ミステリ読書録

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アガサ・クリスティー/「スタイルズ荘の怪事件」/ハヤカワ文庫刊

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アガサ・クリスティー「スタイルズ荘の怪事件(矢沢聖子訳)」。

旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、到着早早事件に巻き込まれた。屋敷の
女主人が毒殺されたのだ。難事件調査に乗り出したのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギー
から亡命して間もない、エルキュール・ポアロだった(あらすじ抜粋)。


先月の一件で、もうやめようかとも思った月一冊海外作品を読む企画でしたが、せっかく始めた
企画ですし、意気消沈してる私にわざわざメッセージを下さった方もいらして、やっぱり頑張って
続けてみることにしました。とりあえず、好きなミステリーを読む方がいいとアドバイスして
下さった方の意見に従って、読みやすそうなミステリといえば、クリスティー、ということで、
リハビリがてら読んでみることにしました。なんでこの作品にしたかと言いますと、本書は
クリスティーの処女作にして、名探偵エルキュール・ポワロのデビュー作でもある、大変記念
すべき作品だと『後ろの解説』で知ったからです(笑)。リアビリにはちょうどいいかなって思い
まして。本当は、クリスティなら『ホロー荘の殺人』の方が気になってたんですが(去年、映画を
観たので)、『荘』繋がりってことでたまたま手にとってみたら、デビュー作だったと知ったって
いう経緯なんですけどね^^;

中盤までは多少読みにくさもあり、自分自身の集中力の問題もあって、ちょっと入っていけない
ところがあったんですが、事件の捜査が佳境に入ってからは、さすがクリスティー、さくさく
読めました。やっぱりクリスティーは、リハビリにはもってこいでした(笑)。
しかし、デビュー作でこれだけ完成度の高いミステリーを書かれていたとは、やっぱりすごい
ですねぇ。犯人に関しては、もう、完全にヘイスティングズ同様、ポワロの掌の上で転がされた
ような感じでした。ポワロの奸計にはまって、完全に容疑者リストから外しちゃってましたもん。
何といっても、ある女性の未来のことを考慮に入れた、ポワロの粋な謎解きにしびれちゃいました。
この謎解きによって、犯人の痛手もより大きくなったと思いますし(一度は完全に逃げおおせたと
思っていた筈ですから)。犯人を懲らしめて、それ以外の関係者には幸せになるように配慮して
推理するところがほんとに素敵でした。紳士ですねぇ。犯人を指摘する際の演出の仕方も、劇的
で良かったですね。
ヘイスティングズとの友情の部分も良かったです。ヘイスティングズは、一作目からすでに狂言
回し的な存在だったんですね^^;ポワロに振り回されてちょっと気の毒になりました。その上
最後は失恋でしたし^^;でも、一番本書でビックリしたシーンは、ヘイスティングズの突然の
プロポーズ。このタイミングでーーー!?とあっけに取られてしまいました。結構、惚れっぽい
性格なのかな。なんかそれが報われないタイプのような気もしますが^^;そういう、コミカルな
シーンがちょこちょこと盛り込まれているところも楽しかったです。









以下、ちょっとだけネタバレ。未読の方はご注意下さいませ。













一点だけ気になったのは、ポワロが気にしていた緑のドレスは何の関係があったのかって所。
途中集中力がない状態で読んでたところもあったから、読み逃したのかな~??^^;








しっかり計算された伏線の貼り方や、犯人の意外性など、ミステリーとしての面白さは
デビュー作とは思えない程完成されてるな、と思いました。古典なのに、全然古臭く感じない
ところはさすがです。
これから、読むのに困ったら、とりあえずクリスティー、でもいいかもしれないな(苦笑)。
なんとかかんとか、今月も読めて良かったです。やっぱり、自分で言い出したことだし、
今後も月一企画は出来る限りは続けていきたいな、と思います。読みやすくて面白いお薦め
海外作品をご存知の方、是非ご一報頂けると有り難いです。