ミステリ読書録

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古野まほろ/「群衆リドル Yの悲劇’93」/光文社刊

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古野まほろさんの「群衆リドル Yの悲劇’93」。

浪人中の「元女子高生」渡辺夕佳のもとにとどいた“夢路邸”内覧パーティの誘い。恋人の東京
帝大生・イエ先輩こと八重州家康と連れだって訪れたそこには、個性的でいわくありげな招待客
たちが集っていた。雪の山荘。謎めいた招待状。クローズドサークル。犯行予告。ダイイング・
メッセイジ。密室。生首。鬼面。あやつり。見立て。マザー・グース。そしてもちろん、名探偵。
本格ミステリのあらゆるガジェットを駆使した、おそるべき傑作(あらすじ抜粋)。


『もう二度と読まない』宣言をしておいて、スミマセン・・・読んじゃいました^^;だって、
単行本だし、ぱらぱら中見たら天帝シリーズほど変な文章なさそうだったし、何よりこの副題
持って来られたら、本格ミステリ好きとしては気になってしまうではないですかーー。・・・って、
なんでこんなに言い訳してるんだ、自分^^;新刊本の筈なのに、開架に普通~に置いてあるもの
だから、ついつい出来心で手を出してしまったのでした。

んんん。でも、でも、これが案外と面白かったですよ。もーう、本格ミステリのガジェットを
めいっぱい、これでもかっっつーくらいに盛大に盛り込んで、作者が「どうよ!」ってニヤニヤ
してるのが透けて見えて来るような気がしました(笑)。なにせ、『読者への挑戦』も二度
入ってますし。雪で閉ざされた館という、王道のクローズドサークル的舞台設定に、密室殺人、
ダイイングメッセージ、マザーグースの見立て歌に猟奇的な連続殺人と、羅列しただけでも
本格ファン垂涎の設定がてんこ盛りなのがおわかりかと。やり過ぎじゃないかってくらいですが、
私は結構こういうウザイくらいに本格に拘った作品が大好きなんで、読んでてちょっとワクワク
しました。

ただまぁ、相手はあのまほろサンですよ。3ページに1箇所くらいは、イラっとさせられる
描写が挟まれていて、心置きなく作品を楽しめたかというと、その辺りはちょっと微妙。なんで
わざわざ東京を『帝都』と表現するのかもわからなかったし、色の表現の時に、いちいち馴染み
のない色の名前を持って来るのはどうかと。この人、芸大でも出てるんですか。
ちょっと例をあげてみますと、

アリザリンクリムソンの絨毯
イリデッセントホワイトの噴水
スプルースグリーンの生け垣
ヴァイオレットレーキのスーツ
ネイヴィブルー・フォンセのセーラー服
クリムソンレーキの血


・・・どーですか、これ、ごくごく一部なんです。色を表現する時にいちいちわけのわからない
色の名前の形容詞を使うなよ、って思うんですけど。余計に色が想像しにくいじゃないか。
作者は美しい表現だと思って使ってるのかもしれないですけどねぇ。読者にとっては、鬱陶しい
だけだと思うんですけどね、こういう部分の拘りって。アリザリンクリムソンって一体どんな色
なんですか。血の鮮やかな赤を表したいなら、素直に真っ赤な、とか真紅の、とかでいいじゃん
って思っちゃう時点で、この作者とは基本的にやっぱり合わないんだろうなぁ、と思ったりも
したんですけどもね^^;
もちろん、びっくりした時なんかにポロリと登場人物から漏れる『うげらぽん』だの『はふう』
だのの言葉でもいちいちイラっとさせられたんですけどね(苦笑)。

まぁ、ツッコミ所はやっぱり満載だったんですが、ミステリとしては結構面白く読めたんで、
良かったです。といっても、イエ先輩による謎解きを聞いても、正直云って、さっぱり状況が
頭に思い描けなかったのですけれど・・・^^;;まぁ、その辺りはさらりと流して(おい)、
なんとなくわかった気になって読み進んで行っちゃいました。犯人自体は、当てられる人が
多いんじゃないかなぁ。なんか、ここ伏線っぽいな~と思う場面もちょこちょこあったんで。










以下、ネタバレあります。未読の方はご注意ください。













でも、犯人が密室を作る為に使ったモノ(複数)に関しては目が点。そりゃ、いくらなんでも
無理があるでしょうに、と思いました・・・。蓋然性もいいとこだよ。そんなに上手くいくわけ
ないじゃん・・・。そして、動機に関しても、はっきりいって、身勝手すぎるな、と思いました。
その場にいただけで、殺人の対象になっちゃったらたまらないよ。犯人の大事な人が死んだのは
直接的には彼らのせいじゃなく、ウィルスのせいな訳で。あんな状況にあったら誰だって逃げる
のは当たり前だし、助けようったってあの状況じゃもう誰にもどうすることも出来なかったのに。
完全に逆恨みじゃないですか。確かに殺された人間たちは悪い人間もいたのかもしれないけど。
なんか、最後の手紙で犯人はいい人だったみたいな演出がされてるけど、やったことは下道以外の
何ものでもないと思うんですが・・・。
あと、彼女がイエ先輩に依頼した謎はどうなるんですかねぇ。今後、彼女の遺志を汲んで、
イエ先輩が乗り出してあげるのかな。出来れば、彼女が生きてるうちに解決させて欲しかった気は
するんですけどねぇ。















最後は意味深な終わり方をしているので、これは間違いなく続編に続くんでしょうね。
まぁ、いろいろと文句はつけたんですが、イエ先輩とユカのコンビは気に入ったので、続きが
あるなら読んでみたいです。イエ先輩の過去に何があったのかも気になりますし。もちろん、
一番気になるのは、二人のその後の進展ですけどね~。二人がどういう状況で付き合い始めた
のかとかも気になりますしね。逆ツンデレ(男がツンデレって意味)のイエ先輩のキャラに
興味津々でした(笑)。

いやぁ、まほろ作品が面白く読める日が来るなんて・・・感涙です(笑)。
アンソロジーに入ってた作品なんて、短編なのに挫折したくらいなのに^^;
だからって、天帝シリーズを試してみようって気にも、探偵小説のシリーズ(正確なシリーズ名
を知らず)の続きを読もうって気にもならないんですけどね(苦笑)。