ミステリ読書録

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佐藤友哉/「エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室」/講談社文庫刊

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佐藤友哉さんの「エナメルを塗った魂の比重 鏡稜子ときせかえ密室」。

青春は美しくない。私の場合もそうだった。2年B組に現れた転校生。校内で発生した密室。それらを
起点として動き出す、不可解な連中。コスプレを通じて自己変革する少女。ぐちゃぐちゃに
虐(いじ)められる少女。人間しか食べられない少女。ドッペルゲンガーに襲われた少女と、
その謎を追う使えない男。そして……予言者達。私は連中の巻き起こす渦に呑まれ、時には呑み
込んで驀進を続けた。その果てに用意されていたのは、やはりあの馬鹿げた世界(あらすじ抜粋)。


えー、時間がないのであらすじ抜粋で失礼します^^;佐藤さんの鏡家サーガ第二弾です。
一作目は、読んだ後図書館の本じゃなかったら壁に投げつけていた(文字通りの『壁本』)
かもしれない程、黒べる子全開の作品だったのですが、ユヤタン(佐藤さんの愛称らしい)
ファン様による「二作目は驚くほど文章がまともになる」との言を得て、いつかチャレンジ
してみようと思っていた作品でした。でも、地元も隣町も、なぜかこの二作目は所蔵しておらず、
なかなか読めないまま時は流れ、前作を読んでから三年も時間が経ってしまいました^^;
ようやく地元図書館に文庫版が入ったので読むことができました。

ユヤタンファン筆頭のY様曰く、『史上最高の黒べる子が出る』とのことだったので、ある意味
期待しながら読んだのですが、そこまでではなかったですね。だからといって良かったかと
言わると・・・むむむ。
どっちみち黒べる記事には間違いないので、以下の文章は佐藤さんファンの方、この作品を
これから読む予定の方はご遠慮くださった方が賢明かと^^;
それでも良いという奇特な方のみ先へお進み下さいませ。















なんかねぇ、やりたいことはわかるんですけども、一つ一つがはまってる感じがしないんですね。
浦賀さんと舞城さんを意識しているのだろうけど、どうも二番煎じの印象でしかないというか。
カニバリスムものとしても、グロ度もさほどでもなく、食人の必要性も感じられず(一応終盤に
『なぜ人肉を食べるようになったのか』という理由は書かれているのだけど、納得行く説明では
なかった)、すべてが中途半端。細かい要素を挙げて行くと、ツッコミ所満載。その辺、流して
読むべき作品なのでしょうけど・・・(そもそも、いくら病院長だからって、死んだばかりの
遺体を何百体も隠匿したら、訴えられるでしょう。遺族にどうやって説明したんだ?)。

いくつもの視点から語られるのだけど、それぞれの書き分けが不足しているので、誰が誰だか
混乱してとても読みづらかった。もちろん、ある程度混乱しながら読ませるのが作者の意図した
仕掛けなのはわかるのですが、途中から訳わかんなくなってどうでもよくなってしまった。
読んで損したとまでは思わないものの、読んで良かったとも言い難いような・・・^^;;
ラストの鏡稜子の謎解きでは、一応いろんな部分の説明がつけられるのだけど、まぁ、一言で
言えば「こういう解決の仕方だったら何でもアリだなぁ」って感じ。ミステリとして『意外性さえ
あればいい』みたいな安易な解決の仕方にはげんなりしました。どんでん返しさえあれば、読者は
満足すると思ってるんでしょうか。はっきりいって、ミステリが書きたいのか、SFが書きたい
のか、不条理小説が書きたいのか、全く見えてこなかったです。いや、その全部だったのかも
しれませんけど^^;

私が一番嫌だったのは、カニバリスムのシーンよりも、いじめのシーンでした。特に、トイレで
お弁当食べさせられるところ・・・もう、ほんと、読むのやめようかと思いました。生理的に
ダメでした。
でも、結局一番わからなかったのは、いじめを受けていた千鶴の人間性ですね。彼女って、一体
何だったんでしょうか・・・。ラストシーンも実はいまいち意味がわからないんですよね・・・。
私の読みとり不足なんだろうけど。どうも、すっきりしないまま適当に作者に煙に巻かれて
終わってしまった感じ。気持ち悪いだけで何も残らない小説だったなぁ・・・。

稜子さんのハチャメチャなキャラだけは結構面白くて好きだったけど。前作の内容ほとんど
忘れちゃってて、こんな性格だったっけ?と思いました^^;一作目で稜子さんってどうして
たんだっけ??時系列で言うと一作目の方が後になるんですよね。この作品のラストで
こうなっちゃって、この後どうしたんだろ、この人。

あれ、やっぱり史上最高レベルの黒べる子記事になってる?もしかして・・・???
ごめんね、ごめんね、ユヤタンファンの皆様、Y様。
結局、私にはやっぱり合わない作家なんだろうなぁ。確かに、文章は前作よりもまともに
なっていたとは思うけど、所々、いい具合にイラっとするしょうもない文章が挟まれてた
気がします^^;
でも、これの次が一番のお薦め作品らしいし、稜子さんのその後も気になるので(それは
一作目を再読するべきなのか?^^;)、次まではやっぱり読んでみようかなぁ(懲りない人)。