京極夏彦さんの京極堂シリーズ最新刊「邪魅の雫」。
「殺してやろう」「死のうかな」「殺したよ」「殺されて仕舞いました」
「俺は人殺しなんだ」「死んだのか」「――自首してください」「死ねばお終い
なのだ」「ひとごろしは報いを受けねばならない」
昭和二十八年夏。江戸川、大磯、平塚と連鎖するかのように毒殺死体が続々と。
警察も手を拱く中、つにあの男が登場する!「邪なことをすると――死ぬよ」
(背表紙より引用)。
すいません、背表紙のあらすじがあまりにもすごいんで引用させて頂きました^^;
これを読んで内容わかる人いるのだろうか・・・(苦笑)。
さて、本書です。ついにこの読書録に京極作品を加える日が来ました。読み終わって
まず感じたことは、「ああ、終わってしまった・・・」。重いし汚したくないので家
以外では読めないし、いろいろ他の本に寄り道したりしていたせいで、読み始めから
読了までは結構時間がかかりました。800ページ以上もあるし。でも、一度読み
出すと長さなんて忘れてしまう。京極さんの文章というのは、本当に身体に染み込む
ような心地よさがある。京極堂の薀蓄も、普通だったら辟易して読み飛ばすような
話なのに、頭の中にさらっと入り込んで来るから不思議です。ただ、今回、京極堂
自体の出番が少なく、お馴染みの薀蓄もほとんど出て来ないのが物足りなかったの
ですが。出番が少ないといえば、榎さんの方が更に少ないですが。そもそも、この
物語の発端は榎さんの○○話から始まっているので、基本的には榎さんの物語と
云っても過言ではない位な筈なのに、榎さんの出番は驚く程少ない。榎さんファンに
とっては相当ストレスが溜まる作品と云えるかも・・・(私もですが)。でも、
途中ちらっと出て来て重要な一言、そしてラスト2ページで強烈な一言を残して
去って行くのだから、相変わらずもの凄い存在感ではありましたが。榎さんの恋愛話
にはちょっとびっくりでしたねぇ。一体どんな恋愛をしていたんだろう。全く想像
できない。その辺りまで書いて欲しかったような、読みたくないような(ジレンマ)。
様々な視点から次々と場面が変わって行くので、正直ついて行くのは大変ですが、
ラストにはちゃんと物語が繋がって収束する辺りはさすがですね。ただ、連続殺人
事件の謎解きはともかく、大元の真犯人(?)に関しては、途中でほとんどの読者が
気付いてしまうのではないでしょうか。私も多分こうだろうな、と思いましたし。
それでも、その仕掛けには到底辿りつけませんでしたけど。本書も小説ならではの
作品ですね。
さて、我らが愛すべき駄目人間(爆)、関君は今回もいろんな人から虐められっぱなし
でした。京極堂からは相変わらず「君なんか友人ではない」と切捨てられるし、警察
へ行けば「犯人顔」と断言されるし、行く場所行く場所で暴言に遭っていたよう
な・・・。それを受け入れちゃう関君もすごいですが。でも、関君が榎さんを気に
かけていた所がなんだか嬉しかった。なんだかんだ言っても心配なんですよね。
友達ですからね。(榎さんにとっては‘下僕’でも^^;)
関君と益田君とのコンビはなかなか楽しかったです。益田君がいちいち鞭に拘って
いたのがもう、ツボでした。何故に犯人対策に鞭・・・しかも毒殺犯なのに。
それを関君に隠す辺り読んでる時は顔がにやにやしちゃいました。箒もツボだった
けど(笑)。何気に、お笑い要素が盛り込まれている辺りは、京極さんのサービス
精神なのでしょうか。
で、後半はもう、一気にいけたんで、「ああ、終わってしまった」です。800
ページ以上も読んだのに、まだまだこの文章に酔いしれていたい、という気に
させられる所が京極夏彦のすごい所。次に読めるのはいつになるんだろう・・・
次は榎さんをもっと活躍させて欲しいなぁ。そして京極堂の薀蓄をたっぷり入れて
欲しい。そして関君をもっといぢめて・・・いやいや、小説家として大成させて
あげて欲しいものです(無理か)。自分の批評に悩める小説家ですから(苦笑)。