ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

碧野圭/「ブックストア・ウォーズ」/新潮社刊

碧野圭さんの「ブックストア・ウォーズ」。

駅前雑居ビルの三階分を占拠する老舗書店「ペガサス書房」。40歳で独身の副店長・西岡里子
と、新婚ほやほやの27歳・コミックス売り場担当の社員・小幡(旧姓北村)亜紀は、仕事を
巡って度々衝突していた。お互いに嫌い合っていた仲だったが、書店があと半年で閉鎖される
と知らされ、共同戦線を張ることに――働く女性たちに送る、ワーキングガール小説。


雑誌の新潮45に広告が載った時から「読みたい!」と思っていた作品。なんせ、書店が
舞台で、働く女性たちが奮闘するお仕事小説といったら、読まずにはいられないではないですか。
本屋さんが舞台の小説では大崎梢さんの「配達あかずきん」の成風堂シリーズが思い出され
ますが、あちらよりも女性同士の生々しい諍いが書かれている分、リアルかもしれません。
ただ、その女性心理がリアルな分、かなりえげつない。前半部分の里子と亜紀の対立部分は
あまり読んでいて気持ちの良いものではなかったです。特に、亜紀が結婚式のご祝儀を
つき返したり、里子が亜紀の結婚祝いに贈られたワイングラスを勝手に割ったりするのは
さすがにやりすぎだろうと思いました。女同士の嫉妬とか妬みって陰湿だなぁ・・・。
私はこういう職場にはいたことがないので想像でしかないけど、この手のワーキングガール
小説を読むとどこの会社にも大なり小なりあるんだろうなぁと思わされますね。怖い、怖い。

ただ、書店の存続をかけて二人が結託して書店を盛り立てて行く後半の展開はとても良かった。
それぞれがアイデアを出して少しづつ自分の職場を変えて行き、それがちょっとづつ数字に
現れて行く課程が読んでいて小気味良かった。ほんの少し何かを変えるだけで売れるものが
違って来る。書店も客商売なんだなぁと思いました。

前半の『ウォー』は女性同士の陰湿さが現れていてあまり読んでいて良い気分では
なかったけれど、後半の『ウォー』は書店の存続と、女性を蔑視する会社の管理職たちを
見返してやろうとする書店員たちの奮闘を描いていて、読後は爽快な気持ちになりました。
亜紀と里子のキャラも後半はすごくかっこよく見え、好感が持てました(前半ではどちらにも
嫌悪しか感じなかったのですが^^;)。働く中で、いくつもの『ウォーズ』に向き合う
女性たちの姿が生き生きとリアルに描かれていて面白かったです。
ラストはやや上手く行き過ぎだとは思いますが、みんなが頑張った分これくらい明るい未来を
用意してくれないと報われない気がするので、落とし所としては良かったのではないかな。
ペガサス書房の面々がどうなるのか、是非続編を書いて欲しいなぁ。

何より、舞台が大好きな『本屋さん』なのが嬉しい。成風堂シリーズでも思ったけれど、
やはり実際書店に働く方々はいろいろ大変なんだなぁと思いました。買う方は呑気に
立ち読みしたり待ち合わせに使ったりしちゃうけど、売り上げ上げようとどこの本屋さんも
奮闘しているのでしょうね。図書館派の私は非常に肩身が狭いですが・・・^^;;

奥田さんの「ガール」、柴田さんの「ワーキングガール・ウォーズ」なんかに次ぐ働く女性
にエールを贈るお仕事小説。楽しく読めました^^