ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有川浩/「クジラの彼」/角川書店刊

有川浩さんの「クジラの彼」。

人数合わせで急遽参加させられた合コンで知り合ったハルと意気投合し、付き合うことになった
聡子。しかし、彼は潜水艦乗りで会える時間はわずかだけ。一度海に潜ってしまうと、次にいつ
帰って来るのかわからない。前に会ったのはいつだっけ?彼はまだ自分を好きでいてくれてるの?
遠距離恋愛に揺れる聡子とハルの結末は――(「クジラの彼」)。表題作他、自衛官たちの恋愛模様
を描いた6作を収録。


これは、すごいです。死ぬ程ベタ甘な王道の恋愛漫画の短編集をそのまま小説化したような作品。
まぁ、読んでいて恥ずかしくなることこの上なかったです。私は少女マンガが大好きなので、
はっきり云えばこういうのは嫌いじゃない。いやむしろ大好きなんですが、それにしても
小説で書かれると何故こんなに恥ずかしく感じるのだろう・・・。なんだか一作ごとに引いて
行く自分がいました^^;面白かったんですが、6編も読むと正直最後は食傷気味。だって、
どの登場人物もベタ甘すぎなんだもの。自衛隊員だってベタ甘な恋愛をするんだ!というのが
テーマだっていうのはわかるんですが、みんな思考が似たりよったりすぎて、また「このキャラ
かよ~」みたいな印象になってしまいました。特に女の子の性格なんてみんなほとんど同じ。
顔は可愛いけど気が強くて涙もろい。実は『図書館戦争』の郁でも思ったことなんですが、
「なんでこの場面で泣くの?」っていうシーンが多い。んで、男性はその涙を見ておろおろ
しつつもやられてしまう、というパターン。男性から見たら非常にこういうのが可愛いの
かもしれないけど、私はこういうタイプが苦手。自分が素直に感情を出せるタイプじゃない
からそうなんだろうけど。ひねくれ人間には出来ない芸当なんです・・・。一番苦手だったのは
「有能な彼女」の望かなぁ。すんごい計算高い子だと思う。自分がどう振舞えば相手が可愛い
と感じるかわかって行動してるような。実生活では絶対友達になれないタイプだ・・・。
この人の書くヒロインはどうも好きになれないなぁ。

ヒロインはともかく、話として好きだったのは「クジラの彼」「ロールアウト」「国防レンアイ」かな。
潜水艦を「沈む」と表現するか、「潜る」と表現するかで、実際乗ってる人からすると
こんなに印象の違う言葉になるんですね。私もつい「沈む」って言っちゃうかもしれない^^;
一つ勉強になりました。しかし、潜水艦に潜ってた後に染み付いた臭いは絶対嗅ぎたくないですが。

「ロールアウト」は軍用機のトイレという盲点をついた設定がなかなか面白かった。高科の硬派な
キャラが好きです。これは実際取材しないとわからない問題でしょうね。

「国防レンアイ」は人のいい伸下のキャラにつきますね。いじましい彼が最後に報われて
良かった良かった。三池ももっと早く気付いてあげろよ~と思っちゃいましたが^^;


文章は相変わらずのラノベ調。もうこれは慣れるしかないのだろうな・・・。文句言いつつ
ついつい読んでしまう有川作品。また図書館で見かけたら借りてしまうのだろうな^^;
陸海空、それぞれの自衛隊内部について意外なことも多く、なかなか興味深く読みました。
読んでるこっちが恥ずかしくなるほど激甘なラブストーリーでお腹いっぱいです。
『最強の恋愛小説』の謳い文句、ある意味ぴったりかもしれない(苦笑)。