ミステリ読書録

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仁木英之「薄妃の恋 僕僕先生」/新潮社刊

仁木英之さんの「薄妃の恋 僕僕先生」。

5年ぶりに師の僕僕と再会した王弁は、再び旅に出た。湖北の中心都市、江陵府に来た二人。師の
命令で、ひょんなことから荊州最高の料理人を決める選考会に出場することになった王弁。料理の
心得など何一つない王弁だったが、旅籠の厨房を借りて特訓しようと思い立つ。主に話すと、選考会
に出るもう一組のお客と相談して決めて欲しいと言う。早速厨房に向かうと、当の料理人たちが
激しい口論をしていた。師匠と弟子の二人は、選考会に出す料理のことで対立していたのだった――。
キュートな仙人・僕僕とニートな弟子・王弁が織り成す唐代ロードノベル。シリーズ第二弾。


可愛らしい仙人とニートなおぼっちゃん弟子の旅と恋愛模様を描いた『僕僕先生』が帰って
きました。続編を心待ちにしていたので、またこのコンビにに会えて嬉しい。5年の歳月が
経っているとは思えない程、二人の距離はそのまんま。というよりも、お互いへの想いは更に
大きくなっていることが伺えます。
いや~~~、今回、僕僕先生のキュートさはさらに磨きがかかっております。か、かわゆすぎる。
完全に萌え~~~の境地。王弁がいちいち師匠に見惚れて当人からツッコミを入れられている
のが哀れになりつつ、可笑しい。二人のムフフ~度は更にパワーアップしてますよ!かといって、
急にラブラブにならないのがこの二人らしい。王弁的にはいつでもカモーンな状態(笑)なんで
しょうが、師匠はそんなに弟子に甘くありません。言葉や態度の端々から王弁への愛しい気持ちが
伝わってくるけれど、そんな態度はめったに弟子には見せません。普段は厳しい態度を取りつつ、
物語のラストではちょっとだけ甘えた態度を見せる。このアメとムチの使い加減がさすがです、
先生!(笑)彼女(?)も完全に一種のツンデレですよねぇ(『デレ』の部分はめったに
見せないけど(苦笑))。

今回は旅をするごとに妖怪の仲間が増えて行き、二人の旅もにぎやかです。二人の恋を興味
深く観察する大亀の珠鼈、可愛らしい雷の子供、ぱん(漢字が出ません^^;)、皮膚一枚
の身体で恋人を熱烈に愛する薄妃、衝山の女神の髪の毛から生まれた妖怪・鶉。みんな個性的で
楽しいキャラたちです。特に薄妃のキャラは好きだなー。天日に干されてる姿とか想像すると
笑っちゃうけど(苦笑)。彼女の恋人への情熱はなかなかにすごいものがあります。でも、僕僕
たちと旅をしている時は呑気でのんびりした雰囲気があって、彼女が出て来るとほんわかした
気分になりました。彼女の恋がまた成就すると良いのだけれど。
でも妖怪たちの中で一番癒されたのは第狸奴。狐のような狸のような妖怪らしいですが、いろんな
モノに変化できます。苦手なモノに変身する時は尻尾だけ出ちゃったりして、その尻尾ふりふりが
また愛嬌があって可愛い^^王弁の頭の上に乗っかるところも、王弁がそれを普通に受け入れて
いるところも好きだったな。完全に癒し系キャラでした。
残念だったのは、前作で大活躍した馬の吉良の活躍がちょっと少なかったこと。強いキャラたちが
いっぱい出て来るから仕方ないところかもしれませんが^^;

王弁は僕僕と離れている間に薬師としてはかなり成長したようですが、僕僕と一緒にいると全く
その成長が伺えません(笑)。師匠はどこまで行っても師匠、弟子はどこまで行っても弟子でしか
ないということでしょうね。僕僕に翻弄され、おろおろする彼の姿を読んでいるのが楽しい(S?)。
つかず離れずのこの距離でしばらくは行ってもらいたいかも。

相変わらず地名やら人名の読みは難しいですが、前作よりも更に楽しくほのぼのした良作でした。
それぞれの話のオチもちょっとホロリとさせてくれて、読後も良かったです。仙人と人間の恋の
行方がこれからどうなっていくのか、彼らの旅の続きを読むのが待ち遠しいです。仁木さん
ご本人も気に入っているシリーズのようですし、どんどん続きを書いて欲しいですね。