ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

野村美月/「“文学少女”と慟哭の巡礼者」「“文学少女”と月花を孕く水妖」/ファミ通文庫刊

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“文学少女”と慟哭の巡礼者
もうすぐ遠子は卒業する。それを寂しく思う一方で、ななせとは初詣に行ったりと、ほんの少し距離
を縮める心葉。だが、突然ななせが入院したと聞き、見舞いに行った心葉は、片時も忘れたことの
なかったひとりの少女と再会する!過去と変わらず微笑む少女。しかし彼女を中心として、心葉と
周囲の人達との絆は大きく軋み始める。一体何が真実なのか。彼女は何を願っているのか―。
“文学少女”が“想像”する、少女の本当の想いとは!?待望の第5弾。

“文学少女”と月花を孕く水妖
『悪い人にさらわれました。着替えと宿題を持って、今すぐ助けに来てください』―そんな遠子から
のSOSで、夏休みを姫倉の別荘で“おやつ”を書いて過ごす羽目になった心葉。だが、そんな彼らに、
八十年前起こった惨劇の影が忍び寄る。“令嬢”“学生”そして“妖怪”。役者は揃い舞台は整い、
すべては再び崩壊に向かう。事態を仕組んだ麻貴の望みとは?自らの“想像”に心を揺らす、
“文学少女”の“秘密”とは―。夢のようなひと夏を描く、“文学少女”特別編(紹介文抜粋)。


今回も続けて二作読みました(何か、このシリーズはそれが私の中で定着している^^;)。
『~慟哭~』の方は長々と引っ張って来たミウの話、『~月花~』の方は、番外編で、遠子と
心葉が麻貴の別荘に連れて行かれてトラブルに遭う話。どちらもそれぞれに重い。このシリーズ
って、ほんと出て来る登場人物が病んでるケースが多い。みんな高校生なのに、なんでそこまで
重いものを抱えてるんだ?とツッコミたくなってしまいますよ。まぁ、その重さがこのシリーズ
を単なるラノベの枠に収まらない、読み応えのある作品にしているとも云えるのですが。主役の
二人だけ取り出して見ると、いかにもラノベ的キャラと会話で可愛らしいのにね。今回の二作も、
純文学の名作を上手くストーリーに絡ませて、心に響く作品に仕立てていると思いました。


では、それぞれの感想を。ネタバレ気味です。未読の方はご注意を!








“文学少女”と慟哭の巡礼者
ミウの極悪キャラに翻弄されまくって、心葉君がちょっと可哀想でした。まぁ、ミウも同情
すべき点はあるけれど、いくらなんでも、自分勝手すぎるでしょ、と思いましたね。だって、
完全に単なる逆恨みじゃないか。協力者に関してはかなり意外でしたが、動機はイマイチ理解出来
なかったです。こういう性格の子も珍しいというか・・・厄介な性格ですね。こういう子を
好きになる流人の心情もちょっと理解不能。っていうか、流人のキャラ自体がなんだか受け入れ
難かったです。さんざんかき回して上から目線で見てるところがすごく嫌だった。しかも、続く
『~月花~』では麻貴とも関係持ってるみたいだし。節操なさすぎ。こんな高校生嫌だよ(><)。

まぁ、最後は心葉君とミウの関係も決着がついてほっとしました。ミウが幼児退行して入院
してからは、このままずっと心葉君は彼女に縛り付けられてしまうのか、と気が気でなかった
です・・・^^;ストーリー上、それは有り得ないとは思いながらも、井上ミウのデビュー作に
込められた心葉君のメッセージを思うと、彼がミウから離れられるような気がしなかったので・・・。

今回の文学作品は宮沢賢治銀河鉄道の夜。実は、恥ずかしながら未読でして・・・^^;
宮沢賢治はほとんど読んでないんですよね~^^;アニメでは主人公二人が猫(?)になってた
覚えがあるんですが(ちゃんと観てはいない)、原作ってどうなんでしょう。本書で遠子先輩が
説明するストーリーを読んでいる限り、そんな設定は出てこなかったんですが。あれはアニメ用の
脚色なんでしょうか??

ラスト1ページが非常に意味深ですね。遠子先輩の秘密って何なんですかーーーー!!!
うう、気になる。


“文学少女”と月花を孕く水妖
番外編。あとがきによると、時系列的には、二話目の後になるそうです。麻貴先輩の腹黒さが
よーくわかる一編(苦笑)。ただ、彼女の本当の姿はやっぱり謎のまま。遠子先輩に対する感情も、
額面通りに受け取って良いのやら・・・。まぁ、敢えて自分の問題に彼女を巻き込む辺り、遠子
先輩に一目置いているのは間違いないのでしょうけれど。

こちらの文学作品は泉鏡花。これまたほとんど読んだことがないのですよね(恥)。耽美小説って
イメージなので、読みたいと思ったことは何度もあるのですが。遠子先輩が語る、ゆりと秋良の
物語の真相には瞠目させられました。細かい伏線が非常に効いていて、しっかりミステリとしても
読ませる作品になっているところには感心しました。あれだけの少ない情報から、こういう真相を
導き出せる遠子先輩ってすごいですよね。あんなにのほほんとしたキャラなのに。さすがに、本を
たくさん読んでるだけあるなぁ。人がたくさん死ぬミステリ小説は苦手っぽいのにね(苦笑)。
『鏡花水月、綺麗な響きの言葉だけれど、意味は切ないですね。目に見えているのに、手にする
ことが出来ない儚いもの。儚いからこそ、美しいのでしょうけれど。

そして、この作品も、ラストのエピローグが非常に、意味深(後から考えると、プロローグも
めちゃくちゃ意味深なのがわかるんですが)。レモンパイを焼こうとしているのは一体誰なんで
しょう。この書き方だと、遠子先輩じゃなさそうなのが悲しい。二人はやっぱりお別れすることに
なってしまうのでしょうか・・・。知りたいような、知りたくないような・・・。





今回も、読み応えたっぷりの二冊でした。ラノベの域は軽く超えてますね、このシリーズは。
何といっても、遠子先輩が可愛いなぁ。流人に教えられた3つの言葉で書いた心葉の小説を
読んで酔っ払っちゃう姿がなんとも可愛らしくて萌え~~~でした(オヤジ目線)。

続きがとぉっっても気になるので、早めに続きを入手したいと思います。