ミステリ読書録

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有川浩/「三匹のおっさん ふたたび」/文藝春秋刊

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有川浩さんの「三匹のおっさん ふたたび」。

ご近所限定正義の味方、見参!武闘派二匹&頭脳派一匹が町のトラブルに立ち向かう還歴ヒーロー
活劇シリーズ最新刊(紹介文抜粋)。


とっても痛快で楽しかった『三匹のおっさん』のあの三匹が帰って来ました。続編出るとは
思ってなかったから嬉しい^^
あの三匹の正義感の強さはそのまんまで、今回も元気に町内パトロールに励んでいて、嬉しかった
です。アラカンだって、若者に負けないくらい元気なんだ!って思わせてくれる作品で、こっちが
元気をもらえるような気持ちになりますね。まぁ、元気すぎる年配者も時には困りものだったりも
しますけれど(苦笑)。

面白かったのは間違いないんですけど、三匹が直面する問題が結構シビアなものが多いので、
解決するまでには結構モヤモヤした気持ちになりました。それに、悪意側の人物があまりにも
類型的過ぎるので、かえってリアルさが薄まってしまった感がなきにしもあらずだった気が。
貴子のパート仲間とか、古本を万引きする中学生とか、子供に万引きを示唆した母親とか、
タバコを吸う未成年とか。
もちろん、そういう人種の人物たちが世の中にたくさんいるのは間違いないところでは
あるんですけども。そういう人たちがこぞって、自分のしたことを棚に上げて逆切れする
ところとか、読んでてほんとイヤな気持ちになりました。貴子のパート仲間の、5万
借りて返さないでしらっとお店辞めちゃう主婦とか、ほんとあり得ない。きっと、こういう
主婦こそが、子供の給食費払わないで当然とか思っちゃうタイプなんだろうな。娘に万引き
を唆すようなことを言う母親もねぇ・・・なんか、こういうのがいると思うと、世も末だなって
暗澹たる気持ちになります。お金払えばいいでしょって、そういう問題かよ!って、三匹
じゃないけど、ほんと唖然としちゃいました。こういう親に育てられる子供って、一体
どんな性格に育つんだろう・・・子供の行く末が心配ですよ。子供に犯罪させて平気な親が
いるなんて。

本屋での万引きの話は勉強になりました。本屋さんの経営って大変なんですねぇ・・・。井脇
さんが、切々と万引き犯の子供たちに自分の店の経営上の数字を述べて行くところは、説得力が
あるだけに、胸が痛かったです。でも、最後に、子供たちにもその言葉がちゃんと届いたのが
わかって嬉しかったです。自分で働いて得たお金で物を買うことの尊さをしっかり胸に刻んで
社会に出て行って欲しいですね。

シゲさんのお見合い話には驚きました。早苗ちゃんの気持ちもわかるけど、祐希に八つ当たり
するのはちょっと可哀想になりました^^;でも、事情を知った祐希が、八つ当たりしたこと
を嬉しがってるところが微笑ましかったな。祐希は、ほんといい子に育ちましたね。やっぱり、
身近に見本となる人たちがいるからでしょうね。背筋をしゃんとして生きることを学べるって
羨ましい。いいことと悪いこと、ちゃんと区別がつけられる大人になるって、きっと結構
難しいと思うから。祐希には、キヨさんを始め、三匹の大人たちがいるから、自然とまっとうな
大人になって行けるんだろうなって思います。

個人的には、一話目の貴子さんの話が一番面白かったかなぁ。いや、もちろん件のパート主婦
には超絶ムカつきましたけど^^;早苗ちゃんとのニアミスが良かった。バレンタインのくだり
は、先の展開が読めちゃいましたけど^^;でも、そこが良かったな。


ちょっと出てくる問題はシビアでしたけど、三匹たちの活躍は今回も痛快でした。最後の話で、
キヨさんが芳江さんに嫉妬してるシーンが可愛かったなー。なんだかんだで、芳江さんって
すごいよね。あのキヨさんを掌の上で転がしてるんだからね(苦笑)。



ただ、最後の読み切りはなくても良かったかなぁ。最初、誰かの子供時代の話?とか思いながら
読み始めたんだけど、ほんとに単発のお話だったので・・・。終わり方もなんか有川さんらしく
ない感じだったし。二人が再会!とかの展開だったらまだ良かったんだけど。『植物図鑑』
収録されてたらハマってた話だったかもしれないけどね。シリーズものの最後に入れるべき作品
ではないな、とちょっと余計に感じてしまいました。


※追記:
記事を書いた後で読書メーターを見ていたら、最後の短篇の主人公・潤子は早苗の友達で
あることが判明^^;完全に忘れて読んでました・・・全然関係ない話って訳じゃなかった
のね^^;
しかも、草花に詳しい日下部君って、『植物図鑑』のイツキとさやかの子供だそうで・・・
こっちもイツキの苗字なんて全く忘れていたので気づかなかった~^^;;
という訳で、余計に感じた自分が有川ファンにあるまじきバカ読者だったって訳でした・・・
有川さん、すみません~(汗)。