ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「妖怪変化 京極堂トリビュート」/講談社刊

「妖怪変化 京極堂トリビュート」。

あさのあつこ西尾維新牧野修ら豪華執筆陣が京極夏彦の世界に挑む。小説家、漫画家、
映画監督、落語家など、各世界で活躍する人々による京極堂トリビュート。


やっと回って来ました。楽しみにしていた京極作品トリビュート。正直、私が「大好き!」
と思う執筆家は一人も入ってないのですが(汗)、あの京極作品をそれぞれの方がどう料理
するのかワクワクしながら読みました。
総評としては、「まぁ、こんなものかな・・・」という感じでしょうか。それぞれ自分なりに
京極作品に近づけようと努力している影は伺えるものの、やはり本家の敷居は高かったという
結果に終わっている作品が多いように思いました。まぁ、こういう企画ものは、お祭騒ぎ的な
楽しさが味わえればそれでいいのかな、という気がしますね。所詮モノマネになってしまう
のは仕方のない所で、モノマネは本歌を超えることを目指すのではなく、あくまで「本歌の
良さにどう自分の色をつけるか」が重要なのですから。何にせよ、京極さん以外が京極堂
世界を描くとこんな風になるのか~と感嘆しながら読んでました。


では、各短評を。


あさのあつこ「鬼娘」
あさのさんは普段ミステリを書かれるイメージがないので、寄稿者に名前が挙がっていた時
かなり意外な気がしました。初めて読みましたが、やはり少し京極さんの世界には無理が
あるような印象。ミステリのオチもほとんど見えてしまいました。


西尾維新「そっくり」
これはなかなか面白かった。こんなの現実には無理だろう!と思うのだけど、京極さんの
世界であればあり得そうに思える。こういう世界観を考えつけるところにセンスを感じました。
だからって、戯言シリーズをまた読みたいとは思わないんですけど・・・。


原田眞人「「魍魎の匣」変化抄。」
これは読んでるのが辛かった。一体何が書きたかったのかさっぱりわからなかった。映画を
観たから「こんなシーンなかった」「これはあのシーンだな」というのはわかったのですが、
それで、何?と思いました。こんな作品にページ数取り過ぎだと思うぞ。だいたい、これ読んで
映画を観たくなる人いるかなぁ?


牧野修「朦朧記録」
これは一番良かった。文章も世界観も雰囲気が良く出ている。また字体がかっこいい。ラストの
どんでん返しも巧い。ただ、主要登場人物をここまでしちゃっていいのかな~というのは
ありましたが^^;せ、関く~~~ん・・・(T_T)。


柳屋喬太郎「粗忽の死神」
柳屋さんは本物の落語家さんだそうです。これも落語の噺風。所々のダジャレが気になりました
が(笑)、なかなか面白かった。実際落語で演じてるのを観てみたいものです。


フジワラホウコウ「或ル挿絵画家ノ所有スル魍魎ノ匣」
イラストのみの為感想割愛^^;ハコだけじゃなくて、人物画も書いて欲しかったな^^;


松苗あけみ「薔薇十字猫探偵社」
松苗さん、懐かしい~~。昔『ぶ~け』で良く読んでたなぁ・・・あ、脇道に逸れた^^;
榎さんはかなりイメージ合っているかも。女の子に振り回される榎さんが微笑ましかった。


諸星大二郎百鬼夜行イン」
絵がコワイ^^;出て来る長髪の考古学者って、マチコ庵なのかなぁ?京極堂の世界というより
水木しげるの世界という感じがしました^^;




まぁ、原作ファンならそこそこ楽しめるのではないかな。原田さんの部分はいかんとも
しがたいけど^^;確かに話には聞いていたけど、関君の活躍が少なかったのが寂しかったな・・・
(一作は活躍してるじゃん!と思いきや・・・だったし^^;)。
でも、やっぱりトリビュートじゃいまいち物足りないのも事実。
そろそろ新作お願いします・・・!!!