ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

中田永一「ダンデライオン」/碧野圭「書店ガール7」

こんばんはー。11月ももう終わりですね。今年も残り一ヶ月かぁ。
各種ランキングも気になるところですね。自分のランキングもぼちぼち考えて
行かなくては。今年は去年より冊数行ってる気がするんだけど(予約本ラッシュが
多かったから・・・)、どうだろう。まぁ、微々たる違いだとは思うけど^^;
そういえば、前回紹介した我が家のお庭に居着いたカマキリのかまじろーは、今日現在も
お庭にいてくれていました。昨日は一日中壁にへばりついてましたが、さっき
昼間に見たら、いつもの小菊の中にまぎれていました(笑)。よっぽど我が家の居心地が
良いのかな。冬を越せるくらいいてくれると良いのだけれど・・・。


今回も二冊ご紹介ー。



中田永一ダンデライオン」(小学館
中田さんの最新作。氏の長編は、なんとくちびるに歌を以来の7年ぶり
だそう。なんか、そんなに久しぶりって感じがしないんだけど・・・その間に
短編集が出ているからかな。アンソロジーとかでもちょこちょこ読んでいたような。
今回の作品は、タイムリープがテーマ。小学生の下野蓮司は、ある日野球の白球
を頭に受け、気がついたら病院のベッドの上で、しかも大人の身体になっていた。
戸惑う蓮司の前に、一人の女性が現れた。彼女は、もうすぐ蓮司と結婚する予定
なのだと言う。彼女が言うには、蓮司が頭に衝撃を受けたことで、11歳の蓮司
の意識と32歳の大人の蓮司の意識が入れ替わってしまったということらしい。
ただ、このタイムリープは7時間後には解消するという。タイムリープを体験
していた32歳の蓮司は、この時間を利用してあることをしようと決意していた
――。
なんか、中田さんの作品っていうより、ソブケン(蘇部健一)の赤い糸系の
作品を読んでいる感じがしました。
ただ、細かい伏線が絶妙に張り巡らされていて、しっかり最後に効いてくる
ところはさすがの出来。いろいろ気になっていた点があったのですが、最後
まで読んでほぼすべて溜飲が下がりました。
まぁ、SF、しかも時間軸系のこの手の作品って基本的には苦手なんで、途中
ちょっと混乱したところはありましたけど。
タイムリープが終わって、蓮司と小春が観測していない時間が始まってからの
展開がどうなるのか、最後までハラハラしました。蓮司が野球をやめるきっかけ
になった事故の犯人にはびっくりしましたね~。小春に教えられた日時が
なぜ一年間ずれていたのか疑問に思っていたのですが、最後にその理由も
わかってすっきりしました。なるほど!って感じ。
主人公の名字の読み方をいつも忘れてしまって(かなり特殊な読み方なんです)、
その度に毎回最初に出て来たルビを確認していました。なんで、こんな面倒な名前
つけるかなぁとイラッとしてたりもしたんだけど、終盤のある場面を読んで、
そこにもちゃんと意味を持たせていることがわかり、腑に落ちました。
細かい部分までよく考えてあるなぁ。
最後の最後、いろんなからくりがわかった後での小春の行動にショックを
受けたのですが、それを受けて蓮司が出した答えが嬉しかったです。強い
絆で繋がっている二人なら、観測していないこれからの未来もきっと二人で
乗り越えて行ける筈だと思いました。
薄いですが、中田さんらしく、とても凝った構成になっている作品だと思います。
もともとは、映画の脚本で作ったお話だったそう。いつか、映像化される
かな?
記事を書くにあたってネット検索していたら、著者のインタビューが載って
いるHPを見つけました。そこに著者の写真もバッチリ出ていてびっくり。もう、
全然別名義って隠してないじゃん(笑)。
そういえば、タイトルのダンデライオンは当然たんぽぽのことですが、
名前の由来がライオンの歯から来ているとは知らなかったです(葉っぱが
ライオンの歯みたいだからだそう)。
個人的には、『ダンデライオン』っていうと、ユーミンの同名曲を思い出して
しまうので、読んでる間ずっと頭の中であの曲がリフレインしてました(笑)。


碧野圭「書店ガール7」(PHP文芸文庫)
書店ガールシリーズついに完結、だそうです。寂しいなー。単行本の
『ブックストア・ウォーズ』の時からほぼリアルタイムで読んで来ている
ので、ちょっと感慨深いものが。最終巻の今回は、今まで主人公を務めて来た
四人の女性が交代で主役を務めます。第一章は愛奈、第二章は彩加、第三章
が理子で、ラストの第四章が亜紀。理子のお話が一番量が多いのは、やっぱり
思い入れも一番あるせいなのかな。それぞれの分量にはかなりばらつきが
ありましたけど。亜紀については、多分もう書き尽くした感じがあるから
少ないのかもしれないですけど。みんな、それぞれに最初に出て来た時とは
違う道に進んでいますね。愛奈は学校の司書教諭になっているし、彩加は
地元に帰ってトルコパン屋の大田と組んでブックカフェをやろうとしている
ところだし、理子は大型チェーン店の新興堂書店の東日本エリアの統括
マネージャーになっている。亜紀は産休が明けて、吉祥寺店の店長として、
復職。それぞれに、ステップアップしていて、すごいなぁって感じです。
心に一番刺さったのは、やっぱり理子のお話かな。99年続く老舗の
仙台店の閉店騒動に巻き込まれ、仙台店の店員たちと対立しなければ
いけない立場になってしまう理子の、苦しい胸の裡は、読んでいてこちらも
苦い気持ちになりました。理子の立場もわかるし、大型店立ち上げに
伴って閉店させられる老舗店舗の店員たちの気持ちもわかるだけに、
両者の対立がやるせなかった。ただ、出来る店員なのかもしれないけど、
理子に真っ向から歯向かう女性店員の岡村の言動は、何か好きに
なれなかった。本が好きでやる気に満ち溢れているところは良いとは
思うのだけれど。まぁ、彼女の立場になったら、私だって同じ態度に
なるのかもしれませんが。私はどうしても理子に共感して読んでしまう
ところがあるので(初回のヒロインでしたし)。
それにしても、理子と沢村店長のラストは切なかった・・・。最後、
沢村の精一杯の理子への言葉に、応えられなかった理子の心情に関しては、
わかるような気もするし、勿体ない気もしました。すべてを捨てて、
沢村と一緒に行ってもいいのに、と。でも、それをしないところが、
理子らしいのかな、とも思いましたけれどね。
出版業界や書店の内情がとてもよくわかるこのシリーズが大好き
だったので、終わってしまうのはとてもさみしい。また、この業界の
お話を書いて頂けたら嬉しいなぁ。