ミステリ読書録

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小路幸也/「オブ・ラ・ディオブ・ラ・ダ 東京バンドワゴン」/集英社刊

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小路幸也さんの「オブ・ラ・ディオブ・ラ・ダ 東京バンドワゴン」。

堀田家に春がきた。勘一のひ孫たちも大きくなり、中学3年の花陽は受験生、夢に向かって猛勉強中。
研人は中学校に入学、大好きな音楽の練習に打ち込む毎日だ。いつもながらの目まぐるしい日々の中、
一家にとって大切な人の体調が思わしくないことが分かり…(あらすじ抜粋)。シリーズ第6弾。


東亰バンドワゴンシリーズ最新作。毎年一作出てるみたいですね、このシリーズ。小路さんの
作品はちょっと食傷気味になってしまって、最近は新作が出てもスルーしちゃうことがほとんど
なのですが、このバンドワゴンシリーズだけはしっかり追いかけて行こうと思ってます。そして、
今回も期待に違わぬ良作でした。あー、やっぱ、好きだなぁ、このシリーズ。もうね、ここまで
行くと、ほんとにリアリティなんかどうでも良くなるくらいの、ほんと、超がつく程の、大団円。
他の作品でこういう展開だったら、ヒネクレ者の私は、きっと「そんなに全部が上手く行く訳
ないじゃん」と文句つけたくなると思うんですけど、ことこの堀田家に関しては、「それでこそ、
堀田家!」と思えちゃうんですよねぇ。不思議なんですけど。堀田家が幸せなら、私(読者)も
幸せ。堀田家の人々が辛い顔してるのとか見たくないもんなー。彼らにはいつもハッピーで、
LOVEいっぱいでいて欲しいです。
とはいえ、そんな堀田家にも、今回は悲しい出来事が襲いかかります。こればかりは、誰にも
どうしようもない問題で、誰もが通る道ですから、仕方がありません。でも、この悲しみを
乗り越えて、誰もが生きて行く。そうして、世の中は回って行くんですよね。最後には、また
新たな生命の誕生が告げられて、更に堀田家の周辺は賑やかになりそうな気配ですね。これ
以上登場人物が増えると、ほんと誰が誰だかわからなくなりそうですけど・・・^^;
鈴花ちゃんとかんなちゃんもどっちがどっちだかわかんないしなぁ^^;今回も、冒頭の
登場人物相関図が役に立ちました(笑)。

今回は、勘一さんが大活躍でしたね。青の映画出演にはビックリしましたけど、勘一さんが
いかに自分の古本屋を愛しているかが良くわかりました。映画製作者側に怒って、一人みんな
から背を向ける勘一さんを、家族のみんなが優しく理解してあげるところが好きだったなぁ。
やっぱり、勘一さんがいてこその、東亰バンドワゴンなんだなぁ、としみじみ思わされました。

我南人さんも、相変わらず、要所要所での『LOVEだねぇ』発言で、場の空気を一変させてしまう
ところがさすがでした(笑)。特に、盗作騒動の収拾のつけ方なんか、空気読めないひとのような
言動なのに、見事にその場を丸く収めていて、すごい。でも、携帯の着メロを作った人物には
驚きましたけど^^;彼が一番成長著しいのかもしれないですねぇ。もちろん、医者を目指す
花楊ちゃんもですけど。みんな、一話目よりも、確実に成長しているのがわかりますね。シリーズ
最初から追いかけていると、子供たちの成長っぷりが、親戚の子供みたいに嬉しく感じます(完全
に隣のおばちゃん目線^^;)。みんな優しくて真っ直ぐに育っているから余計にね。そりゃ、
こんなにいい人たちの中で育てば、いい子に育つよね。悪いことは悪い、良いことは良い、と
厳しくも温かく教えてくれる人たちばかりなんだもの。ほんと、子供を育てるには最高の環境
じゃないかなぁ。羨ましい・・・。

藤島さんが抱える過去の重荷のことも、勘一さんの機転で解決の方向に向かいそうで、良かった
です。勘一さんの言葉がひとつひとつ心に沁みました。きっと藤島さんもそうだったでしょう。
これで、女性にも目を向けるようになるかな?彼のような完璧な『いい男』が、全く女っ気が
ないなんて、おかしいですもん。花陽ちゃんが大人になるまで待てないのかなぁ。やっぱり、
まだ藍子さんのことが忘れられなかったりするのかな。花陽ちゃんはきっと、藍子さん似の
美人さんになると思うけどねぇ。どうなるんでしょうかね。気をもんでるのは勘一さんだけ
みたいですけどね(笑)。


やっぱり、このシリーズは安定してて、いつ読んでも心が温まっていいですね。毎回思うけど、
ほんとに、こんなカフェ併設の粋な古本屋さんがあったらいいのにって思っちゃう。困ったことが
あったら、堀田家の誰かに相談すれば助けてくれるしね(笑)。

『夏』の章の最後の、サチさんの温かい言葉が心に残りました。

しっかりと、自分の足で歩いて行くことですよ。周りの人に支えられてでも、それが恥ずかしく
ても、自分が情けなくても、歩いて行かなきゃならないんです。
人間は、動物ですからね。そして動くから動物というんでしょう。だから歩かなきゃ、動かなきゃ
駄目です。止まっていてはいけません。
そうしていればきっといつか、傷は瘉えるものです。

立ち止まらずに、自分の力で歩いて行くこと。どんなに傷ついても、生きて行く為には、それが
一番必要なんですね。サチさんの言葉は優しさと愛情に溢れていて、こういう人が見守って
いるから、いつでも堀田家は安泰なんでしょうね。


今回も、涙と笑いと感動あり、で、楽しく読めました。まだまだ続いて欲しいシリーズですね。