ミステリ読書録

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恩田陸/「夢違」/角川書店刊

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恩田陸さんの「夢違」。

「何かが教室に侵入してきた」。学校で頻発する、集団白昼夢。夢が記録されデータ化される時代、
「夢判断」を手がける浩章のもとに、夢の解析依頼が入る。悪夢は現実化するのか? 戦慄と驚愕
の幻視サスペンス(紹介文抜粋)。


恩田さんの最新作。いやー、時間かかりました。500ページ弱の本なのに、一週間以上かかって
しまった^^;恩田さんの本でここまで苦戦したのは初めてかも・・・。いや、単純に年末年始
で本読む時間が取れなかったってことが大きいのは間違いないんですが・・・ただ、なかなか
話に乗れなかったのも事実だったんですよね。いつも恩田さんの作品は文章読んでるだけでも
楽しめるんですが、今回はなんだか読んでも読んでも進まなくって。話自体もスローペースで
なかなか進まないから、途中ちょっとイライラしたところもありました。恩田作品でこういうのは
本当に珍しいことなんですが。
人が見る夢を映像化出来る世の中がやってくる、という架空の近未来のお話、と言って良いのかな。
その映像化した夢を解析する仕事をしている主人公の浩章。彼がある日、一人の女性の幽霊を見た
ことからお話は始まります。その女性は、浩章にとっても夢判断の世界でも忘れがたい女性であり、
彼女の存在がその後の世の中を混乱に陥れることになって行く。なんというか、あらすじを説明
するのがとても難しいお話でした。一人の女性が見る夢が、たくさんの人に影響を与え、恐怖を
植えつけて行く。一応ジャンルとしてはサイコホラーなのかなぁ。それほど怖いとは思わなかった
のですが。じわじわと恐怖が迫って来る感じの描写はやっぱり上手いですね。
浩章のかつての想い人・古藤結衣子は生きているのか、死んでいるのか?学校で突然起きた集団の
児童パニック事件は何だったのか?また、児童や教師の大量人間消失はなぜ起きたのか?
いくつもの不可解な事件が重なって行き、読む側に不安を掻き立てます。その辺りの風呂敷を
広げるところまでは面白かったのですが・・・うむむ。やっぱり、最後は恩田さんらしい有耶無耶
な感じで結。いくつもの伏線が回収されてないままのような・・・^^;
この感じは、『きのうの世界』と似てるな~と思ったら・・・案の定、本書も元は新聞連載なの
ですね^^;恩田さんは、新聞連載には向かないんじゃないかな~と思ったりして。細切れに
読む作品じゃないですよ、これ、絶対。新聞通して読んで、意味がわかった人っているのかなって
思っちゃいます^^;っていうか、私自身が細切れに読んじゃったせいで、なんかよくわからない
まま終わっちゃったって感じがなきにしもあらずだったりするんですよね~・・・^^;
ラストの終わり方もねぇ・・・一見幸せな終わり方に見えるけど、良く考えると・・・おいおい、
二人だけよければそれでいいんかい!ってツッコミたくなるような終わり方ですしねぇ・・・。
なんか、どうもすっきりしない読後感でした(って、恩田作品にとっては当たり前みたいなこと
ですけどね(苦笑))。





以下、ネタバレあります。未読の方はご注意を。












結局、児童たちが怖いと言ったアレの存在(=八咫烏?)って何だったんでしょう。

学校関係者と児童が消失した理由は未来へのタイムスリップだった訳ですが、それが
起きた理由は、古藤結衣子が未来へタイムスリップしたことが原因だったのでしょうか?

なんか、集中して読めなかったので、たくさん読み落としがあると思うので、作中に
書かれていたらすみません^^;

あと、ラストは『あのはる』へタイムスリップした結衣子が浩章と出会えてメデタシメデタシ
みたいな書き方ですが、浩章って奥さんいましたよねぇ?終盤、奥さんの存在が一切抹殺
されていて、結衣子への想いばかりが再燃しているので、なんだか奥さんが可哀想になりました^^;
『あのはる』以降の彼らの関係が気になります・・・。っていうか、木蓮寺で会った結衣子って
最後死んじゃったんですかね、結局。そうなると、終章で出会った結衣子はいつの時代から
タイムスリップして来た結衣子なんだろう?それとも、終章の出来事も、浩章と結衣子が
見ている夢の中の出来事?
・・・うーん、ほんとに、まさしく胡蝶の夢って感じの終わり方ですね^^;

















うーん。なんか、全体的に腑に落ちないお話だったなぁ・・・。『きのうの世界』はまだ、
それでも面白かったと思えたんだけど、今回は、なんかいまいち最初から最後まで乗り切れない
ままって感じでした^^;

どうやら、本書、今回の直木賞候補に挙がったようですねぇ。これで受賞はちと難しいのでは
ないかなぁ・・・。他の候補作がわからないので一概に言えませんけど^^;
まぁ、タイムリーに読めたのは良かったかな。