ミステリ読書録

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三津田信三/「凶宅」/光文社文庫刊

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三津田信三さんの「凶宅」。

ここ、絶対におかしい。小学四年生の日比乃翔太は、越してきた家を前に不安でならなかった。
山麓を拓いて造成された広い宅地に建つのは、なぜかその一軒だけ。両親と姉は気にも留めなかった
が、夜、妹のもとにアレはやって来た。家族を守るため、翔太は家にまつわる忌まわしい秘密を
探り始める。そこで出会ったのは、前の住人である少女が綴った恐ろしい日記だった…。たたみ
かける恐怖。仕掛けられた数々の伏線。三津田マジック、ここにあり(あらすじ抜粋)。


確か新刊時に買ったような気がするのですが、積ん読本消化月間ということで、ようやく重い腰を
あげて読んでみました。一作目の禍家とかなり共通点はありますね。もちろん、『家』
シリーズということで、自宅の中で怪異に遭うというところも一作目を踏襲していますし、
主人公の少年の人物造形も結構似てるし(というか、同じ少年なんじゃないかと思えるくらい
似ているように感じたのですが^^;)。さくさくと読みやすいところも同じですし。如き
シリーズに比べて、読みやすさは段違いですね。少年が主人公だからかもしれませんが。今回も、
自分の家で恐ろしい出来事が畳み掛けるように起きるのですが、主人公の翔太が怯えつつも
果敢にその怪異に立ち向かおうとするので、それほどの怖さは感じませんでした。幼い妹を
守ろうと頑張る姿には小学4年生とは思えない逞しさを感じました。
面白かったのですが、読み終えて腑に落ちない点が多く残されたままで、前作よりはちょっと
消化不良な読後感でした。






以下、ネタバレあります。未読の方はご注意を!
















季実のところに現れたヒヒノやヒミコといった妖怪の正体にはビックリしました。この正体
についても、前作の真相と似てますね。一番怖かったのは○○っていう・・・。

ただ、わからなかったのは、なぜ彼らが揃って首を吊ったのか。
あと、二番目の住人、池内家では何故祖父だけが首を吊ったのか。
最初の住人一家と、池内家の後に入った三番目の住人一家は死人も出ていないのに、なぜ引越したのか。
辰巳の扇婆はなぜあんな状態になってしまったのか。
幸平の母親は何の病気だったのか。
町内会の会合は結局何について話し合われていたのか。
希美に憑いていたあの蛇みたいな怪異の正体は何なのか。
池内家と日比乃家の兄妹の名前の類似点に意味はあったのか。
あの家から離れた翔太がなぜ羊のハネタになってしまったのか。



うーん、今思いついただけでもこれだけ疑問点がある。結局、全部が『怪異』で片付け
られちゃったってことなんですかねぇ。なんだかやっぱり納得がいかないような・・・。
意味深な設定がたくさん出て来るのに、結局それが何の伏線でもなかったりして、かなり
肩透かしを食らわされた気分でした。
ミステリよりはホラー重視の作品なんでしょうけれど。一作目の方がまだミステリとしての
出来は良かったような・・・(うろ覚えですけど^^;)。
まぁ、こういうホラーはあまり深く細かい部分をツッコむべきじゃないんでしょうね^^;
ついつい、ミステリ的な読み方をしてしまって、疑問点ばかりが目についてしまったのですが。

ラスト一行のフィニッシングストロークはなかなかに強烈でしたけれどね。前作もこんな終わり方
でしたよね、確か。
心配なのは、この後季実がどうなってしまうかですが・・・。更に彼女も怪異に取り込まれたと
したら、一体どんな名前になるんでしょうか。















不満の多い結末ではあったのですが、翔太と幸平のキャラ造形と関係は良かったですね。お互いの
身を案じる友情にぐっときました。特に、危険を顧みずに幸平が扇婆の家に踏み込んで池内桃子の
日記のノートを取って来たくだりとか。幸平の身の上や性格はもっとワケありなのかと思って身構えて
いたのですが、結局普通の良い子でほっとしました(苦笑)。
ホラーと言うほど怖くはなかったのですが、ラスト一行のゾクリとする落とし方は秀逸でした。
その後のことを考えると、この上もなく後味悪くて暗澹たる気持ちになりましたけどね^^;