ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若竹七海/「バベル島」/光文社文庫刊

若竹七海さんの「バベル島」。

イギリス・ウェールズ北西部、海岸沿いの小さな島を買い取ったジェイムズ・ヘンリー・
アルフォンス伯爵は、その小島に「バベルの島」を建設する夢に取り憑かれていた。塔の
建築中、不審な怪死が相次いで起こるが、真相は謎のままだった。そして、六十年の歳月を
かけて塔が完成した日、恐ろしい惨劇が――(「バベル島」)。単行本未収録作十一編を
収録した文庫オリジナル短編集。


しばらく放置していてすみません。留守の間にブログ界では随分変動がありましたようで
(Cuttyさんのタイトルコンテストは投票が開始され締め切りが迫っているし(ヤバイ)、
ゆきあやマニアクイズでは各ゆきあやマニア様たちがブログタイトルを変えて大騒動になって
いるし)、話題に乗り遅れてちょっとした浦島太郎状態でいる私です。5日も放置していたら
訪問者数もさぞかし激減しているだろうと思っていたのですが(せいぜい20人とか)、
何故かそうでもない。というより、記事を書いていた時より訪問者数が増えているのは一体
どういう理由なのでしょうか(書かない方がいいのか!?)。特にブログタイトルも変えて
いないけれど、やはりこれはゆきあやクイズ2位(へへん!!←びりっけつの2位だけど^^;)
の影響力なのか。それとも、4月に入ってヤフーブログ全体の訪問者数が増えているのか。
まぁ、いいか。とにかく、留守中訪問して下さった方、コメント及びTBしてくださった方、
ありがとうございました。

って、前置きが長すぎだよ^^;さて、出かけていた間持っていった二冊の本のうち、読み
終えたのが本書。発売されて割とすぐに買ったのですが、なかなか読めずにいたのでこの機に
と思い、手に取りました。短編集なので寝る前に一日1~2話づつ読み、帰りの飛行機内で
残り半分を一気に読了。なんともまぁ、若竹さんらしい短編集。背筋がすーっと冷たくなる
ような‘怖さ’を感じる作品ばかりが十一編。彼女らしい皮肉や毒がたんまりと盛り込まれて
います。短いページ数の中でこれだけの怖さを演出できるのはさすがですね。が、しかーし、
実はオチの意味がわからない作品が結構多かった。旅先で疲れている頭で読んだというのは
単なるいい訳で、きちんと読んでいるつもりでも、最後の1ページで「あ、あれれ?」と前の
ページを読み返す、というパターンを何度も繰り返してしまいました。何度か読んでようやく
「ああ、そういうことか」と納得できるものもあれば、やっぱりよくわからないというものも。
ただ、だからといって消化不良かというとそうでもない。なんとなく煙に巻かれた感じが若竹さん
らしいというか。わからないなりに、ぞくりと怖さを感じさせる余韻に浸れるというか。上手く
説明できませんが。この毒はやはりくせになりますね。

そして特筆すべきはこの構成です。収録作は書かれた時期も掲載雑誌もばらばらなのですが、
それを上手く一つにまとめるある工夫がしてあります。これはおそらく単行本収録の際に作者が
意図して加筆したのではないかと推測しますが(そうでなければ、この偶然にこそ最大の‘恐怖’
を感じます)、こういう連作の仕方もあるのだ、と目を瞠りました。さすが連作短編の名手
(もちろん、各短編ごとに話自体は全くリンクしていません)。最初は全然気付いていなかった
のですが、途中で「あれ?」と思って前の作品を確認したらびっくり。いちいち読み終えた部分
を全部確認してしまいました(笑)。とてもささいな、でも気付けると「おお!」と思えるリンク
がありますので、これから読まれる方は是非注意して読んで頂きたいです(多少わかり辛いのも
ありますが^^;)。

一番怖かったのは「ステイ」かな。このラストの一言が実に怖い。台詞を発した人物のあどけ
なさに反して内容の指し示す黒さといったら。本人が意識してない所に余計怖さを感じました。

表紙は「バベル島」をそのまま表したイラストですね。絵本のような可愛らしい絵柄に騙されると
えらい目に遭います。そこが若竹作品の魅力なのですけれどもね。