ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三津田信三/「首無の如き祟るもの」/原書房刊

三津田信三さんの「首無の如き祟るもの」。

奥多摩に代々続く旧家・秘守家。秘守を名乗る家は、本家に当たる筋の一守家、続いて二守家、
三守家の三軒がある。しかし、この秘守家には、淡首様という恐るべき存在が何百年もの年月、
祟りを齎し続けていた。特に、秘守の跡取りとなる一守家の男子に対する祟りは根が強く、
強力であった。秘守家に齎される災禍を祓う為、人々は様々な呪いを施した。大東亜戦争
只中、天涯孤独になった斧高が秘守家にやって来て一年目に、一守家の双子の兄妹・長寿郎
と妃女子の十三夜参りと呼ばれる儀式が行われ、その儀式の最中、妹である妃女子が井戸
に落ちて亡くなった。それから十年の月日が経ち、二十三歳になった長寿郎が花嫁を決める
「婚舎の集い」で、候補者の一人が首無死体で発見された。これは長年続く淡首様の祟り
なのか、それとも――刀城言耶シリーズ第三弾。


はい。大幅に遅れを取りましたが、やっとこさ読了です。
ええ、もちろん図書館で借りましたけれども、何か?


iizukaさんの「今年度本格ミステリベスト1」宣言。
冴さんの☆☆
たいりょうさんの☆5.0
ゆきあやさんのねこ5匹
よもさんの★★★★★★

果ては、ミステリ系ブログでないbeckさん、ぞうの耳さんのお墨付き。



これ以上、私に何を書けと?


・・・本を買わなかったことで、ここまで肩身の狭い思いをした本は初めてです(苦笑)。
まぁでも、私の中で新刊で単行本を買うと決めている作品って、笠井さんの駆シリーズか、
有栖川さんの江神シリーズ位しかないので。あい、すいません(京極さんの巷説シリーズ
でさえ借りていますから)。

前置きはどうでもよく。さて本書。いやあの、私が今更どうこう言う作品ではないと
いうか。ええもう、ミステリの中でも何より本格ミステリを愛する私にとって、これ以上
ないって位、本格要素てんこ盛り。これが楽しめないはずない訳で。素晴らしいです。
って、これ位しか言葉がない。面白かったなぁ(語彙力貧困ですいません)。
何より、文章が。あの「厭魅~」の読み辛さ、「凶鳥~」の薀蓄の冗長さが全て払拭され、
非常に読みやすくなっているじゃないですか!!なんだ、どうしたんだ、三津田さん。
って、これは絶対、出て来ては余計な薀蓄を喋り散らす刀城が最後の最後にしか登場しない
せいじゃないか?え、違う?
関係者の記述形式、というのは「厭魅~」と似てるんですけどね。こんなに読みやすく
なるとは。書いた人違うんじゃないの?って位(言いすぎ)。


幾重にも重なる謎が素晴らしく合理的に解き明かされるあの爽快感。読んでる最中、実は
シリーズの中で最も怖かった。今までで一番ホラー要素が強い気がしたんですが、謎解き
読んでちゃんと合理的解釈が出来るのに感心。幽霊の正体見たり、枯れ尾花ってやつ?
作中、いくつか感じた違和感と不自然さが全て謎解きに生かされていて、完成度の高さを
感じました。どんでん返しに次ぐどんでん返しが最高。ああ、これぞ本格ミステリ



ただ、一つ釈然としなかったのは、斧高が長寿郎が死んだとわかった時にあまり悲しんで
いる素振りがみられなかったこと。あれ程慕っていた割に、取り乱したりすることもないし、
泣くこともないというのがなんとなく腑に落ちなかったです。そういう描写を敢えて省いた
のか、そこのところはわからないけど。冒頭で斧高のある性癖がどうのと思わせぶりな書き方
をしている位、長寿郎への思慕は強かった筈だと思うのですが。そういう性格だと言われたら
それまでだけど。

首切り連続殺人事件の部分もなんだか消化不良でした。あの挿話は必要だったんだろうか。
次回以降の作品への伏線って訳でもないだろうし。犯人には驚きましたが。一体何が・・・。


それにしても、文章は大幅に読みやすくなったとは言え、名前の読み辛さは相変わらず。
媛首村→ひめかみむら、媛首山→ひめくびやま なんでだ!?
一守→いちがみ、二守→ふたがみ、三守→みかみ ややこしいっ。
淡媛→あおひめ、お淡→おえん 読めないってば。

今回、要所要所でルビをふってくれたのが幸いしましたけどね・・・。かなり適当に
読んでました(コラ!)。

というか、私、今更で本当に申し訳ないのですが、ずっとこの作者のことを
みづたさんだと思い込んでいました。みつださんだったんですねぇ・・・
あ、あほだ・・・。ごめんなさい、みつださん(覚えた)。



一応時系列で言うとこの作品が三つの中では一番初めの事件になるようですね。
刀城氏が書き記したのがいつかはわからないですが。


まぁとにかく。小躍りするくらいに面白かったです(笑)。
本格ミステリがお好きな方なら必読。
年末のランキングが楽しみ。ランクインは間違いないでしょう(断言)。