ミステリ読書録

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柚木麻子/「あまからカルテット」/文藝春秋刊

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柚木麻子さんの「あまからカルテット」。

「終点のあの子」作者の誰もが待ち焦がれた新作は、仲良し四人組の探偵小説。ピアノ講師の咲子、
編集者の薫子、美容部員の満里子、料理上手な由香子。恋愛の荒波も、仕事の浮き沈みも、四人の絆
で乗り越えてみせる(紹介文抜粋)。


初めましての作家さん。何の予備知識もなかったのですが、出たばかりの時に書店で平積みに
なって紹介されていて、紹介文読んで面白そうだな~と思って予約していた一作。結構評判に
なっているようで、楽しみにしていたのですが、期待に違わずとっても面白かったです。

中学時代からの仲良し四人組の女性たちが一人づつ持ち回りで主人公になって、食と女の
友情をテーマに繰り広げられる連作短篇集。出て来る食べ物がとっても美味しそうだし、
女同士の複雑な人間関係とか心理描写がやたらにリアル。中学時代の友情を三十路近くまで
そのまま維持してるって、とても羨ましい。まぁ、私も今でも仲良く定期的に会うのは地元の
小中学校時代の友達がほとんどなんですが、ここで出て来る四人組程の仲の良さや絆みたいな
ものはないかな、と思うので、やっぱり、こういう、自分の為に必死になって動いてくれる
友達がいるのっていいなぁって、しみじみ思わされました。
大抵、女が四人も集まると、微妙にそれぞれの距離感って違って来ると思うんですが、ここに
出てくる四人はそれがさほど違わないところがいいですね。それぞれがそれぞれのことを
認めていて、いいところも悪いところも受け入れているというか。上辺だけじゃない、本当の
友達同士なんだなっていうのが伝わって来るところが、読んでいて爽やかでした。

ただ、そうはいえども、タイトル通り、彼女たちそれぞれのドラマは、甘い時もあれば苦い時も
ある。ひとの人生って、ほんと浮き沈みの繰り返しだと思うんです。恋愛が成功した時の甘くて
ハッピーな時もあれば、恋に破れてどん底に突き落とされる時もある。仕事でも同じ。どんな
人でも、いろんな経験を繰り返して成長して行くんですよね。彼女たちは、人生のピンチを
迎える度に、四人の力を合せて乗り越えて行きます。一人のピンチは四人のピンチ。そう思える
ところが、彼女たちの友情の強さの証なんでしょうね。

一応一話ごとにちょっとした日常の謎的なミステリー部分はあるのですが、そこはちょっと強引
というか、ご都合主義的な展開に思わなくもなかったです。第二話で甘食を一緒に食べたノンちゃん
を見つけるくだりとか。そんな偶然ないだろう、とちょっとツッコミたくなりましたもん^^;
『貴婦人の乗馬』が出て来た時は懐かしくて涙出そうになりましたけど(笑)。ピアノを習った
ことがある人なら、大抵この曲は弾いたことがあるのではないかなぁ。アラベスクとかね(笑)。

『胸騒ぎのハイボールの展開は意外でした。男女の問題ではよくあることなんでしょうけど・・・
ラブラブだと思っていただけに、ちょっとショックでした。浮気する男なんて最低って
思うけど、やっぱり男って、見た目の派手さよりも安らげる場所を求めるものなのかもしれない
ですね・・・。

ラスト一作だけは、四人が力を合せて問題を解決するのではなく、一人一人が自分の力で自分の
ピンチを切り抜ける形になってるところは良かったですね。友達に頼るばかりではなく、それぞれが
自分の足でしっかり地に足をつけて生きて行けることを証明してくれた感じがしました。でも、
それはやっぱり、四人とも、いつでも三人の友達がついている、という心強さがあるからなんで
しょうけどね。

それぞれのパートナーの中で個人的に恋人にしたいNO.1はバキさんかなー。経済力も頼り甲斐も
あって、この上もなく優しいなんて、旦那としては最高じゃないでしょうか。次点は真田さん。
毎日美味しいご飯が食べられるのは魅力的。太りそうだけど^^;

ベタベタしてないけれども、適度な距離感を保って強い絆で結ばれた四人の関係がとても
好きでした。それぞれのキャラ造形も個性的で良かったですね。
とても楽しく読めました。オススメです。