米澤穂信さんの「ボトルネック」。
兄が死んだと聞かされた時、ぼくは二年前に死んだ諏訪ノゾミを弔うために
東尋坊に来ていた。無邪気な従妹と訪れたこの地で、彼女は不幸な転落事故に
遭った。崖の上から海へ花を手向けたその瞬間、強い眩暈がぼくを襲った。
そしてぼくは落ち――次に気がつくとぼくは全く違う場所にいた。そこは
「生まれなかった姉が僕の代わりに生きている」世界だった・・・。
なんとも読んでいて暗い気持ちになる小説でした。主人公・リョウの負のオーラが
強すぎて、なんだか自分まで気が滅入ってくるような気持ちになりました。結局、
米澤さんは何が書きたかったのだろう。リョウに突きつけられたある事実。物事は
結局どうにもならない、諦めるしかないということ?まだ十代の少年に?そして
最後に迫る選択。なんて残酷なんだろう。これはあまりにも救いがなさすぎると
思いました。十代の少年少女が主要キャラクターなのに、青春ミステリとはとても
言いたくない。人間の悪意がそこかしこに見え隠れしていて、読めば読む程陰鬱な
気分になってしまった。ノゾミの死の真相もそうだし、リョウの兄への気持ち、
両親への気持ち、サキへの気持ち・・・どれを取っても痛すぎる。リョウの諦観と
空虚さはとても伝わって来たけれど。結局リョウという人間は‘虚無’でしかない
のでしょう。どんな現実に直面しても、結局諦めて受け入れるしかないとわかって
いる。彼の心の穴は深すぎて、なんだか可哀想とかそいういう気持ちにもなれ
なかった。
う~ん、読んで損したとは思わないけど、読んで良かった小説とも言い難い。
第一、読後感、という意味では最悪に近い。こんなに後味の悪い小説読んだのは
久しぶり。なんだか、ミステリとしても説明不足な部分が多くて、たくさんの
違和感を抱えたまま物語が閉じてしまった。特に兄の人物描写。最後まで読めば
すっきりするのかと思ったら、全然すっきりしないまま。もっと身体的な叙述
トリックとかあると思って読んでたのに。なんだよー。
でも一番すっきりしなかったのは川守という少年が出てくるくだり。これってこの
作品に必要な部分?完全にここだけ浮いている。何かの伏線かと思ったら全く
その後には出てこない。奇妙でいびつな雰囲気だけを残してそのまま。一体何
だったんだ?意味不明。消化不良もいいところです。米澤さんの意図したものが
全く読み解けなかったのは私の読解力不足のせいかもしれないけど、それにしても、
もうちょっと本筋に生かそうよ・・・。こういう、伏線にならないエピソードを
無駄に入れられると作品としての質が落ちる気がするんですが。それとも、この
川守少年は今後の米澤作品のどこかに再登場する時の伏線なんでしょうか。
そうだったら溜飲が下がるんだけどなぁ。
どうも私は米澤作品の読者としては失格な気がするなぁ。ラスト一行の救いの
なさには・・・ここまで突き落とすか!(驚愕)この作品にはこの上もなく
相応しいラストとも言えますが。ここまで書いたことを褒めるべきなのか。
気が滅入っている時には読まない方がいいかもしれません。