ミステリ読書録

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二階堂黎人/「誘拐犯の不思議」/光文社刊

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二階堂黎人さんの「誘拐犯の不思議」。

大学生の水乃紗杜瑠は、立川音楽大学の文化祭で自称『心霊写真家』の上祐レイという奇妙な
男と出会う。上祐は、霊魂や幽霊を視る能力があり、写真に撮ることが出来るという。その
上祐から、サトルは三枚の写真を渡される。写真は上祐が写した心霊写真で、その写真には
サトルと、彼が現在付き合っている二之宮彩子の運命を変えるものが写っているという。
上祐は、その写真の謎を解いてみろとサトルに挑戦状を突きつけて来た。サトルが受け取った
写真の一枚を見た彩子は、その写真に写っている人物を知っていると言い出した。その人物は、
彩子が一月に巻き込まれた誘拐事件の犯人の一人だというのだ――サトルは、彩子の為に事件
を解決しようと立ち上がった――学生サトルシリーズ、書き下ろし長編。


学生サトルシリーズ最新作。今回は誘拐がテーマ・・・なのだけれど、正直、真相はさほど
驚きがあったとは言えません。というか、今回の真相も間違いなく前作同様容疑者Xの献身
に触発されていると思わざるを得ないようなトリックでした。うーむ、二階堂さんはよっぽどあの
作品に物申したいのでしょうか。そこまで拘ってもミステリ作家としていいことなんてないと
思うんだけどなぁ。ミステリとしての出来いかんの前に、先行作の焼き直しとしか感じられず、
全く驚けなかったし、新鮮味がなかった。犯人もあまりにもあからさまな書き方で誰もが予測
できちゃいそうだし(事実そのまんまだった^^;)、あっさり犯人が明らかにされてしまう為
大した緊迫感もなく・・・と、なんだかダメ出しのオンパレードみたいになっちゃうのが
ちょっと心苦しい(じゃあ、書くなよって話なんですけど・・・^^;)。サトルシリーズ
好きなだけに、いい加減X問題のことは忘れて、二番煎じではない驚きのトリックを書いて
欲しいと思ってしまいます。前作は結構面白く読んだけど、二作続けてこういう作品って
のはさすがに、ねぇ。サトルの謎解きはそれなりに説得力もあるし、個人的に引っかかって
いた部分もきちんと説明されていたので、納得は出来たのですが。でも、全体的に非常~に、
地味。多分謎解きに重要だと思われる経過表の部分は、字が細かすぎて読む気にもなれなかった
・・・^^;猟奇的な犯行の理由には驚きましたが^^;でも、これだけの猟奇的な犯行を
するに至る動機はちょっと薄すぎる気がする。犯人の人物像から考えると、あまり説得力が
感じられないというか・・・。狂気にとらわれていた、と言われたらそれまでなんですけど^^;

読書メーターの感想を見ていたら、かなりの人が『シオンがウザイ』と感じたようです(苦笑)。
私はそれほどとは思わなかったですけど、確かに、何でいるの?って存在だったのは確か(苦笑)。
そもそも、私、シオンが初登場した作品を読んでいない。学生サトルシリーズは、最初の方の
作品結構読み逃してるんですよね~^^;初期の頃の作品の方が出来が良いみたいなのに^^;
社会人サトルの方から入ったから、なんとなくそっちの方が気に入っていて、そちらは全て
読んでいるのだけれど。未読の作品も読まなくては。
ちなみに、シオンのビジュアルは、完全にオトメン(©菅野文)』有明のイメージでした(笑)。

上祐のキャラも意味深に出て来た割には肩透かしな印象は否めません。冒頭で出て来た三枚の
写真の真相もあっけなさすぎるし。まぁ、次作に繋がると思われるラストなので、その伏線の
ひとつとして出したって感じなのかな。次に期待しよう。

ところで、ここ数作著者の作品、誤植が多い気がするのですが、気のせいかなぁ。昔は気づかな
かっただけでしょうか。親指シフトで書いてるそうなので、そのせいって考えるのは穿ち過ぎかな。
そもそも親指シフトのキーボードって使いやすいのかなぁ・・・わざわざ巻末に断るくらいだから、
ユーザーを増やしたいのでしょうけれど、ねぇ。どうなんだろ。