ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

古川日出男/「gift」/集英社刊

古川日出男さんの「gift」。

妖精の足跡を捕まえようとする男、餓死しようとプチ家出する太った女、天才的頭脳を
持った幼児、世界に対抗しようとする少女・・・神の手からこぼれた奇跡の物語19編。「小説
すばる」で掲載されたシリーズ「かわいい壊れた神」に書き下ろしを加え単行本化。


ホルスタインさんのところで見かけて気になっていた本書。古川作品の中でも短編集なので
軽く読めそうだし、何より絶賛記事に惹かれて手に取ってみました。

うん。これ、好き!収録作はどれも10ページもない位の短編ばかりですが、どの話も
不思議な魅力に満ちていて、古川文章の‘力’みたいなものを感じました。本当にこの人の
文章は独特。歯切れが良くて、テンポがあって、リズミカル。たまに出て来る擬音語も
個性的。それぞれの話もファンタジックだったり、ほろりとさせたり、くすっと笑わせて
くれたり、ぞくっとさせたりとかなりバラエティに富んでますが、物語を楽しむという
よりも文章を楽しむという感覚の方が近かった。

なんといっても、出だしの「ラブ1からラブ3」がすごくいい。妖精の足跡を捕まえようと
四苦八苦する「ぼく」と、その正体ににやり。そして、ラストの奇跡の余韻が最高。これで
完全にこの作品の世界が好きになってしまいました。あと好きなのは「夏が、空に、泳いで」、
「鳥男の恐怖」、「光の速度で祈っている」、「生春巻き占い」かな。でも他のもどれも
いいです。きっとこの作品集は読む人によって好きな作品が全く違うと思う。それ位バラエティに
富んでいて、どの話もとても短くてさらっと読めるのに深くて、味わいがある。古川さんって
いろんな引き出しがある人なんだろうなぁと思いました。どの話にも物語に対する‘愛’が
感じられるのがいい。
不可思議な話が多いけど、きっとこれは神様の手から地上に落とされた贈り物(=gift)
という意味でつけられたタイトルなんでしょうね。もっともっと読み続けたい気持ちを抱きつつ、
とても素敵な贈り物をもらった気分で読み終えました。

やー、「ベルカ~」でも、この方の文章好みと思ったんですが、本書を読んでますます
その思いは強くなりました。他のも読んでみよう^^

紹介して下さったホルスタインさん、ありがとうございました。
素敵な作品集でした。読めてよかったです!