ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

赤星香一郎/「虫とりのうた」/講談社ノベルス刊

赤星香一郎さんの「虫とりのうた」。

小説家になる為仕事を辞め執筆に励んでいた赤井雅彦は、ある日妻の由貴子に付き添って
買い物に行く途中、男に追われて助けを求める少女と出会う。少女は、「男に捕まったら
殺される」と訴えるが、追いかけて来た男は、その少女の父親だと言う。赤井は、少女の
言い分が正しいと感じるが、妻も含めた周りの大人たちが男の肩を持ち、少女を男に返せ
と言い含められた為、少女を男に託してしまう。しかし、後日赤井は、少女の父だと言い
張った男にその少女が殺害されたことをニュースで知り愕然とする。気になった赤井は、少女の
告別式に出かけるが、そこで彼女の同級生たちから、彼女が『虫とりのうた』という奇妙な
唄に関する都市伝説を調べていたことを耳にする。同級生たちは、彼女が『虫とりのうた』の
呪いで殺されたのだと言うのだが――第41回メフィスト賞受賞作。


うーん、うーん・・・微妙、としか言いようがないんですが。カバー折り返しで、作者が

『この作品には、作中で解明されていない秘密が隠されています。その秘密に気づいた
あなたは、なぜ事件が起こったのか、本当の理由を知ることでしょう』

と仰っているのですが、解明されていない秘密がいっぱいありすぎて、この言葉がどこの
ことを指しているのかさっぱりわかりませんでした。こんな意味深な言葉を読んだことで、
ハードルが一気に上がっちゃったような気がしないでもなかったです(そして大幅に
裏切られた感が^^;)。

『虫とりのうた』という童謡から端を発する都市伝説をテーマにした幻想ホラー、なのだけど、
どうも、差し出された題材が物語に上手く機能しているとは言い難い。いくつもの謎を提示しながら、
解明されないままに放り出されて、最後は無理矢理力技で収拾つけたって感じ。一つ一つの題材は
悪くないのに、その処理の仕方が杜撰で展開にひねりもないので、最後まで読んでもふーん、
って感想しかなかったです。幻想怪奇的な作風と文章の雰囲気は悪くはなかったのですが・・・。

一連の殺人を犯していた犯人に関しては、誰が読んでもある人物が浮かび上がってくると
思うのだけど、主人公だけがいつまで経ってもそのことに気付かないものだから、読んでいて
ものすごくイライラしました。で、このイライラがもしかしたら作者の仕掛けた罠なのかも、
とちょっぴり期待したのだけれど、やっぱり真相はそのまんまでがっかり。ただ、ある人物の
殺害に関して、犯人がこの人物だとするとちょっと腑に落ちない点がありましたので、その
部分はネタバレ扱いで後述します。

まぁ、ミステリではなく幻想ホラーとして読むべき作品だと思うので、すべてが解明されない
のも作者が意図したところなのでしょうけど(カバー折り返しの言葉でもそれは明らかですし)。
冒頭の少女と男の関係なんか、もっと大きな謎が隠されていると思っていたのだけれど・・・
そこもなんだか肩透かしな結末でした。











以下ネタバレしてます。未読の方はご注意ください。
















由貴子の殺害に関してですが、あの人物が犯人だとしたら、コーヒーが2杯あったのは
なぜ?あの人物に対してコーヒーをいれるってことはまずありえないと思うのですが。
コーヒーを入れた相手はやっぱり赤井ってことだったんでしょうか・・・。ってことは、
すべての真犯人はあの人物ではなく、赤井ってことも考えられる?

オチはホラーらしくて良かったと思いますが、唐突で無理矢理な印象もありました。
『虫とりのうた』の都市伝説の部分をもう少し掘り下げたらもっと面白かった気が
するんだけどなぁ。













なんとも、消化不良な感じの微妙な読後感でありました。
キャラ造詣には若干難ありと思いましたが、文章自体はなかなかこなれた印象で、最近
出たらしい二作目も読んでみようかな、と思わせるものはありました。今後読むかどうかは
それの出来次第になるかも。