ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏/「任侠学園」/実業之日本社刊

今野敏さんの「任侠学園」。

東京下町のヤクザ阿岐本組。組長阿岐本と代貸の日村を含めて総勢6名の小さな組だが、阿岐本の
顔の広さと人望の厚さで広域暴力団の傘下にも入らずに生き延びられている。今時珍しい任侠と
仁義を重んじる阿岐本は、古き良き時代の正統派のヤクザ道を貫いていて、地域住民からも親し
まれていた。しかし、阿岐本には一つ困った癖があった。それは、文化人に憧れるあまり、
やたらに文化事業に首を突っ込みたがるのだ。以前につぶれかけた出版社の債権の取りまとめ
をする為、その会社の代表取締役として乗り込んだ経験がある。そんな阿岐本が今回目をつけた
のは経営が傾いた学校法人。つまり、私立高校だ。阿岐本は、廃校寸前の高校の理事長に収まり
経営を立て直すのだといい始めた。代貸の日村も理事の一人として学校に詰めろといわれ、頭を
抱える日々が始まった――。


わお。めちゃくちゃツボにきました、コレ。面白かった~~~!!実は今野さんの作品で一番
気になっていた作品。以前複数のブログで記事を見かけて、任侠モノに弱い私としてはかなり
食指が動いていたのです。でも、なかなか書架で見かけず、存在を忘れかけていたところ、先日
ついに発見、即確保。昔ながらの仁義や礼・人情を重んじた任侠ものって大好きなので、まさに
本書の阿岐本組はど真ん中でした。阿岐本組の組員たちのキャラが良い。特に阿岐本のオヤジ
が渋くてかっこよかった~。でもやっぱり一番は代貸の日村。クールだけど妙に人情味溢れてて、
ちょっとづつ生徒や先生たちと信頼関係を築いて行く過程がとっても良かった。舎弟たちに
対してもいいアニキ分って感じで、こんな人にならついて行きまっせ~!って言いたくなっちゃう
人柄で素敵でした。
日村に矯正されて行く学園の生徒や先生のキャラも良かったです。夜中の学校警備の藤本さん
もポイント高し。意外な強さを発揮するとこが好きでした。

ストーリーは至って単純明快で、展開も予想した通りに進んで行くのですが、それが実に痛快で
爽快。これも予定調和だからこそ気持ちいいタイプの作品ですね。荒廃しきった学園や生徒や
生徒の親たちをやり込めながら矯正していく日村の言動にはすかっとしました。特に理不尽で
身勝手な言い分で学園からヤクザ理事たちを追い出そうとするモンスターペアレンツたちを
やり込めるところは読んでて気分爽快。この辺りは『隠蔽捜査2』に通じるものがあって、
今野さんが現在の教育の現状に嘆き、物申したいところなんだろうな、と思いました。
終盤の小日向親子と対決するシーンも良かった。阿岐本のオヤジさんの自信過剰っぷりに
絶対何かあるとは思っていたけど、予想通り(笑)。その人脈の広さには一体何者なんだーって
思っちゃったけど^^;漫画みたいな展開だけど、おやっさんかっこいい!ひゅーひゅー!!
って感じでした。

ラストのおやっさんの粋なはからいも良かったですね~。どきどきしながら携帯をかける日村
の嬉しさが伝わって来て、こちらまで嬉しくなりました(『女子高生か!』ってツッコミたく
なったけど(笑))。読後も爽快。できれば二人でちひろのダンスを見に行ったところまで
読みたかったなぁ。ヤクザが女子高生のダンスを見に行く光景も想像するとすごいものが
あるけど(笑)。

やー、めちゃくちゃ気に入ったので、これ続編とかないのかなぁと思ってたら、なんとなんと!!
ビーンこれが続編だったのですね・・・!!!や、やっちまったぜ・・・(がっくり)。
確かに冒頭で出版社を乗っ取ったとか書いてあって、その話も面白そうだなぁとは思って
いたのだけど・・・。で、でも、まだ彼らに会える作品があると知って嬉しいです。早く
読みたいっ。一作目は『とせい』だそうですね。そういえばタイトルは何度も開架で見かけて
いる気が。これ以降は続編出てないんでしょうか。『隠蔽捜査』と同じ位、いやそれ以上って位
気に入っちゃったんだけどな。でも、今月は『隠蔽捜査3』が出ますものね。うふ。

痛快で気分爽快。任侠最高!!って叫びたくなるエンターテイメントな任侠小説でした。
お薦めです!