ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

勇嶺薫/「赤い夢の迷宮」/講談社ノベルス刊

勇嶺薫さんの「赤い夢の迷宮」。

小学生の頃、仲良しの7人組のぼくらは、よく地元の名家・大柳家の風変わりな大人である
OGの元へ遊びに行っていた。当時殺人鬼が世間を騒がせていたせいもあって、大人たちからは
変人と見做されていたOGの所に行くのは禁止されていた。ある日、ぼくらは自分たちの宝物
を隠しに、OGの別荘であるお化け屋敷にこっそり侵入し、怖ろしい体験をする。そして、
二十五年の月日が流れ、ぼくたちの元にOGから「同窓会」の知らせが届いた。再び再会した
ぼくらを待っていたのは、悪夢のような惨劇だった――ジュヴナイル作家・はやみねかおる
贈る初の大人向けミステリ。


直球ですね~。はやみねさんの「本格ミステリを書きたい!」という意気込みがひしひしと
伝わって来る作品でした。電話線が切られ、携帯電話も通じない場所に閉じ込められた幼馴染たち。
その中で一人、また一人と犠牲者が出て、残された人間たちは疑心暗鬼にかられて行き・・・
という、もう、ほんとにミステリの王道を行く展開。こういうのは大好きなので、なかなか
面白く読みました。ただ、それぞれの登場人物の書き込みがやや足りないせいで、どうも
薄っぺらい作品という印象も。この辺りも新本格作家の流れを汲んでいる(=人物が
描けていない)ということなのか。連続殺人の犯人と黒幕もあっさり明かされてしまう
ので、ちょっと肩透かし。ただ、エンディング部分のカタストロフがこの作品のキモなんで
しょうね・・・


が、


実は私、読み終えた時点でこのラストが全くよくわからなかった^^;え?え?どういう事?
って、何度も読み返しました。で、よくわかんないまま、釈然とせず読了。何か消化不良。
なんだ、意味がわかんないぞー(焦)。


で、記事を書くに当たってネット検索してたら、ラストの解説をしている記事が。


「あー、そういうことか!!」(気付いた)



以下、ややネタばれ気味です。未読の方はご注意ください。





・・・アホですね^^;一体何年ミステリ読んでるんだー。
くぅ~、自分で気付きたかった^^;教師の名前が出てこないことは絶対何かあるぞ
と思っていたのに~。


なる程なる程。
このラストがあるからこそ、本書につけられた題名も意味を成してくる訳ですね。
すべてがある人物の赤い夢の中の出来事であり、迷宮に迷い込んでしまったかのごとく、
自分がどこにいるのか、何者なのかわからなくなって閉じるという。
でも、もうちょっとわかりやすく書いて欲しかったなぁ。なんだかよくわかんないまま
終わっちゃった、という人絶対いると思うけど(え、私だけ?^^;)。

それにしても、出て来る登場人物の誰一人として好感を持てる人物がいない。きっとこれも
普段のはやみねかおるとは違うという意気込みの表れなんでしょうけど。殺人の動機も全く
理解不能。こういう動機の殺人ものは好きじゃないんだな~^^;○○の心理行動なんて
理解できる訳がなく、嫌悪感ばかりが残ってしまうので。




オチが理解できなかったせいで、なんとなくぼやけた印象の作品になってしまった。
もうちょっとすっきり騙して欲しかったな・・・私の頭が悪いせいなんだけど^^;
まぁ、敢えて曖昧な印象で閉じるような書き方をしてるんでしょうけどね。

でも、こういう本格テイストの作品はじゃんじゃん書いて行って欲しいです。目新しさは
そんなにないけど、ミステリ好きなら楽しめるのではないかな。