ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大村友貴美/「死墓島の殺人」/角川書店刊

大村友貴美さんの「死墓島の殺人」。

岩手県釜石市の孤島・偲母島の断崖で変死体が発見された。死体は崖の上から腕を広げた状態で
吊る下げられていた。岩手県警警部補の藤田は現場に直行し、聞き込みからこの島が『死墓島』
と呼ばれていることを知る。この島には不吉な言い伝えがあるらしい。そして、第二、第三の
殺害事件が――横溝正史ミステリ大賞受賞第1作。


権威があるのかないのかいまいちよくわからない横溝賞(失礼?^^;)。受賞した前作は、
いかにも横溝風のガジェットを盛り込んで雰囲気たっぷりだった割に、いろんな部分が薄味で
ぱっとしなかった印象があったのですが、第二作もタイトルから直球の本格らしいと知り、
早速懲りずに(苦笑)借りてみました。
今回は本格ミステリの王道中の王道、孤島が舞台です。冒頭から「らしい」設定が出て
来るのでいやが上にも期待が高まったわけなのですが・・・。

前作はこの手の横溝風ミステリにしては驚く程文章が読みやすく、内容はともかくページは
さくさくと進んで行ったのですが、今回は前作とは真逆で、驚く程先に読み進まなかった^^;
別に内容的にそんなに難しいことも書いてない筈なのに、なぜか全く文章が頭に入って
来なくて困りました。体力的にも精神的にもちょっと疲れていたせいかもしれないのですが・・・。
それに、前作でも感じたことなのですが、登場人物がいまひとつ書き込み不足で、誰が誰だか
わからない。捜査を担当する探偵役の藤田警部補も、若いのか中年なのか、性格も外見も
その時々のシーンで印象が一致せず、全然イメージできなかった。事件の関係者なんか更に
誰が誰やら。この方、どうもキャラ設定に問題アリの部分は前作から修復できていないよう
です。一番問題なのは犯人である人物なのですが・・・ネタバレになるのであまり書けない
のですが、犯行が明らかにされた後と、それまでのその人物の描き方にすごくギャップが
あるように感じて、違和感ばかりを覚えてしまいました。藤田警部補によって明かされる
犯人像にはただただ嫌悪しか感じませんでした。確かにこういう人物ってどこの社会にも
いるんだろうけど・・・。








えーと、えーと、すみません。またしてもネタバレありです^^;
未読の方はご注意を!(って、この本、他に読む人いんのかな~^^;;)
















(ちなみに、上で言及した犯人は椋介ではなく瞳の方です)

それにしても、真相を読んで、それまでの島にまつわるいろんな言い伝えとか歴史が何の
意味もなしていなかったことにがっかり。島の有力者たちの苗字(海洞、宝屋敷、龍門)
が絶対何かの伏線だと期待してたのに。例えば、浦島伝説が関わってるとか。だって、
海に宝に龍ときたら、これはどう考えても御伽噺の世界でしょ!あれ、これって、もしや
QEDの読みすぎか?^^;;
それに、一番初めに出て来る腕のない死体についても、腕がないという状態が何の伏線でも
なかったのも不満。
真相もなんかぱっとしなかったしなぁ。なんだかなぁ・・・。
頑張って読んだ割に、何も残らない作品だったのか悲しい。本格ミステリとしても薄っぺらいし、
せっかくの雰囲気たっぷりの設定がこれじゃ泣くよ^^;
エピローグも長すぎ。事件の余韻を残したかったのかもしれないけど、私としては藤田の
感慨には何の共感も得られなかったし、必要性があったとは思えない。それよりは、事件を
解決してすっぱり終わらせてくれた方がすっきりしてよかったと思う。余韻に浸れるような
真相でもなかったんで。

それぞれの登場人物がちょっとづつ自分に自信がなくて迷ったりしてるから、だんだん
読んでるといらいらしてきた。記者の一方位も何で出てくるのかわかんなかったし。









前作は熊に襲撃されるシーンなんかは妙に迫力があって、変な所で(苦笑)楽しめたのだけれど、
今回はそういうのもなかったので、フォローのしようがない。
せっかく、第二作も横溝風ミステリで勝負してきたのに、私としては残念な結果の作品でした。
それでも、懲りずに次も読んじゃうのかもしれないなぁ・・・。
それにしても、いつものごとくネット検索しても、この本の書評が驚く程出て来なかった。
いつも、大抵どんな作品でもブログ記事が何件もHITするのに。アマゾンでも
一人だけ(その方の評価は★4つでしたが^^;)。
これの前に読んだ乾ルカさんの作品の方がよっぽどHIT数が多かったぞ。
そ、そんなにこの人マイナーなのか?^^;横溝賞の未来が不安だ・・・。