ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

里見蘭「古書カフェすみれ屋とランチ部事件」(だいわ文庫)

古書店とカフェが一緒になったお店、古書カフェすみれ屋シリーズ第三弾。大好きな

シリーズだったので、ようやく三作目が出てくれて嬉しい。元書店員のすみれが

開いたカフェ、すみれ屋には、古書店スペースが併設されている。ここは、好きな

本を読みながら食事や喫茶を楽しめるカフェなのだ。古書スペースを担当する

すみれの元同僚・紙野は、悩めるお客に一冊の本をオススメし、その本を読んで

もらうことで、問題を解決に導くという特殊能力がある。本のソムリエ紙野の元には、

悩めるお客が次々と現れて――。

一話目の『割り切れない紳士たち』は、マッチングアプリで婚活する男性のお悩み

相談。気に入った女性といい所まで行ってデートもうまく行ったと思ったにも

関わらず、その後来たメールでお断りされてしまう。デートの時とメールでは

別人のようになってしまったその女性の真意とは。

紙野君が件の紳士に渡した本は、『俳句いきなり入門』。婚活話になぜ俳句の本――?

スタンド句会というのは面白い試みだなぁと思いました。他人の作った俳句を選んで、

選評を行う句会だそうな(この本の著者が考えたものらしい)。

紙野君のおかげで紳士の婚活がうまく行ったのは良かったと思うけど、こんな母親が

ついていたら、今後苦労するんじゃないかなぁとちょっと心配になってしまった。

 

二話目の『一期一会のサプライズ』は、テレビのカメラマンが体験した不可解な

出来事のお話。担当している人気料理番組で、名店の寿司職人が出した寿司は、

司会のタレントが予想した寿司と全く違っていた。当初の予定ではタレントの

予想通りだった筈なのに、なぜ本番で違う寿司を出したのか。

紙野君が差し出した本は、古川緑波『ロッパの悲食記』

寿司屋の大将の気遣いには感心したけれど、こんな回りくどいやり方じゃなくても

いいような気はしました。そもそも、当のタレント自身が全くそれに気づいて

いなかったし。紙野君がいなかったら、そのまま嫌な思いだけして終わってた訳で。

まぁ、大将の杞憂だったから良かったですけどね。

 

三話目の『天狗と少女と玉子サンド』は、母娘でやってきたお客さんの不思議な

出来事を解決するお話。5歳の娘が母親に差し出したのは、天狗からの手紙――?

誘拐を示唆するような不可解な手紙の真相とは。

紙野君がオススメしたのは、筒井康隆『’71日本SFベスト集成』の中の、

藤子・F・不二雄『ヒョンヒョロ』という短編マンガ。

これは、天狗の手紙の真相の方にはだいたいの予想がついたのだけど(ほぼ当たり

ました)、当の『ヒョンヒョロ』の内容の方がいまいちピンと来なかった。いや、

物語のドンデン返しの部分の意味はもちろんわかったのだけど、ヒョンヒョロの

正体がよくわからなかった。読んだすみれさんとかほまりさんとか、みんな

わかってるみたいなので、私の勘が鈍いだけだとは思いますけど・・・^^;;

マーくんが手に入れたきらきらした星が地球ってこと・・・?マンガをちゃんと

読めばわかるかなぁ。

紙野君の叔父さんの家に紙野君とすみれさん二人で行くエピソードにはほっこり。

叔父さんから聞く紙野君の普段のすみれさんに対する評価を知って、ニヤリ。

やっぱり、紙野君とすみれさんはお似合いだと思うなー。

 

四話目の『シェアハウスのランチ部事件』は、カフェ開拓が趣味で、シェアハウスに

住む女性が経験した、シェアハウス内での不可解な出来事のお話。

シェアハウスの人々で結成されたランチ部でスパイスカレーを作っていた時、突然

鳴り響いた非常ベル。その音にびっくりした主催者の女性は、作っていたカレーの

中に調味料を落としてしまい、料理が台無しになってしまった。非常ベルは誰かの

いたずらだったようだが、鳴らしたのは誰なのか。疑わしい人物はいるようなの

だが・・・。

紙野君が今回オススメしたのは、トルーマン・カポーティカポーティ短編集』

の中の『銀の酒瓶』

この本読んだだけで、よく真相に気づいたなぁ。紙野君のメッセージ、回りくど

すぎないか?^^;

非常ベルを鳴らした犯人に関しては、多分この人なんだろうな、という予想は

つきました。その理由までは全然想像できなかったけど。でも、これって、ミステリ

では禁じ手の真相ですよねぇ。まぁ、本格ミステリじゃないからいいんだろうけどさ。

夢の為とはいえ、こういうモラルのないことをされると、オーナーはたまらない

ですよ。そのままおとがめなしの結末じゃなくて良かったです。

 

すみれさんと紙野君の距離は少しづつ縮まっていそうですね。今回、紙野君の

ファンになって、古本屋のアルバイトに収まった花音さんが、今後少し引っかき

回してくれそうな感じがしますね。どうなっていくのやら。