ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

坂木司/「短劇」/光文社刊

坂木司さんの「短劇」。

本が好き!創刊時から連載された掌編を一挙収録。ちょっぴり毒の効いたビターな掌編集。


坂木さんの新刊。坂木さんてこんな黒い作品も書けるんだなぁとちょっとびっくり。ショート・
ショートなので一作がほんとに短く、あっという間に読めてしまうけれど、どれもなかなか
ひねりが効いていて巧いなぁと思いました。ダントツで良かったとか印象に残った作品という
のはないのですが、これはダメだった~というのもなく、それぞれ毛色が違うけれどそれなり
に読ませられてしまう作品ばかりでした。ただ、作品数が多すぎて、ちょっと最後の方は
飽きてきてしまった。全部で26作プラスあとがきで構成されていますが、あとがきも
作品の一部として読ませるようになっているところは良かった。できれば20作くらいで
まとめて欲しかったかも。


以下全作品のタイトル。印象に残ったものだけ一言コメントつき。


『カフェラテのない日』
この間読んだ東野さんの『鬱積電車』を思いだした。オチはちょっと肩透かし。

『目撃者』
給湯室の流し台には要注意。

『雨やどり』

『幸福な密室』
状況を思い描くとかなりシュール。こんな人間と密室で閉じ込められたくはないな。

『MM』
MMの正体には唖然。見られてる・・・。

『迷子』

『ケーキ登場』
群像ものとしてはなかなか巧い。どんな人も端から見てるのと内面は違っているということ。

『ほどけないにもほどがある』
気持ち悪い~~~。これは生理的に嫌だった。坂木さんがこんな話を書くとは^^;;

『最後』
オチの黒さがいい。因果応報。天誅。自業自得。

『しつこい油』
主人公の粘着質な執念には嫌悪しか感じなかった。相手の女にも。どっちもどっち。

『最後の別れ』

『恐いのは』

『変わった趣味』

『穴を掘る』
これはこの短編集の鍵となる一篇になるのかな。これも坂木さんとは思えない程黒い。

『最先端』
ぞわわわわ。嫌だ嫌だ嫌だー。絶対やりたくない。こんな最先端なら要らない。

『肉を拾う』

『ゴミ掃除』

『物件案内』
この短編集の中では珍しく‘ちょっといい話’?

『壁』
今の世の中、こんな風に病んでる人はたくさんいるんじゃないかな。

『試写会』
黒ーー!「不要ね」の一言が怖い。でも私もこの主人公は「不要」だと思う。

『ビル業務』

『並列歩行』
ドッペルゲンガー

『カミサマ』

『秘祭』
こんな通過儀礼があったらそりゃグレるね・・・。

『眠り姫』
グロい。

『いて』
京極さんの『幽談』にこんな話あったなぁ。

『あとがき』
これも立派な掌編になってるのが巧い。このあとがきでまとまりのある一冊になったと思う。
始めは『いい話』の連載のつもりだったというところにびっくり。だんだんブラックに
なっていったということは、坂木さんも実はこういう『毒』要素をずっと作品に入れた
かったのかもしれない。今後はそういう一面がどんどん出て来るのかな。個人的意見と
しては、坂木さんにはあんまりブラックになって欲しくないんだけど。
でも、さいごの「くくくっ」に坂木さんの皮肉で人の悪い面が表れている気がする。




かなりビターなショートショート集。今まで坂木作品が甘すぎてダメだったという人にもおススメ。
バラエティに富んでいるので、坂木さんの意外な一面がたくさん見れた気がします。
一気に読むより、毎日ちょっとづつ読んだ方が良かったかもしれないな。
お腹いっぱいでちょっと食傷気味^^;