ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三雲岳斗/「少女ノイズ」/光文社刊

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三雲岳斗さんの「少女ノイズ」。

大学生の高須賀克志は、エキセントリックな大学の准教授・皆瀬梨夏から突如塾講師

のアルバイトを紹介される。しかし、行ってみると、塾講師とは名ばかりで、

ある一人の女生徒の監視役だった。
美しいが死体のように無気力で恐ろしく頭の切れる斎宮瞑と出会ったことで、

高須賀は己の幼い頃の途切れた記憶と向き合うことに――(「Crumbling Sky」)。

孤高の美少女が天才的ひらめきで事件の謎を解き明かす傑作短編集。


たった二冊しか作品を読んでいないにも関わらず、すでに大ファンになった気でいる

三雲さん。
新刊が発売されると聞いて是非とも読みたいと思ってましたが、本屋で実物を見て

更に読みたい熱が高まっていたところ、めでたく図書館で発見。畠中さんとか

辻村さんとか、先に読むべき作品もそっちのけで読み始めてしまいました。

や~、面白かった~。っていうか、全てがツボにきました。まず石川絢士さんの

表紙で瞑に惚れました。大きなヘッドフォンをした気の強そうなセーラー服の美少女。ラノベ好きを狙ってる感じがなきにしもあらずですが、その通り、まさしく瞑は

ツンデレ少女。いや、デレっていうのはちょっと違うかもしれないけど、学校や

両親の前では完璧な優等生を演じながら、スカ(高須賀)の前でだけは真実の姿を

見せる。そして、普段は死体のように無気力で生気のない彼女が、事件に関わる時

だけ獣のような瞳の輝きを取り戻し、犯罪を憎む正義漢に変貌する。この不思議な

二面性がとても魅力的。すっかり瞑のファンになってしまった。
スカが他の女の子と話した後、ちょっと不機嫌になるとこも可愛い。表紙で一目惚れし、中身を知ってますます好きになった・・・って、普通に男の感覚だよこれ(笑)。

でも、肝心のミステリ部分も非常に楽しめました。読んだ前二作でも、三雲さんの

本格意識は感じていましたが、本書でも基本はしっかりした本格ミステリ

二作目の「四番目の色が散る前に」なんかはクリスティの名作に則った変化版

(元ネタは未読なんですが^^;)。
ややこじつけっぽくも感じられたものの、面白く読みました。私が一番感心したのは「あなたを見ている」。全く関係のない二つの事件が綺麗に繋がって瞠目。ただ、

恵里の父親に関しては、いくらなんでもあまりにも現実味がないように思いましたが・・・^^;
ラストを飾る「静かな密室」は、三雲さんらしい理系でアクロバティックな真相。

これを実現させるのは相当大胆で勇気のある人物だよなぁと思いました。この作品に

関しては、ミステリ部分よりも、前作でスカの前からいなくなってしまった瞑との

再会のシーンを楽しみました。
彼の窮地を知って目の前に現れ、「なぜ生きてるの」なんて心とは反対の憎まれ口を

たたく瞑がまた可愛いのだ(完全オヤジ目線)。

全部の事件で、大して伏線が出て来ない段階で瞑があっという間に真相に到達して

しまう所は気になったのですが、天才型の彼女のキャラにはそっちの方が似つかわ

しい気もする。

是非とも、是非とも三雲様!!シリーズ化をお願いします!また瞑とスカのコンビに

会いたいです。
瞑のキャラが好きになるかそうでないかで評価は分かれるかもしれませんが、私は

とにかく好みの作品でした。三雲さん、これで完全に大好きな作家の仲間入りです。

早く「聖遺の天使」を読まなければ~(古本屋で購入済み)。



蛇足ですが、「スカ」って云うと、私の中では那須雪絵さんの「ここはグリーンウッド」の主人公・すかちゃんを思い出すんだよな~^^;スカベンジャー(腐肉食動物)なんて言葉、初めて知りましたよ。アストロフォビア(天空恐怖症)も。瞑の

語彙力に脱帽でした。


蛇足2。私が一目惚れした表紙の画像を貼っておくので、気になった方は是非

ご一読を~!(ラノベ好きならば間違いない筈・・・たぶん)