ミステリ読書録

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カズオ・イシグロ/「夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」/早川書房刊

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カズオ・イシグロ夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語(土屋政雄訳)」。

ベネチアサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な
邂逅を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階で
セレブリティと共に過ごした数夜の顛末をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの
連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられ
なかった夢を描く、著者初の短篇集(紹介文抜粋)。


またも月末ギリギリになってしまいましたが、今月の一冊。最近何読んだらいいのかわからなく
なって来てて、毎月『今月はもうお休みしようかなぁ』と諦めモードでいたりするんですが、
何げに借りる本が見つかったりするから、なんとなく続けられているという。
カズオ・イシグロといえば、ベストセラーになって映画化もされた『わたしを離さないで』
有名なんだろうと思うのですが(ファンからすれば『違う!もっといい作品があるんだ!!』
と抗議したくなるのかもしれませんが^^;)、そちらは未読。海外ものに詳しい友人から
内容を聞く限り、私には敷居が高すぎて手が出せなそうな作品っぽいんで、読もうとは思って
ないんですけど。こちらは、出版当時あちこちのブログで記事を見かけて、みなさん揃って
高評価だったので、記憶に留めていた一冊。装幀やらタイトルやら、かなり好みっぽいので
今月の一冊として白羽の矢が立ったという次第(前置き長くてすみません)。
作者は日本人とはいえもともと英語で出された本ですし、出てくる登場人物も全部外国人なの
だから、海外ものに分類していいですよね?

本書には音楽をテーマにした5つの短編が収められています。巻末の解説にも書かれていますが、
もう一つ共通するテーマは、『男女間の危機』。どの作品でも、別れを前にした(あるいは
別れた)夫婦や、夫婦仲を修復させようとする夫婦など、男女の仲に亀裂が入ったカップルが
登場します。だから、読んでいて、どこか鬱々とした気分になってしまいました。第三者が、
その男女の危機を音楽で取りなそうとしたりするのですが、結局その結果がはかばかしいものでは
なかったりして、音楽が何の解決にもならないって結末が多かった気がします。というよりも、
結末にオチがないので、読み終えてどう捉えたらいいのか戸惑う作品が多かった。男女間の
危機を描くにしても、別れるとか、そうでないとか、はっきりした結末が提示される訳では
ないので、『・・・だから?』って思ってしまいました。
なんというか、もうぶっちゃけちゃいますと、私にはこの作品の良さがあんまり良くわからな
かったです。読みやすくて、すいすい読めたっていう点では良かったんですけど、どの作品も、
ユーモアなのかシリアスなのか、なんだかそこの線引き自体が良くわからなかったというか。
多分、こういうセンスが欠けているから、私は海外ものが苦手なんだと思うのです。これに
出てくる登場人物、ほとんど共感できなかったですし。外国人の考えることってわからないって
いうのか、日本人だったら、こういう展開にはならないだろうなぁ、とか、こういうセリフは
言わないだろうなぁ、というのがほんとに多くて、その都度引っ掛かりながら読んでた気が
します。

多分、普段からミステリばかり読んでる人間なんで、オチがないっていうこと自体に違和感を
覚えてしまうのかも^^;
この作品が評価されるのもわからなくはないのですが・・・端的に云えば、私の好みでは
なかったです。タイトルとか音楽をテーマにした所とかはすごく好みだったんですけど・・・。

一番面白く読んだのは、表題作かな。一番ちゃんとストーリーがあった気がするし。整形手術を
受けた男女が、『あるもの』を巡って夜中のホテルに忍び込む下りはハラハラドキドキしましたし、
その『あるもの』『ある場所』に隠すくだりも傑作。ただ、そこまではほんとに面白かったのに、
これも結末の部分で尻すぼみなのが残念でした。突然、女性側がつれなくなってしまう、その
気持ちが理解できなかった。そこの心理描写が欠けてるから、なんだかよくわからない、狐に
つままれたような気持ちになってしまいました。結局、主人公の整形がうまくいったのかどうかも
わからないし。
まぁ、はっり云えば、どの作品も似たような感想です。腑に落ちない気持ちで終わるっていう。
読後感が良くない作品でも、しっかりオチがあればそれなりに納得して読み終えられるんです
けどねぇ・・・。

やっぱり、私には海外ものを楽しむ感性が絶対的に欠けているのかも・・・。もう、ムリして読むの
やめようかなって、ちょっと思ってしまいました。だって、周りであれほど絶賛されてる作品
読んでこれなんだもの。
ほんと、すみません・・・。
来月、海外ものの記事が出るかどうかは神のみぞ知る・・・。