

先の展開が読めないので、最後までぐいぐい惹きつけられました。一体どんな

結末を迎えるのか、先が気になって読む手が止められなかったです。文章も

読みやすいし、叙情的な表現も上手いと思う。

ちょっと今後注目の作家さんになりそう。