ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貫井徳郎「宿命と真実の炎」/里見蘭「古書カフェすみれ屋と悩める書店員」

どうもこんばんはー。
梅雨らしい天気が続きますね。じめじめ鬱陶しくて嫌になっちゃう。昨日お休みだった
相方が、リサイクルショップで除湿機を買って来てくれました。これが意外とスグレモノ。
洗濯物もカラッと乾きましたし、干せない布団も、いつもよりサラッとしているような。
梅雨の間は活躍してくれそう。最近の我が家は結構リサイクルショップ利用率が高い。
ちょっと試してみるのに定価で買うのは勇気がいるけど、多少型落ち品であっても安く
試せるのならばそれに越したことはない訳で。中古なだけに失敗するリスクもありますけどね^^;
今狙っているのは、ストウブのお鍋。ル・クルーゼと迷うとこだけど、玄人受けしそうな
ストウブで煮込み料理を作ってみたい・・・!でも人気みたいで、なかなか入荷しないみたい
なんですよね~。中古でも高いし、私に使いこなせるのかは大いに疑問がありますけどね・・・(しーん)。


読了本は今回も二冊ご紹介。


貫井徳郎「宿命と真実の炎」(幻冬舎
『後悔と真実の色』の続編。続編出るとは思わなかったなぁ。西條久しぶり。といっても、
覚えていたのは西條のキャラクターくらい。彼の転落人生のことはなんとなく思い出せる
のだけど、その理由はすっかり忘れてました。女性関係で職を追われたとは・・・なんか、
彼のキャラクターらしくないなぁって感じなんだけど。その過程を覚えてないからそう
思うのだろうけども。また機会を見て前作をおさらいしなくては・・・。
警察を追われて警備員の仕事で糊口を凌いでいた西條だが、兄の口利きで父親の系列会社に
再就職することに。針のむしろのような職場に肩身の狭い思いをしていた西條の前に、
不可解な警察連続殺人事件を追う所轄刑事の高城理那が現れ、事件解決のアドバイザーに
なって欲しいと頼まれる。一度は断ったが、ある出来事をきっかけに、引き受けることに。
理那の話しを聞いただけで、西條は驚くべき閃きを見せ、事件は急展開を迎えるが――。
警察官連続殺人事件の犯人に関しては、完全に貫井版の『白夜行』って感じ。正直、
誠也とレイの関係や、レイの正体は、途中でだいたい見当がついてしまいました。
もうひとひねりあるのかなーと期待してたんだけど、ほぼその通りだった・・・。
なんか、確か前作もミステリ的には同じような印象だった覚えがあるんだけど(苦笑)。
今回新たな主役に躍り出た女刑事の理那は、容姿はぱっとしないけど、仕事に対して
真っ直ぐでひたむきに取り組む姿勢は好感が持てました。警察組織の隠蔽体質に疑問を
覚え、間違ったことは正さなければという正義感も持ち合わせているし。ただ、警察内では、
こういうタイプは煙たがられるだろうなぁとは思いましたが。女だというだけで、軽く
見られるような職場ですし。でも、こういう人間がいなければ、冤罪が後を絶たなく
なってしまいかねないと思う。理那にとって、刑事は天職じゃないかと思いました。
理那の父親とのエピソードも良かったですね。厳格だった父が、目が見えなくなった
ことで、理那にへりくだるような態度を取り始めるところには、やるせない気持ちに
なりましたけど・・・でも、終盤の二人のシーンは胸を打ちました。
理那とコンビを組んだ村越のキャラは、最初はいまいち掴みどころがなかったけれど、
だんだんとお堅い理那には、このくらい軽い人間の方が合っているのかも、と思える
ようになって行きました。最初は反発していた理那も、最終的には村越のことを認めて、
コンビを組めて良かったと思えているようでしたしね。
私が個人的に好きだったのは、西條と彼が通う古書店の店主とのやり取り。二人の
本談義のシーンはわくわくしました。寂しいひとり暮らしの西條にとって、本を読む
ことだけが趣味らしい趣味で、お薦めの本を教えてくれる店主との会話は彼にとっての
ほぼ唯一と言って良い癒やしの時間でした。店主も、頭の切れる西條とのやり取りは
楽しかったのではないかな。彼の娘のことがあって、少し関係は変わってしまったけれど。
でも、今後もこの古書店との親密な関係は変わらないといいなぁ。彼の娘は、なんとなく
西條のことを気になっているようだし・・・(でも、今後も西條と付き合うことはない気が
するが)。
この作品で特筆すべきは、何といってもラストの救いのなさじゃないでしょうかね。
最後の最後で判明する、ある人物の腹黒さに辟易。まぁ、そういうキャラじゃないかな、
とはちょっと思ったけれども。踊らされたあの人が哀れ。とはいっても、やったことは
まったく同情の余地がなく、許しがたいことだけれど。この辺りも、白夜行と似てるの
かなぁ。二人の再会のシーンは、ちょっとご都合主義的に感じました。街中ですれ違った
だけで、あれだけ年月が経っていて相手の顔も(多少)変わっているのに、すぐにその人
だなんてわかるものなのかな。ちょっとそこは腑に落ちなかった。
あと、18年前の交通事故の真相は結局のところどうだったんだろう。せっかく理那が
執念で再捜査したのに、最後まで有耶無耶なままっていうのは何とも消化不良。どちらの
目撃者が正しかったのか、そこはちゃんと突き止めて欲しかったなぁ。まぁ、こんな風に
闇に葬られた事件は現実でもいくつもあるんだろうな。
西條が最後にああいう決断をしたことで、俄然更なる続編に期待しちゃいますね。
一体どんな形で再出発するのか、楽しみにしていたいと思います。



里見蘭「古書カフェすみれ屋と悩める書店員」(だいわ文庫)
前作『古書カフェすみれ屋と本のソムリエ』がとても面白かったので、続編が読めて
嬉しいです。すみれさんの絶品料理と、癒し系書店員紙野君のおすすめ本での謎解きは、
今回もひねりが効いていて面白かったです。二人の関係が少しは進展するかと思いきや、
ほとんど進展らしい進展がなかったのが残念といえば残念でしたが・・・。
一話完結形式で、四話収録されています。
一話目の『ほろ酔い姉さんの恋』は、すみれ屋の常連知穂が、自分のブログ上で出会った男性
とオフ会をしたが、その翌日から連絡が途絶えたという。お互いに好意を持ったように思えた
にもかかわらず、なぜ相手から連絡が来ないのか。悩む知穂に、紙野がある本を差し出す。
最初に相手が頼んだドリンクで、あれ?とは思ったのですが、真相を知って、なるほどー!
と思いました。私もそうだから、相手の気持ちはわかるなぁ。ブログでのやり取りで好意を寄せる、
という部分も、ブログをやってる身としては理解出来るものがありました。コメントのやり取りで、
なんとなくその人の人柄ってみえてくるものですからね。ネカマとかの例もあるけど、長く
やり取りしてれば、その辺もわかってくると思うから。
二話目の『書店員の本棚』は、すみれさんと紙野君の元職場の書店の同僚が出て来ます。
元同僚の堺君は、新しく入った優秀な契約社員の後輩、日向君の仕事っぷりに嫉妬を
覚えて意気消沈していました。日向君は、堺君の得意な本のポップ作りに於いてさえ、
天賦の才能を遺憾なく発揮してしまう。落ち込む堺君に、紙野君が差し出した本とは。
夏目漱石の『イイン』の真相には意表をつかれました。ミステリとしては一番初級のトリック
だというのに、気づかなかったなぁ。紙野君が薦めた本も面白かった。右脳と左脳を
上手く使えば、絵心ない人でも絵が上手に描けるんだね。
三話目の『サンドイッチ・ラプソディ』は、すみれ屋にパンを卸しているパン屋の大泉
さんから持ち込まれたもの。大泉さんのパン屋の常連客に飯山さんという人がいるのだが、
その人の義母が最近うつ症状が出て来てふさぎ込み、食事をほとんど摂らなくなったという。
心配した飯山さんが話を聞くと、ハンバーガーが食べたいのだという。そこでファストフードを
始め、本格的なものまで様々なハンバーガーを食べさせてみたのだが、どれも違うと言って
二口目に手をつけない。飯山さんの義母が食べたいという『ジョーさんのハンバーガー』とは
一体どんなものなのか。
こういうハンバーガーがあるとは知らなかったです。すみれさんが作るやつなら絶対
美味しいんだろうなぁ。あと、すみれさんが作るチリドッグもめっちゃ美味しそうだった。
あと、名物メニューのフィリーズチーズステーキサンドイッチ!名前だけで美味しそうだもん。
今この記事書いてるだけでお腹空いてきた・・・。
四話目の『彼女の流儀で』は、仲良しの常連客カップル、中村さんと楓さんの話。結婚
直前だった二人だが、事件は中村さんの親族と楓さんの顔合わせの場で起こった。料理上手な
楓さんが当日は料理を振る舞うことになっており、二人で綿密に献立も考えていたにもかかわらず、
本番で楓さんが出した料理はそれとは全く違うメニューだった。突然メニューを変えた理由が
わからない中村さんに、楓さんは失望し、距離を置きたいと言うのだが――。
こういう状況って、実際ありそう。その場でとっさにああいう切り返しで乗り切った楓さんは
すごい。私だったら絶望して料理どころじゃなくなりそう。そんな身内がいるって思うだけで、
別れたくなるだろうな。でも、中村さんの祖父母がまともな人で良かったです。
しかし、メニューを見ただけでそこに気付く紙野君はさすがですねぇ。言われてみれば、
という感じ。自分も料理するのになぁ。
紙野君の良い所は、悩む人に本を読んでもらって、自分で考えさせて解決に導くところ。
直接教えれば早いのだろうけど、それじゃ根本的な解決にならない。なぜ自分が間違って
いたのか、本人自らに気付かせることが大事なのだとわかっているからだと思います。
まぁ、そこで本を買わせるってところで、古書店員のとしての計算も多少は働いてるのかも
しれませんが(苦笑)。でも、その本のおかげで物事が解決に向かうのだから、結果本人に
とって大事な本になることは間違いない訳で、多分みんな買って良かった、と思える筈ですよね。
忙しくなって来たすみれ屋に、今回強力な助っ人バイトが入ります。ニューフェースのほまりさん、
なかなか良いキャラですね。お料理に関して研究熱心だし、何よりすみれさんのお料理の
ファンというのが伝わって来て好感が持てました。しばらくはすみれ屋も安泰でしょう。
次回作ではもう少し、すみれさんと紙野君の仲が進展するといいなぁ。