ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

米澤穂信/「儚い羊たちの祝宴 The Babel Club Chronicle 」/新潮社刊

米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴 The Babel Club Chronicle 」。

あらゆる予想は、最後の最後で覆される…。ミステリの醍醐味である、終盤のどんでん返しの更に
その上をいく、「ラスト1行の衝撃」に徹底的にこだわり抜いた、暗黒連作ミステリ。表題作ほか
全5編を収録(あらすじ抜粋)。


あらすじせっかく考えたのにまたしても操作ミスで記事を全て消してしまいました・・・(涙)。
もう一度考える気力がなくなったので抜粋で失礼します・・・。気合入れて考えた時ほど、なんで
いつもこうなんだろう・・・うう(T_T)。


気を取り直して、本書。かねてから記事を書く度に歯切れの悪い感想ばかりを書き連ねてきた
米澤作品。やっと心から『好みだ』と云える作品に出会えたような気がします。いやー、黒い。
でも、巧い。もう、気が滅入るくらいに結末がブラックで、読後はこの上もなく悪いのだけど、
湊かなえさんの『告白』みたいに、ここまで落としてくれたからこそかえって爽快というか。
ラスト一行のどんでん返しのことを『フィニッシングストローク(最後の一撃)』というの
ですね。知りませんでした(無知)。この作品は全篇それに拘って書かれた作品。実は読んでる
時はそのことを知らなかったので、あまり意識してなかったのです。読み終えて他の方のレビュー
を読んで、パラ読み禁止だったということを知りました。そういえば、他の方の記事で帯がどうの
って言ってたよなぁと後になって気付いたという^^;
最後一行の衝撃って言われると首をかしげる作品もありましたが、どれもひねりがきいていて、
巧いなぁと思わされる作品ばかりでした。ただ、一作どうしてもオチの意味がわからなかった
作品があるのですが・・・後ほどネタバレ部分で触れます。未読の方は決して読まないように、
既読の方は是非ともバカな私にご教授ください・・・。
それにしても、米澤さんがお得意の青春ミステリとは対極に位置するようなこんなダークな作品を
書かれるとは驚きました。全ての作品が旧家を舞台にしていて、使用人とお嬢様どちらかの視点で
描かれるので、御伽噺を語っているような優しい語り口。でも、そのソフトさに安心していると、
ラストでまんまと足をすくわれてしまう。この語り口とのギャップがまた結末の黒さを増長させて
いて良かった。一応全ての作品で視点が変わり、単独の作品ではあるのですが、大学の読書サークル
『バベルの会』が必ず共通点として出て来ます。単語くらいしか出てこない作品もありますが、
ラストの表題作(『儚い羊たちの祝宴』)では『バベルの会』の終焉と再生が描かれ、連作短編
としても秀逸な終わり方だったと思います。まぁ、この作品に関してはフィニッシングストローク
の作品とは言い難いですが^^;
個人的には『身内に不幸がありまして』と『玉野五十鈴の誉れ』が好きですね。『身内~』は
犯人の動機は予想通りだったとはいえ、やっぱりその無邪気な黒さにやられてしまいました。
『玉野五十鈴~』はほんとにラスト一行の落とし方が黒さ爆発でいいですねぇ。これも文章
だけ見てる限りでは昔から使い古された言葉なんですけどね・・・怖っっ^^;;
ミステリとしても成立しているけど、ホラー的な怖さもあり、どの話も読んでいて背筋が寒く
なりました。













では、問題のネタバレ厳重注意。読まれた方だけどうぞ!未読の方は一番下に飛んでください。
















私がわからなかったのは『山荘秘聞』のオチ。あ、あのー、ほんとに多分すっごい恥ずかしい
質問なんですけど、『触れれば切れそうに真新しく、人を殴り殺すこともできそうな煉瓦
のような塊』って、何を指すんでしょう?これがわからないので、ラスト一行の『口止め料』
にもピンとこなかったんです・・・。多分完全に読み落としてるんだろうとは思うのですが、
何度直前を読み直しても(多分3回は読み直した)、わかりませんでした^^;
ラスト以外は動機の予想こそついたものの、直前のどんでん返し(絶対○肉だと思った)にも
まんまとやられて面白く読んだので、ラストのオチがわからなかったのが残念でなりません^^;
書評巡りもしたのだけど、どの方も一目瞭然ぽく書いてあったので地中深く沈みたくなりました^^;
どアホな私にどなたかこのオチの意味を教えて下さい~~^^;;











なんだか初めて米澤さんの作品を大手を振って『好きだ』と云える気がする。嬉しい・・・。
このブラックさとトリッキーさはミステリ好きにはたまりません。あまりの救いのなさに
気が滅入りそうにもなりましたけどね^^;これも、好き嫌い分かれるかもしれないなぁ。
個人的にはこういう趣向の短編集は非常に好み。もっとこういうの書いて欲しいです。
装丁もかっこいい。
見直しちゃったなー、米澤さん(なんで偉そう?^^;)。