ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾/「眠りの森」/講談社文庫刊

東野圭吾さんの「眠りの森」。

高柳バレエ団のバレリーナ、浅岡未緒。ある日、親友の斎藤葉瑠子が事務所に侵入した強盗を
殺して捕まったという知らせを受ける。葉瑠子は正当防衛を主張するが、警察は確証が見つかる
まで拘留を解くことはできないという。事件の担当刑事・加賀は、葉瑠子の正当防衛が真実
なのかを探る為捜査に乗り出すが、再び高柳バレエ団の関係者が死体となって見つかり、捜査は
難航する。捜査を続けるうちに、次第に未緒に惹かれて行く加賀。事件の背後には悲しい真相が
隠されていた――加賀シリーズ第二弾。


新作を読む前のおさらいとして急遽再読。十ウン年ぶりに読んだので、内容をすっかり忘れて
いて、初読のような新鮮さがありました。加賀さんの恋を描いた作品ってことは覚えていたの
だけど、読んでみて、思った以上に加賀さんの恋の部分に重点が置かれているな、と感じました。

私の中の加賀さんのイメージはまずクールって言葉が最初に浮かぶのだけど、この頃の加賀さん
にはクールな印象はあまりありません。未緒に恋をしているせいもあって、優しく気のつく好青年
って感じ。もちろん、捜査に置いてはこの頃から鋭い頭脳を持っている切れ者ではあるのですが。
バレエを観賞する加賀さんも新鮮だったけど、事件関係者と喫茶店なんかに入って頼むのが
ロイヤルミルクティーだったりするところがちょっと可愛らしくてにやけてしまった。なんだか、
全体的に加賀さん若いなぁって感じ。最近の加賀さんとは大分印象が違って、意外な面をたくさん
見れた気がします。
もちろん、一番意外性が大きかったのは未緒に対する恋心の部分なのですが。こんなに捜査に
私情を挟んでいいのか?と思うくらい、未緒への想いを隠さずに彼女に近づいて行く加賀さんに
こっちまでドキドキしちゃいました・・・。うう、加賀さんにこんなに想われるなんて、羨まし
すぎるじゃないか~~!

ミステリの真相なんかも全く記憶から抜け落ちていたので、犯人やからくりには素直に驚いて
しまいました。動機がなんとも切なくて、やりきれない気持ちになりました。そして、なんと
云ってもラスト2ページですよ!うぉぉぉ~~~加賀さぁぁぁ~~~~ん(号泣)。このラストは
切ない。切なすぎる。加賀さんの激情に胸が締め付けられるような気持ちになりました。
この作品以降、加賀さんの恋の話が一切出て来なくなってしまったのは、この悲恋エピソードが
トラウマになっていて、恋愛に辟易しているからだろうと思い込んでいたのですが(漠然とした
記憶しかなかったので)、加賀さんは今現在も未緒のことを忘れられずに、彼女のことを待ち
続けているからなのかも、と思い直しました。真相はわかりませんけれど・・・。新作で未緒
のことが出て来るって情報をちらっと耳にしたので再読したんだけど、読んで良かった。

今ちょうどその新作を読んでいるところなのですが、本書で感じた加賀恭一郎像を裏付ける
ような、人情味と人間味のあるエピソードが次々と出て来て、この頃と本質はちっとも変って
いないのだな、と嬉しく思います。途中からクールさが前面に出るようになって、大分人物像が
変わってきたように感じていたので。

本書と新作を続けて読んで、改めて加賀恭一郎という人物の魅力を再認識させられました。
やっぱりこのシリーズが大好きです。新作を読み終えるのが勿体なくて(あと2章ぶん)
ぐずぐずしている自分がいるのでした・・・。今んとこ未緒の名前は出てこないんだけど・・・。
多分、読み終えて「加賀さん、好きだーーーー!!」って叫んでる自分がいる気がするな
(だって、今の時点ですでに叫びだしたい状態になってるんで^^;)。