ミステリ読書録

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鯨統一郎/「KAIKETSU! 赤頭巾侍」/徳間書店刊

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鯨統一郎さんの「KAIKETSU! 赤頭巾侍」。

正義の味方・赤頭巾侍。悪人どもをばっさばっさと斬り捨てる。その正体は、寺子屋の師匠にして
津無時円風流の遣い手、久留里一太郎である。一太郎、いささか直情怪行の気味あり。悪漢を
退治した後にアリバイがあったと聞くと、苦しまぎれの“こじつけ”推理を展開する。しかも、
毎回。早トチリの剣豪の活躍を描く、異色のユーモア捕物帳(あらすじ抜粋)。


ちょっと今あらすじを考える気力がありませんで。抜粋で失礼します^^;天変地異が起きたかと
思った(笑)冴さん大絶賛の鯨作品。なかなか借りる機会に恵まれず、ようやっと先日中央図書館
でゲットして参りました。借りるのに苦労した割に、読むのは一瞬だった・・・。相変わらず
ツッコミ所が満載で楽しいですね、鯨作品は(苦笑)。本書も、勧善懲悪の捕物帳の体裁ではあるの
だけれど、まぁ、ゆるい、ゆるい。なんじゃい、その展開!って何度ずっこけたことか。連続
時代劇のように、毎度ほぼ同じパターンの展開が繰り返されるので、終盤になると「あ、またお約束
の展開ね」と先が読めてしまうのですけれど、謎解きに関してだけは意外に本格を意識していて、
ちょっぴり感心。アリバイ崩しあり、密室殺人あり、不可能犯罪あり、雪密室あり。どれも意外な
盲点をついた犯行で、一太郎が苦し紛れに短時間で捻り出す謎解きにしては、それなりに説得力が
あって不思議と納得させられちゃいました。まぁ、基本バカミスなんですけどね^^;特に、橋の
やつとかね。どんだけ粗雑な作りの橋なんだよ、と思いました^^;もちろん、謎解き以外の部分
でも終始脱力させられっぱなし。
そもそも、瓦版屋の勘太の情報から勝手な思い込みで殺人の犯人を成敗しちゃう時点で
「おいおい」と思う所なのですが。殺しちゃった後で同心の小田に「その人物にはアリバイが
あった」などと言われて真っ青になった一太郎が、自分の仇討ちを正当化する為に無理矢理
推理を捻り出す、という、なんともめちゃくちゃな設定です。それが毎回お約束の如くに
展開されるんだから、呆れるを通り越して笑うしかありません。しかも、後半の作品になるに
つれて、一太郎と勘太の、事件についての情報交換のセリフのやりとりが短くなって行って、
ほとんど一太郎の思い込みだけで仇討ちをしているような状態。それで毎回間違えそうになる
のだから、一太郎の学習能力のなさには呆れててしまうのですが^^;
時代物書いても(どんなジャンルでも)鯨さんはやっぱり鯨さんなんですねぇ・・・(苦笑)。
それに、お堅い渋キャラの同心、小田(中年男)が、なぜか秘かに一太郎に恋心を抱いていて、
一太郎に聞こえないようにぽそっと愛のセリフをつぶやいたりする(笑)。しかも、その
セリフが『小田』繋がりからなのか(多分そう)小田和正の歌の歌詞のフレーズとほとんど
同じなのだから、やることがいちいち細かい(笑)。この辺の本筋にはどう考えても必要
なさそうな要素がちょこちょこ入っているところが鯨さんらしいというか、何というか。

でも、最終話の仇討ちの人物とのラストは、引っ張った割にあっけない幕切れで拍子抜け。
仇討ちの人物に関しては途中のある描写で気が付いてしまったのだけれど、それまでその
人物は好感のもてる人物として出て来ていたので、裏でやっていたことを知ってかなり幻滅
しました。この作風で、そんな黒い真相にしなくても・・・。それに、その人物とある人物の
関係にもかなりショックを受けました。この最終話があまりにも後味が悪かったので、読後感も
良くなかったです。もうちょっと痛快な気分で終わらせて欲しかったなぁ。小雪さんとの
エピソードもなんだか消化不良だったし。清之助のキャラの扱いも中途半端だったなぁ。
なんだか、ちょこちょことすっきりしない部分が残りました。鯨さんらしいゆるテイスト満載で、
面白かったのは確かなのですけれどね。まぁ、このユルい作風が合わない人は徹底的に合わな
そうな作品だなぁって気も^^;
良くも悪くも、鯨さんらしい一作でありました。