天樹征丸さんの「東京ゲンジ物語」。
あたしの周りではよく人が死ぬ。小学校の友達、あたしの両親、中学の担任、同級生
――あたしは‘死の呪い’にかかっているのだ。そして、死があたしのそばにやってくる
前には、必ずそれとシンクロするように幼い頃の記憶が飛び出してくる。そう、古びた
おもちゃ箱から転がり出てくるビー玉のごとくに。そしてまた新たにあたしの周りで人が
死ぬ――18歳の美少女・ゲンジの周りで連続して起こる奇妙な死。その陰にはいつも
美貌の死神・冬夜がいた。その恐るべき真実とは。
天樹征丸さんといえば、あの「金田一少年の事件簿」の原作者としての顔が有名でしょう。
でも、実は結構有名どころのドラマの脚本なども手がけていてマルチな活躍をされている
のですね。
で、本書ですが。あの金田一少年の作風とは全く違って、ちょっとダークな雰囲気
漂うサイコミステリでした。主人公ゲンジに纏いつく「死」の色が全篇に漂い、独特の
雰囲気を醸しだしていて、なかなか私好み。猟奇殺人を扱ってる割に、それぞれの
死の解決があっさりしているのはページ数を考えると仕方ないことなのでしょうか。
ちょっとその辺りの物足りない部分は感じました。ただ、その死が全てゲンジの過去の
事件の伏線となっているという構成はなかなか良かった。ラストの真相も結構意外でしたし。
私としては及第点ですね。純粋に読みやすいし、楽しめました。
ただし、文章力という点ではもう少し改善の余地はあるかな。ただ、これが漫画原作と
すれば、十分面白い漫画になるのではないでしょうか。漫画化したら、雰囲気は「デス・
ノート」みたいな感じになりそう。いや、あの漫画、読んでませんので印象ですけど^^;
基本はモノクロで、ある部分だけ鮮やかな極彩色、みたいな。色、音、両方で印象的な
シーンがあるので、かなり五感に訴える作品と云えるかも。漫画化するとしたら、もちろん
作画担当は表紙絵の田島昭宇氏でしょうね。ゲンジはもう、このカバー絵のイメージしか
考えられないです^^;
そして、装丁が格好いい!やはりビジュアルに拘った作品という感じがしますね。ゲンジが
何故「死」に取り憑かれているのか、その全てが明かされている訳ではないので、まだ続きが
ありそうな感じもします。ゲンジと冬夜がその後どうなるのか、気になるなぁ。
ゲンジはまだ死に取り憑かれたままなのか。その辺をはっきり知りたいのです。