ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鯨統一郎/「すべての美人は名探偵である」/カッパノベルス刊

鯨統一郎さんの「すべての美人は名探偵である」。

美貌の歴史学者・早乙女静香は、テレビの生放送中に短期大学の名誉教授である阿南完治を
罵倒し、更に放送が中断された後殴り倒して不祥事を起こしてしまう。勤める大学から謹慎処分
を下されるが、ゼミの学生の力を借りて沖縄に研修旅行に行くことに。しかし旅行先で偶然
阿南の死体を発見し、容疑者にされてしまう。静香は自分を慕うゼミの学生・三宅とバーで
知り合った美人女子大生・桜川東子を助手に、自らの容疑を晴らすべく奔走することに。
事件の背後には徳川家光に関する意外な歴史の新事実が隠されていた――驚天動地の歴史
ミステリー。


邪馬台国はどこですか?」の早乙女静香さんと「九つの殺人メルヘン」の桜川東子さん、
美女二人の豪華ダブルキャストによる歴史ミステリーです。なんて書くとすごそうですが、
どこまで行っても鯨さんらしいトンデモミステリでした。バー以外の場所で動き回る二人
は初めてだったので、意外な面も見れて面白かった。特に、静香さんの女王様っぷりは
すごい。確かにバーでも女王様的発言ばかりしてましたが実生活でもここまでとは^^;
その割に生活は質素を通り越して貧窮。あの気の強い女王様気質の静香さんがこんなに
苦しい生活を余儀なくされていたとは思いませんでした・・・。それに、かなり忘れっぽく、
どこか抜けている性格も意外。待ち合わせのお店がバーだったか喫茶店だったか忘れて、
違う場所に行っちゃったり、ミスコン有力者が集う座談会にお化粧するの忘れて行っちゃったり。
(普通最も気合入れて行く場所ですよね!?)
でも、人から「肩書きは?」と聞かれて「美人」と答えちゃうあたり、やっぱりどこまで
行っても静香さんは女王様だなぁと思いましたが(笑)。肩書きが美人て^^;

意外といえば、東子さんのキャラも意外な面が多かったです。「九つ~」や続編「浦島
太郎の真相」なんかではどうも現実感のない掴み所のない性格で、何考えてるのか
わからないところがあったのですが、本当に天然のお嬢様なんだということが判明(笑)。
静香を「お姉さま」なんて呼んで慕うあたり、やや百合が入ってたりするのかも!?(嘘)
お酒を飲めば飲むほど推理が冴えてくるという酔拳ならぬ酔推に大ウケでした(爆)。
『アリバイ崩しの東子』のアリバイ崩しはやっぱり面白かったです。でも、犯人早く
わかりすぎ(苦笑)。本書のキモはフーダニットではなく、ハウダニットであることは
わかるのだけど、それにしてももうちょっと犯人が誰かも引っ張って欲しかったなぁ。
意外性のカケラもないんだもの^^;

「ずいずいずっころばし」の解釈にはぶっ飛びました。最近作品ごとに歴史解釈の部分が
苦しくなって来てるような・・・ネタ切れ?鯨さんらしいとは思いますが、あまり説得力は
なかったです。って、鯨作品に説得力を求めちゃだめなんだろうな・・・このぶっとび方が
‘らしい’と思うべきなのよね。うん。まぁ、そういう解釈も新しくて面白いよね、くらいに
思っておくのが正解なんでしょうね。ツッコミだしたらキリがないので(苦笑)。

日本一の美女を決めるミスコンにタイムスリップシリーズの三須七海が出てるのもちょっと
にやり。鯨作品の美女が総出演です。途中で負けちゃう公認会計士の小野寺久美子さんも何かの
作品に出て来るキャラなのかな?その辺はよくわからなかったのですが^^;


まぁ、とにかく、タイトルからして人を喰ってますよね。鯨さんらしくぶっ飛んだキャラ
満載で面白かったです。はい。