ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

赤川次郎/「マリオネットの罠」/文春文庫刊

赤川次郎さんの「マリオネットの罠」。

上田修一はK大学仏文科の研究生。25歳の時フランスのソルボンヌ大学に留学し、
三ヶ月前に帰国したばかりだ。帰国してすぐ修一は大学の朝倉教授のもとへ帰国の挨拶
に行くと、教授から挨拶もそこそこに家庭教師のバイトの話を切り出された。三ヶ月間
住み込みである館に住む姉妹にフランス語の会話を初歩から教えるというものだった。
三ヶ月間で100万という破格の報酬。後輩の美奈子との結婚が控えている修一は
承諾し、姉妹の待つ館へと向かう。しかし、どうやらこの館には何か秘密があるらしい
――そして、世間ではナイフによる連続殺人事件が起こっていた。大ベストセラー赤川
次郎の傑作処女長編。


以前「ポケットにミステリを」の冴さんの記事でずっと気になっていた本書。図書館に
行く度探していたのですが、先日ようやく巡り会えました。赤川次郎氏の処女長編として
話題になったという作品。なんと、赤川氏の作品を読むのは中学生以来でした。中学の時は
あんなに読んでいたのに、だんだん他の作家に目移りして、読まなくなっていってしまった
のですよねぇ・・・。

しばらくぶりに読んでみて、ああ、やっぱり面白いなぁと思いました。確かに人物造詣
とか名前とか、時代を感じさせる部分は多々あるのですが、ミステリとしての面白さ
は全く色あせていない。ミステリを読み始めるようになって、赤川作品から離れてしまった
のは、やはり氏の作品は中高生向けというようなイメージがあったせいもあるのですが、いやいや
やっぱり赤川氏の作品は本格ミステリですね。処女長編でこれだけのサスペンス溢れる傑作
を書けるとは素晴らしい。最後の最後で明かされるどんでん返しがまた良いですねぇ。後味
は良くないけど、やはりこれぞミステリの王道!と言われるような作品だと思います。雅子
が人を殺して行く様がとても怖い。何が怖いって、実に淡々とあっけなく殺しちゃうからです。
殺される方は殺人鬼に怯える暇なんかなく、何が起こったかもわからないから、まぁ苦しまない
という点では楽な死に方なんですが・・・それにしても、無表情にあっという間に犯行を行う
様が悪魔めいていてぞくぞくしました。

それにしても三ヶ月の仏語レッスンで100万は、どう考えても怪しい。これは絶対何か裏が
あると思うのが普通だと思うんですが。でも私が言われても、その値段につられてやっぱり
やっちゃうのかも・・・いや、自分の語学力が人に教えられる程あれば、の話ですけど^^;
ま、そこ突っ込んじゃダメなんだろうなーと思いながら読んでいたらば・・・ちゃんと最後で
理由が明かされます。すっきりすっきり^^
とにかく最後の最後のどんでん返しで全てがひっくり返ります。これぞカタルシス
ラスト一行の明るい台詞が何とも皮肉に響き、余韻を残す作品です。うまいなぁ。
題名にもちゃんと意味があります。誰がマリオネットなのか、何故マリオネットなのか。
その点に注意して読んで下さい。

赤川次郎氏を軽いミステリと侮るなかれ(お前だ^^;)。傑作本格ミステリです。
この作品を紹介して下さった冴さんにお礼を申し上げます。