伊坂幸太郎さんの「あるキング」。
仙醍市の地元球団・仙醍キングスの熱狂的ファンである山田亮と山田桐子の間に生まれた王求。
彼は仙醍キングスの監督・南雲慎平太が亡くなった日に、入れ替わるように生を受けた。これを
運命だと信じた両親は、王求を野球選手にすることに全神経を注いだ。実際、王求は天才であり、
『王』となるべく資質を備えていた。しかし、天才であるがゆえに、彼の野球人生は波乱に満ちて
いた。これは一人の天才の人生の記録である。
うーん・・・。これは、賛否両論、評価が分かれる作品になりそうです。確かに、今までの伊坂
作品とはかなり作風が違います。新境地といえば、確かにその通りなのかもしれませんが・・・。
以下、未読の方はご遠慮頂いた方がよろしいかと思われます。これから読まれる方にはあまり
先入観を持たずに作品に当たって頂きたいので。
端的に言って、私には合わなかったです。おそらく、伊坂さんは自分の書きたい作品を書いたの
でしょうけれど、どうも作者のひとりよがりな印象が否めず、作品世界に入って行けない自分が
いました。野球と『王様』というファンタジックな設定がはまっているようには感じられず、
違和感ばかりを覚えてしまいました。文章は相変わらず洒脱で引き込まれるものを持っては
いるのですが、主人公の王求のキャラ自体が無機質で受け入れ難く、感情移入できませんでした。
王求を一流の野球選手にする為に手段を選ばない両親の行きすぎた情熱も理解不能でしたし。
子供の才能を伸ばすことは大事だけど、両親がその子供の行く先をすべて勝手に決めてしまうこと
に嫌悪感を覚えました。途中の殺人のくだりも、父親が殺人行為自体に全く罪悪感を覚えて
いないところが怖かったです。
あと、倉知巳緒の存在もよくわからなかった。意味深な前フリはあったけど、その後全く出て
来なくなって、最後になっていきなり病気になって再登場って、なんなんだ、一体！？と
キレそうになりました。意味不明なキャラが多くて、なんだか混乱してしまった。
いつもは、そういう細部の要素が最後にきれいに繋がって気持ちよく読み終えられるのに、今回は
そのほとんどが唐突な感じがして受け入れ難かったです。
そもそも、私は野球というスポーツがそんなに好きではないので、題材からして引いてしまった
ところがありました。ただ、これが野球ではなくサッカーだったからといって、好きな作品には
なっていないだろうと思われるのですが・・・＾＾；
途中で出て来る三人の魔女（？）の存在も良くわからなかったし、ファンタジックな設定を挿入
させる必要があったのかも疑問。それぞれの設定の必然性が感じられず、その不要な要素があるが
為にごちゃごちゃした印象になってしまった気がする。ただ、その部分がなかったらほんとに
単なる伝記になっちゃって、それはそれで伊坂さんが書く必要がない気もするのだけど。むむー。
もっといろいろ言いたいことはあるのですが、何だかどう言葉にしていいのかわかりません。
まぁ、一言で言うと、読んでてもあんまり面白くなかったというのが正直な感想です。いつもの
伊坂作品を読む時みたいなワクワク感がなく、惰性でページをめくっていた感じ。冒頭のもくじ
を見て、結末はなんとなく予想がついてしまいましたし（そして、その通りだった＾＾；）。
これは、『魔王』に次ぐ、伊坂作品ワースト２におどり出たかも・・・。期待していただけに、
ちょっと残念な作品でした。これが面白いと思える人もいるんでしょうけどねぇ。私が求める
伊坂作品ではなかったです。ごめんなさい。伊坂ファンから怒られそうだな～＾＾；；
これから読まれる方は、この作品を一体どう捉えるのでしょうか。それがすごく気になります。
いろんな方の意見が聞いてみたいです。なんか、また私一人孤立しそうな気もするなぁ・・・。
