ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

菊地秀行/「トレジャー・キャッスル」/講談社刊

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菊地秀行さんの「トレジャー・キャッスル」。

おれは血気盛んな中学三年生。喧嘩は日常茶飯事だ。今日の決闘相手は相撲部一派。決闘場所は
S県M市のSM十万石の城跡。素人相手には負けないが、卑怯な相撲部はネットの裏サイトでプロの
< 喧嘩屋 >を雇いやがった。ピンチになったおれは武器蔵に逃げ込んだ。すると、なぜかそこには
同級生のイケメン丹野、美少女冬実、文学少年の能登が揃っていた。様子のおかしい能登は何かを
調べにきたらしい。そして、能登の口から、この城のどこかに莫大な宝が眠っているという
情報を聞いたおれたちは、彼と供に宝探しに乗り出すことにしたのだが――講談社ミステリー
ランドシリーズ。


なぜか地元の図書館で入荷してくれない菊地さんのミステリ―ランド。みなさんにどんどん
先を越されて、どうしたものかと思っていたら、隣町図書館にて運良く発見。このレーベルの
作品はどんなに苦手な作家でも絶対読むことにしているので、読めて良かったです。なぜか
新作の内田康夫氏の作品は地元図書館で一気に10冊入荷し、早々に回ってきたようなので、
近々読める予定。この差は何なんだ^^;菊地さん、それほどマニアックな作家だとは思え
ないのになぁ(それを言うなら上遠野さんとかの方がよっぽどマニアックな気がする)。
いかがわしげな○ロ表現(SM城とか鞭丸とか^^;)で引っ掛かって入れてくれなかったのかな・・・
菊地さんだし、その辺は大目に見てあげて欲しいとこなんだけどな(苦笑)。

菊地さんの作品を読むのは本当に久しぶり。でも、学生時代は最もはまって読んだ作家の一人
と云っても過言じゃないくらい、大好きでした。ヴァンパイアハンターDから入って、魔界都市
新宿、魔王伝、魔界都市ブルースシリーズ、魔界医師メフィストシリーズ・・・シリーズ作品が
出る度に興奮して読んでました。ミステリにはまってからはだんだんと手が伸びなくなって、
最近ではご無沙汰になっちゃいましたが^^;
そんな菊地さんのミステリーランドは一体どんな作品なのか、ワクワクしながら読みました。
出だしの喧嘩のシーンから菊地さんらしい展開の連続でちょっと笑ってしまいました。暴力描写に
一瞬、中島望さんを思い出しましたが(笑)。主人公を始め各キャラの人物造型が馴染めず、
最初はいまひとつ話に乗れずにいたのですが、彼らが城の地下を探検しに行く中盤以降は
なかなか楽しい冒険活劇になって面白かったです。まぁ、全体通してツッコミ所は満載なの
ですが、終盤のご都合主義的大団円も、ジュヴナイルならばこれ位わかりやすい終わり方の
方がすっきりするのでしょうね。
鞭丸が作った地下の施設のからくりにはビックリ。その時代にそんな技術があったというのは
いまいちリアリティがないような気もしましたが。でも、彼がそれを作った理由にはほんのり
心温まりました。見た目は完全に妖怪そのものですが(^^;)、妙な愛嬌と稚気があるキャラで
インパクトがあって良かったです。

でも、一番好きだったのはやっぱり『祖母ちゃん』ですね。可愛らしいし、強いし、かっこいいし。
小さい身体でガタイのいい主人公や身長2メートルを超す大男の父親をやり込めるところは、
一体何者!?と思いましたが、ラストで案の定何やらすごい傑物だったことが判明。彼女の
若かりし頃の武勇伝も読んでみたいな。

全体的に昭和の香りがする古臭さはあるのですが(苦笑)、まぁ、菊地さんらしい怪奇と伝奇
とバイオレンスをミックスさせたミステリーランドになったのではないかな、と思いました。
ただ、主人公を始め、他の同級生たちもどう見ても中三には見えなかったですけどね・・・
せめて高校生にすればもう少し違和感なかったような気がするんだけどな^^;こんな中学生
嫌だよ~^^;;
このレーベルでもちょこちょこ○ロ表現を使うところもらしいというか、なんというか(笑)。
地下で巨大な○が出て来た時は、ハリーポッターのあるシーンを思い出しました^^;

茶店のマスターの外谷さんは、もちろんアノ人の系類なんでしょうね。息子か孫かな(この作品の
時代設定がいまいちわからないけど^^;)。