ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

坂木司/「夜の光」/新潮社刊

坂木司さんの「夜の光」。

天文部のたった4人の部員、ジョー、ゲージ、ギィ、ブッチ。それぞれに自分の世界で戦う4人は、
仮面を被って生活している。活動が楽そうだからというだけの理由で入部した天文部だったが、
4人それぞれに、なぜか月一度の夜の定例会だけは参加していた。初めて定例会を開いた日の夜、
駅ビルで4人一堂に再会して以来、彼らの中にはある強い結びつきが生まれた。それは、4人の
関係を秘密にして、スパイに身をやつそうというものだった。部活以外では全く接点のない、
月一度、夜にしか会わないスペシャルな仲間。夜に輝く光のような4人のスパイたち。彼らの
ミッションが始まった――。


ようやく回ってきました。坂木さんの新刊・・・と思ったら、なんと、さらに新刊が出ている
ではありませんか!(さっきネット検索してて知った)がーん。またしても予約に乗り遅れて
しまう・・・明日図書館休みだしなぁ(T_T)。最近、新刊情報に疎くて、予約に乗り遅れまくって
いる私です(りあむさぁん・・・)。これも発売してすぐに予約した筈なのに、待たされたなぁ。
熱烈な坂木ファンがいるんだろうな・・・結構人気あるのに、なんで蔵書一冊なんだー(怒)。

っていうどうでもいい前置きはさておき、心に重い何かを抱えた4人の天文部員たちによる
ちょっと変わった青春ミステリです。4人それぞれが、家庭や学校では本当の顔を隠して
仮面を被って生きている。そんな彼らが唯一安らげる場所が『天文部』。そもそも誰も天文なんかに
興味はないし、他の三人とは部活以外で接点もない。必要以上に踏み込まない、一歩距離を
置いた4人の関係。でも、4人集まるとなぜか心安らげる。この、なんともいえない4人の
距離感が好きでした。自分たちの関係をスパイに見立てて、コードネームで呼び合うというのも
面白い。ネーミングセンスはいかにも高校生らしくて笑ってしまいましたが(苦笑)。彼らの
本名には必ず色が入ってるから(川田祐一、安田美、山孝志、中島)、それにちなんでも
良かったんじゃないかなぁとか思ったりもしたんですけど。でも、それじゃコードネームっぽくないか。
でも、このコードネームがどうも彼らそれぞれのキャラクターと合わなくて、最後まで馴染めなかった
気がする^^;ギィって、ゲージって、誰だったっけ?を毎回繰り返していたような^^;
ちなみにブッチの本名と同じ苗字の人が昔の職場の先輩にいたのですが、かなり厳しい人だった
ので苦い思い出が蘇ってきてちょっと複雑でした^^;今どうしているのかなぁ。芸能人にも
いますけどね、この苗字の人。

ミステリとしては相変わらずのゆるさ。まぁ、坂木さんの作品はいつもミステリはつけたしの
ような扱いだから、それでマイナス要素になることはないのだけど。でも、『片道切符のハニー』
のJバザーの彼女の態度の理由は、そんなに考えるまでもなく一目瞭然だと思いましたが(案の定
そのまんまだった^^;)。『スペシャル』のピザのトッピングのメッセージも、まわりくどすぎて、
現実的ではないなぁと思いました。絶対誰も気付かないよ、普通・・・^^;

ジョーの話で始まって、ジョーの話で終わる構成はいいと思うのですが、もうちょっとラストは
ひねりが欲しかった気もする。このあっさり感が、4人の関係らしくていいのかもしれませんが。
それぞれどの話にも形は違えど『夜の光』が出て来る。それは蛍のような携帯電話のライトで
あったり、夏空に広がる花火であったり、キラキラ輝くピアスであったり、もちろん、夜空に
瞬く星であったり。夜に見る光は少し特別な感じがして、それは彼らを照らす青春の光なんだ
ろうな、となんだか羨ましくなりました。輝いてないもんなぁ、最近・・・。

それにしても、これもまちがいなく『空腹小説』(by チルネコさん)ですね。彼らが屋上で
食べる食べ物はどれもいちいち美味しそう。みんな高校生のくせにお料理上手ですごいなぁ。
創作鍋も一見めちゃくちゃな組み合わせだけど、なんだか美味しそうに思えてしまうところが
すごい。きっとみんなで食べるからより美味しく感じるんだろうな。ギィのコーヒー飲みたい~!

みんな、いろんなものと闘って成長して行く。スパイを卒業した彼らの前途が光輝くものであれば
いいと思う。離れていても、ずっと会えなくても、4人の関係はずっと変わらないで続いていて
欲しいです。

ぶっちゃけ、ゲージのベイベーとか、ブッチのメーンにはかなりイラっとしましたけどね・・・。
個人的にはジョーのキャラが好き。いちいちゲージの言葉に反応する律儀なとことか。
ジョーとギィの関係も良かったな。

新刊は来年持ち越しになりそう。早く読みたいよぅ(T_T)。