ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

坂井希久子「粋な色 野暮な色 江戸彩り見立て帖」(文春文庫)

江戸版のカラーコーディネーター(色見立て師)お彩が活躍する、シリーズ第三弾。

前作で、塚田屋の主人・刈安から、流行色を作り出してみろと無理難題をふっかけ

られたお彩と右近。出来なければお彩は職を失い、右近は塚田屋を去らねば

ならない。焦るお彩だったが、右近には策があるようだった。どうやら、人気の

辰巳芸者・蔦吉の手を借りようとしているらしいのだが――。

今回も、お彩の色見立ての手腕と、右近の頭脳で二人に立ちはだかる問題を

鮮やかに解決して行くところがお見事でした。二人の仲はなかなか縮まらない

ですけどねぇ。お彩は右近のことを全く信用してない感じだし、右近は右近で

飄々とした態度を取ってばかりで、何を考えてるのかわからないところがあるし。

右近の日頃の彩への態度とかを見ると、どう考えても良い人にしか思えないのに、

なんで彩はあんなに毛嫌いしてるんですかねぇ。あれほどお世話になっているのに。

ちょっと、右近が気の毒になってきてしまいます。まぁ、彩のつっけんどんな態度

にも全くこたえてなさそうではありますけどね。嫌なやつと対峙した時の右近は

あんなに頼りになるんだから、もう少しお彩さんには態度を軟化させて欲しい

なぁ。

そうはいっても、深川鼠をなんとか流行色にしようと協力する二人は、なんだかんだ

でいいコンビだと思う。深川鼠を、自分のところが作った色だと嘘をついた三竹屋

には腹が立って仕方なかった。右近の機転でやり込めたところにはスカッとしました。

スカッとといえば、ラストに出て来た弥助のことも。いくら顔が良くても、こんな

性悪な男にお伊勢ちゃんは勿体なさすぎる。何度会ってもお彩の顔を覚えないし。

お伊勢ちゃんが入れ込んでるのかと思いこんでいたので、ラストで明らかになる

彼女の想い人にはびっくり。そんなそぶり全然なかったじゃんかー。でも、絶対

その人の方がお似合いだと思いました。さすが、見る目があるなぁ。でも、弥助

と二人でお茶したりしてたのは何で?そういう行動が誤解を生んでしまった

原因だったと思うのですがね。

浅葱色が野暮な色っていうのがちょっと私も理解出来なかったです。色自体の

評価ではないので余計に。自分がきれいだと思った感覚を信じるべきですよね。

そういう意味で、文次郎という青年は、とても良い感覚を持っている子だな、と

思いました。お彩も、文次郎の発言で大事なことに気がついて良かったですね。

色見立ての仕事を通して、お彩も少しづつ成長しているのを感じます。天職ですよね。

私も、お彩に色見立てしてもらいたくなりました。

今回もとても面白かったです。このシリーズやっぱり好きだな~。

次巻も楽しみ。