ミステリ読書録

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朝井リョウ/「桐島、部活やめるってよ」/集英社刊

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バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が、突然部活をやめた。それがきっかけで、田舎の県立高校に
通う5人の生活に、小さな波紋が広がっていく…。野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフト
ボール部、映画部。部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。第22回小説すばる
新人賞受賞作(あらすじ抜粋)。


巷でやたらに一時期取り沙汰されていた青春小説。確かに一度聞くと忘れられないタイトルで、
気にはなっていたのですが、地元図書館の方では多分予約が三桁とかだと思うので、まぁ、いつか
読めたらいいな、位に思ってました。ところが。先日隣町図書館に行ったら、すんなりYAコーナー
棚に置いてあるではないですか。毎度ながら、ミラクルを起こしてくれるありがたき隣町図書館。
予約しないでこんなに早く読めるとは思わなかった~。

というわけで、感想ですが。うーん。確かに、評価されるのもわからなくはないんですが・・・
本当に、等身大の高校生の姿を描いている、という意味では、瑞々しい感性と云えるのかも
しれないです・・・が、私には、若者言葉そのままの文章がかなり読みにくかったです。現代の
若者が読むなら、共感も出来るだろうし、違和感もないのかもしれないですが、私の年になると、
ここに出てくるような若者言葉には、やっぱりいい印象を受けないし、抵抗を感じてしまいます。
なんか読んでいてイラっとしました。会話文で語尾を伸ばすところとか。一人称だから、地の文
がそのまま若者言葉で書かれていて、会話文との境界もあまりないし。所々、お、と思える
文章もなくはないのだけど、全体通して、文章的には稚拙な印象しかなかったです。あと、
登場人物の書き分け不足で、誰が誰だかわかりづらい。一話づつ視点が変わるのですが、男子は
特に映画部の男の子以外はみんな似たタイプで、視点の人物のイメージが浮かんでこなかった。
学校内のヒエラルキーで頂点の方にある男子って、みんな同じようなタイプになっちゃうって
ことなんですかね。彼女に対する扱いとか気持ちとかも、なんかいくらでも変わりがいるって
いうような、どこか上から目線の考え方に、ついて行けなかったです。まぁ、私は学生時代、
そういうタイプと話が出来るような位置にはいなかったから、余計に共感できないのかもしれない
ですけど。女子もそうですね。外見が可愛くて、上位グループにいる子たちはみんな似たような
印象で、誰が誰だかって感じでした。そういうのがある意味、今の十代の若い子たちの実態そのもの、
なのかもしれないですけど。テレビで出てる渋谷とか原宿にいる女の子たちってみんな同じに
見えちゃうもんな~(完全に、おばさん的発言で申し訳ない・・・^^;)。
だからというか、この作品の中では、沢田亜矢や、前田涼也の、教室内では目立たないグループ
の子の章の方が好きでした。それに、教室では目立たなくても、何か一つ自分の中で打ち込んで
いるものがある子の方がずっと好感が持てます。最後の章の主人公宏樹みたいな、すべてにおいて
斜に構えた態度で接するタイプは一番苦手かも。でも、彼は涼也や武文の映画部コンビに光を
感じるセンスがあるのだから、今後変わって行くのかもしれないですけど。

この作品で特筆すべきは、タイトルに出て来る桐島君については、結局ほとんど語られることが
ない点でしょう。彼視点の作品が出て来ない為、彼がどうして部活をやめてしまったのか、その
真意は最後までわからないまま。おそらく、それが作者の狙いだとは思うのですが・・・正直、
私はそこが一番不満だったかも^^;桐島、なんで部活やめたんだよ!って、私が聞きたくなった
もん^^;名前とか噂話でしか登場しない為、彼の人となりもよくわからないままだし。
タイトルは非常にインパクトあっていいと思うんですけどね・・・読み終えて『・・・で?』って
言いたくなってしまう自分がいました・・・。まぁ、端的に言って、合わなかった、のかも・・・。
一つ一つのお話も悪くはないと思うんだけど・・・うーむ。既存の傑作青春小説を比べると、何か
見劣りがしちゃうというか、いまひとつ心に残るものはなかったかな。やっぱり、文章がネックに
なっているのかも。薄い本なのに、どうも読みづらくて、思ったより時間かかったんですよね。
若い感性持ってないと、書けないだろうし、読めない小説なのかもしれないです(若い感性ゼロの
私には、ちとキツかったです・・・しょぼん)。


記事書いてみたら、結構黒べるよりになったなぁ^^;
面白くなかった訳じゃ、ないんですけどもね。