ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

蘇部健一/「赤い糸」/早川書房刊

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蘇部健一さんの「赤い糸」。

島根県出雲大社に修学旅行に来ていた少女は、夜中に左手の小指が引っ張られる気がして
目が覚めた。すると、彼女の左手の小指には赤い糸が結ばれていて、部屋の外まで伸びていた
のだ。男子生徒の誰かが仕掛けたイタズラ?それとも、本当この赤い糸の先には運命の人が――
彼女が親友を起こして赤い糸を辿って行ったその先には意外な結末が――(「赤い糸をたどって」)。
赤い糸を巡る奇跡のラブストーリー。


蘇部クラブのみなさん、ソブケンの新刊が出ましたよー(と呼びかけて答えてくれる人が
一体今何人いるのか・・・ひ、一人?^^;)。ソブケン初の早川書房、表紙も
真っ赤な背景に真っ赤な薔薇の花束。どーですか、この表紙。素敵すぎる装幀でどーした
ソブケン!?と思わずにいられませんでしたが、中身はやっぱりソブケン。恋愛小説って
聞いていたので、多分また恋時雨系な感じなのかなー、と大して期待もせずに読んだの
ですが(酷)、これがなかなか良くできた作品になってまして、正直ビックリでした。

最初の『赤い糸をたどって』、続く『運命の人、綾瀬幸太郎』、さらに続く『出逢わなかった
二人』と読み進んで、カバー折り返しの最後に書かれた『いくつもの奇跡が織り成す、
読めば必ず幸せになれる恋物語の惹句に物申したい気分になったのだけど、最後まで読んで
納得。単に『赤い糸』というテーマで書かれた短編集だと思って完全に気を抜いて読んでいた
ので、それぞれの話が綺麗に繋がるラスト一編には感心を通り越して感動の域でしたよ。だって、
ソブケンだよー!全体的にゆるい作風で、特にそれぞれの話のオチには脱力しまくり状態だった
ので(いや、それがソブケンらしくて嬉しかったところもあるんですけど←だって盲目的
蘇部ファンだから!笑)、このラスト一編でそれまでの評価がまるっきり覆されました。
うーん、まさかこういう仕掛けになっているとわ。完全に油断してたぜ、ソブケン!(誰?)

最後のオチがイラストになってるのも蘇部さんならでは。単行本で紙も分厚いから、某作品
みたいに次ページのイラストが透けてみえちゃって、オイオイオチがまるわかりじゃないかよって
のもなかったので(^^;)良かったです。でも、何が良かったって、イラストが羽住都さんって
ことですよ。良かった、羽住さんがまだ蘇部さんを見捨てないでいてくれて(笑)。羽住さんの
華麗なイラストも併せてお楽しみ頂けるお得な一冊となっております(宣伝)。

いやー、期待してなかっただけになかなかの良作でファンとしては嬉しい限り。いつもの如く、
アホだなーって思える部分もふんだんに盛り込まれてますし(そこに激怒する人もいそうだけど^^;)、
ちゃんと一冊通してひとつの作品になってるところがなかなか好みの一作でした。

ただ、一番残念だったのはあとがきがないこと。ソブケンの本にあとがきがないなんて・・・!
シロップのかかってないかき氷みたいなものだわ。味気ない。あとがきが一番面白いのになぁ(おい)。
単行本だからお仲間作家さんによるソブケン応援解説もなかったしなぁ。でも、羽住さんの
ラスト一枚のイラストで綺麗に物語がオチているので、言い訳じみた自虐あとがきを控えたのかも・・・
(それとも、ハヤカワ側の要望か?)。

最初は先述したようにカバー折り返しの惹句を考えた編集者に『嘘つきッ!!』って言って
やりたくなったのですが、確かに最後まで読むと『読めば必ず幸せになれる恋物語の文句も
なるほどねぇ、と思えました。ただ、相当なご都合主義的展開ではありましたけども^^;でも、
私は素直に感心しちゃったなぁ。やるじゃん、ソブケン!って思いました(なんで、偉そう?)。
面白かったよ。素直に。


フェードアウトしていった過去部員のことはほっといて(誰とは言わないけどさ!^^;)、
私はこれからもソブケン応援団として追いかけ続けますよ~^^v。


※蘇部クラブでは随時新たな部員を募集しております。