ミステリ読書録

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鯨統一郎/「新・日本の七不思議」/創元推理文庫刊

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鯨統一郎さんの「新・日本の七不思議」。

〈スリーバレー〉のバーテンダー松永は、歴史学者早乙女静香の話についていくため、日夜勉強を
続けている。ある日、静香が宮田六郎と連れ立って店に入ってきた。これまで宮田に対してやたら
喧嘩腰だった歴史バトルにおいても、何やら風向きが違う。なぜだ? 二人の親密な態度は気に
なるが、現存する世界最古の国ニッポンのことを知らないのも捨て置けない……ええっ、それは
本当ですか! 好評嘖嘖『邪馬台国はどこですか?』『新・世界の七不思議』に続く第三弾。
邪馬台国はやっぱりここでした!(紹介文抜粋)


邪馬台国はどこですか?』『新・世界の七不思議に続く、歴史のトンデモ新説をぶちかます
シリーズ第三弾。先日読んだ、鯨さんの自伝的小説『努力しないで作家になる方法』を読んで、
邪馬台国~?』を無性に再読したくなっていたところだったので、とりあえずシリーズ新作が
イムリーに読めて良かったです。
ただ・・・うーん。前二作(特に『邪馬台国~』)に比べると、全体的に内容が薄かった。
縄文人弥生人を現代のタレントの顔で分類してみたかと思えば、柿本人麻呂藤原不比等だった
とか、空海は実は中国人だったとか、相変わらずやりたい放題のトンデモ説が飛び出す所は
面白かったものの、今回は根拠が薄いというか、いまひとつ、一つ一つの説に説得力が感じられ
なかったような印象を受けました。どの作品にも、今までのようなキレがないっていうのかな。
さすがに、三作目ともなると、ネタ切れなんですかねぇ。
ラストの真珠湾攻撃の秘密』は一番ノレなかったです。題材的にも、戦争を扱ったものって、
それだけで引いちゃうところがあるんですよね^^;静香や宮田の議論も、結局何が言いたい
のかよくわからなかったし。彼らの会話が頭に入って来なかった^^;でも、驚いたのは、
出だしで「そういえば今日は、原爆が投下された日ね」という静香のセリフを読んでいたのが
本当に8月6日の今日だったことです^^;タイムリーすぎてビックリでした。

驚いたといえば、今回最も驚かされたのは、何といっても、宮田と静香の関係。今まで、宮田の
トンデモ歴史仮説に、静香がツッコみ、毒舌を吐く、という形で物語が進んでいたのに、なんと
なんと、この二人、知らない間に恋人関係になっているではないですか!しかも、いつも彼らが
議論を戦わせるバー<スリーバレー>が舞台になるのは、最初と最後の話だけ。それ以外は、
ほとんどが宮田と静香の旅先での話(写楽の不思議』は違うけど。でも、<スリーバレー>でも
ない)。二人きりで旅行するまでに仲が進展してるところに、更にビックリ。なんだか妙にラブラブ
だし^^;二人が付き合うきっかけになった京都での出来事の内容がとても気になります。まだ
書かれていないのかなぁ。
でも、正直、この二人にはそんなに簡単に男女の関係になって欲しくなかったなぁ。お互いに意識
してそうな雰囲気は確かにあったんですけどね。静香はもっと天邪鬼なタイプだと思ってたから、
そう簡単に落ちるとは思えなかったし。静香の宮田に対する辛辣な毒舌が面白かったのに。そこも、
本書に物足りなさを感じた一つの理由かも。<スリーバレー>で、松永を交えて美味しい料理と
お酒を嗜みながら議論を戦わせる、というところが、このシリーズ最大の醍醐味だったのに。

大好きなシリーズだから、楽しみにしていただけに、ちょっと内容的には不満が多かったです。
さすがにそろそろネタ切れなのかもしれないなぁ。

ちなみに、自分を縄文系と弥生系に分類するとしたら、間違いなく弥生系だろうな(身長は低い
けど^^;)。