伊坂さん最新刊・・・とはもう、言えないかな^^;昨年の9月に出た作品なので。
予約に乗り遅れてしまって、結構待たされました。久しぶりの殺し屋シリーズ!
読むのを楽しみにしていました。前作では新幹線から降りられなかった不運な
殺し屋・七尾(天道虫)でしたが、今回はホテルから出られなくなってしまうお話。
相変わらずテンポが良くて、ぐいぐい引き込まれてしまいました。面白かったー。
今回、七尾に持ち込まれたのは、高級ホテルに宿泊している<客>に、娘からの
プレゼントを届ける<だけ>の超・簡単で安全な仕事・・・のはずだった。しかし、
七尾が訪れたのと時を同じくして、同ホテルの別の部屋に、見たものをすべて記憶
出来る能力を持つ、紙野結花が滞在していたことが、七尾の悲劇の始まりだった
――。
同時期に、これだけ七尾と同じ仕事の同業者がやって来る、というのは正直
非現実的過ぎないか、と思わなくもないけれども、そこがこのシリーズの面白い
ところであって、それをツッコむのは野暮というものですよね。七尾って、
嫌だ嫌だと思っていることが、その通り自分の身に降り掛かって来るタイプで、
ちょっと気の毒になってしまいます(苦笑)。ただまぁ、こういう世界で周りの
同業者たちがばんばん殺されてしまう中、しぶとく生き残っていけるのだから、
相当な強運の持ち主でもあるんだろうなぁとは思いますね。本人はひたすら運が
悪いと嘆いているようですが(苦笑)。そして、なんだかんだで、お人好し。
七尾には、紙野結花を助ける義理なんか全くないし、本人もそんなことに手を
出さずに、自分の任務を遂行してさっさと帰りたいと思っているにも関わらず、
結局最後には手を差し伸べてしまう。まぁ、状況的に、そうせずにはいられなくなっ
ちゃうってのもあるんだけども。でも、そこを割り切って見捨てることも出来る訳で。
それができないところが、七尾の七尾たる所以かな、と思って微笑ましくなっちゃう。
紙野結花がトラブルに巻き込まれた諸悪の根源・乾に関しては、最後まで悪人なのか
そうでないのか判断できず、ハラハラさせられましたね。噂通りだったら、人間を
解剖して喜ぶサイコパスな訳ですから。伊坂さんなら、平気でそういうキャラを
登場させかねないですからね(苦笑)。ただ、紙野さんの記憶にいる乾は、あまり
そんなことをしそうなタイプに見えなかったので、混乱したところはありましたね。
今回、『マリアビートル』の時の王子ほどではないにしても、やっぱりとんでもない
嫌悪感満載のキャラたちが登場しました。乾のことはまぁ、置いておいて、
明らかに七尾たちの敵である、六人組に関しては、もう、どのキャラクターも
おぞましい人物造形でしたね。ただ、六人もいるし、つけられた名前(コード
ネーム?)がそれぞれに日本の時代の名前なので、誰が誰だか全然理解出来な
かったです^^;しかも、この時代の名前も、カタカナ表記だったので、最初全然
気づいてなかったんですよ(アホ)。勝手に、違う漢字をイメージしちゃってたり
して(センゴク→千石とか、アスカ→明日香とか。ヘイアンに関しては、外人の
名前をイメージしてたり。名前っていう先入観のせいでしょうね^^;これが
最初から漢字表記だったら、さすがに一発でわかったと思いますけどね)。
こいつらの倫理観、一体どうなってるんだ、と出て来る度に悍ましい気持ちに
なりました。伊坂さんって、ほんと、生理的嫌悪を覚えさせるキャラ作るの
上手いよなぁ・・・本人、あんなに虫も殺せないようなタイプの怖がりさんなのに
ねw)。
でも、一番のサイコパスはやっぱり、あの政治家でしょうね。見た目と中身の
ギャップは、王子と張るかもね・・・。
マクラとモウフの二人に関しても、途中までどういう立ち位置のキャラなのか
わからなかったですが、最終的にはこの二人の活躍で救われたところが大きかった
ですね。いいコンビですよね。物騒な職業なのは間違いないんですけどね^^;
そして、やっぱり言及しておくべきなのはココさんのことでしょうね。紙野結花を
助ける為にあれだけ尽くしてくれたのに・・・あの展開はショックでした。でも、
終盤で意外な事実が判明して、驚かされました。伊坂さんも人が悪いなぁ、もう。
命がけの攻防戦で、終始緊迫した空気感ではあるのですが、それぞれのキャラクター
のおかげでか、コミカルに読める部分もあって、スピード感溢れる筆致もあって、
ぐいぐい引き付けられました。伏線回収の妙もさすがでしたね。
最後は、777がばっちり決まったって感じの爽快感で読み終えられました。
不運でしかない理不尽な人生を送って来た結花ちゃんが、あの人物と幸せになった
なら良かったよ。
七尾は、お疲れさま(笑)。